37 / 51
白いポピーに包まれて6 sideS
しおりを挟む
大学生の頃の昴のバイト先は、若者が多く集まるバーだった。
夜の仕事の方が時給は高くわりに良い。昴の派手な見た目も性格も店の雰囲気に合っていたことも理由の一つだった。
昴のことが目当てで来る客も多かったし、昴の兄である翼にどうにかして近づきたい女性客もごく一部だが、存在した。
そのことを初めて話したのは、バイト中のことだった。その日、昴はオーナーが不在のため、カウンターに立っていた。昴や翼と同じ大学に通う女性である麗が話しかけてきたのは、酒やソフトドリンクの注文が落ち着いた頃だった。
「ツバサ君って彼女いるの?この前、大人しそうな女の子と街で歩いているの見たんだけど。」
彼女は、露出度が高い黒いニットとタイトスカートを合わせている胸の大きな女だった。大学に通う時の服装は、派手であってもここまで過度な露出ではないことを考えると、ある程度の常識を持ち合わせているのだろう。彼女もまた翼に好意を寄せる女性の1人だった。
「あぁ、あれは、彼女じゃねぇよ。親戚の子。翼は、天音と仲が良いんだよ。」
「ふぅん。本当に?あんな顔した翼君見たことないけど。」
「あの顔は、あいつしか引き出せねぇんだよ。」
「はぁ、引き出せない私はまだまだ努力不足かぁ。」
そう言いながらうららは、グラスに残っていた酒を飲み干す。
「私は、どんなに別の男に言い寄られても、翼君を諦めないから。」
「翼の女は苦労するぞ……ま、俺にはどうにもできねぇ。お前、酔いすぎだぞ。明日、後悔するなよ。」
「記憶はなくなるしぃ、私の言ってることはぁ、嘘じゃない。私も天音ちゃん目指して頑張るぅ。」
昴の言うことは本心でもあった。翼は、扱いづらい。それは血のつながった兄弟ですら思うことだ。
他人とは必要最低限ほどしか話さない。かといって根暗なわけではなく、言いたいことははっきりと言い、気に入った相手としか一緒にいない。
そんな男であるから、父親と不仲であるのかもしれない。
一方で麗は、大学内でもそこそこモテている女だった。派手な見た目からか、ヤンチャな男からバーやクラブで声を掛けられるのは、日常茶飯事だった。
それこそ、翼に目を付けるまでは散々遊びまくっていたのだと、自身もその周りの人間も話していた。麗が、昴に話すことは決まって翼のこと、2人の親戚である天音のことだった。何度も通う麗に、昴も天音のことを気兼ねなく話すようになっていた。
夜の仕事の方が時給は高くわりに良い。昴の派手な見た目も性格も店の雰囲気に合っていたことも理由の一つだった。
昴のことが目当てで来る客も多かったし、昴の兄である翼にどうにかして近づきたい女性客もごく一部だが、存在した。
そのことを初めて話したのは、バイト中のことだった。その日、昴はオーナーが不在のため、カウンターに立っていた。昴や翼と同じ大学に通う女性である麗が話しかけてきたのは、酒やソフトドリンクの注文が落ち着いた頃だった。
「ツバサ君って彼女いるの?この前、大人しそうな女の子と街で歩いているの見たんだけど。」
彼女は、露出度が高い黒いニットとタイトスカートを合わせている胸の大きな女だった。大学に通う時の服装は、派手であってもここまで過度な露出ではないことを考えると、ある程度の常識を持ち合わせているのだろう。彼女もまた翼に好意を寄せる女性の1人だった。
「あぁ、あれは、彼女じゃねぇよ。親戚の子。翼は、天音と仲が良いんだよ。」
「ふぅん。本当に?あんな顔した翼君見たことないけど。」
「あの顔は、あいつしか引き出せねぇんだよ。」
「はぁ、引き出せない私はまだまだ努力不足かぁ。」
そう言いながらうららは、グラスに残っていた酒を飲み干す。
「私は、どんなに別の男に言い寄られても、翼君を諦めないから。」
「翼の女は苦労するぞ……ま、俺にはどうにもできねぇ。お前、酔いすぎだぞ。明日、後悔するなよ。」
「記憶はなくなるしぃ、私の言ってることはぁ、嘘じゃない。私も天音ちゃん目指して頑張るぅ。」
昴の言うことは本心でもあった。翼は、扱いづらい。それは血のつながった兄弟ですら思うことだ。
他人とは必要最低限ほどしか話さない。かといって根暗なわけではなく、言いたいことははっきりと言い、気に入った相手としか一緒にいない。
そんな男であるから、父親と不仲であるのかもしれない。
一方で麗は、大学内でもそこそこモテている女だった。派手な見た目からか、ヤンチャな男からバーやクラブで声を掛けられるのは、日常茶飯事だった。
それこそ、翼に目を付けるまでは散々遊びまくっていたのだと、自身もその周りの人間も話していた。麗が、昴に話すことは決まって翼のこと、2人の親戚である天音のことだった。何度も通う麗に、昴も天音のことを気兼ねなく話すようになっていた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
さよなら私の愛しい人
ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。
※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます!
※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる