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思慕の念と共に2

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 華春の街は、まるで迷路のようだった。気を抜くとすぐに陰鬱とした路地裏に引き込まれてしまう。そうなったら最後、どんなトラブルに巻き込まれても文句は言えない。それがこの街の良さとも言えるのだろう。自由で華やかで、美しく、危険。陽宝は王道で素敵な街だが、それとは反対のこちらを好む者も納得できる。
 私は陽宝で生まれ、今まで生活してきた。そして、ここ数日はずっと華春にいる。観光するでもなく、街中を歩く。まだまだ行ったことのない場所はたくさんあったが、そういうこの街を楽しむという気持ちに持っていくことはできなかった。
 そして、日もすっかり上がった頃、街が見渡せる庭園があると黎に聞いたので、そこまで歩いていくことにした。曲がりくねった道や階段をひたすら歩いていく。身体を動かすことで、ぽかぽかと温まるのを感じるが、建物が高く、道に陽が当たりにくいことが幸して、過度な疲労感を感じることなく目的の庭園についた。

 その庭園は、街の高台を切り崩した一角にこじんまりと存在していた。庭園というよりは、道の一角の憩いの場、というような雰囲気があった。街が見渡せる位置に石畳の遊歩道が整備されており、小さな東屋が点在してきた。庭園らしさを感じたのは、遊歩道を優しく見守るようにまばらに植えられた木々たちだ。季節を長く楽しめるようにか、さまざまな花の木が植えられているようで、盛りを過ぎた花もあれば、これから迎える蕾を抱えた木も目についた。
 「ふぅ」
 そう息をついて、遊歩道に沿って建てられた石塀に両手をつく。街をゆるく見下ろせるその位置から見る黎の館は、小さくは見えたが、どこにあるのか一目で分かるほどに特徴的で存在感があった。そして、私の背後には、まだ少し街が続いていた。この街自体が大きな山を切り崩したのか、積み上げて作られたものかは知らないが、先には同じような建物が続いていることを考えると、道も複雑だと容易に想像できる。この街の可能性を考えると計り知れないのとで、恐ろしくもなる。

 「おはよう」
 聞き覚えのある声に振り返ると、背後に王凌雅が立っていた。
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