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第一章 悪役令嬢は『壁』になりたい

4.推しの尊い姿は、動画で永久保存がマストでしょう

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「えっと……。そうだ! 先ほどは助けてくださってありがとうございました」

随分遅くなってしまいましたが、改めて助けてもらったお礼を言えば

「僕の方こそ……」

そう言ってウィルがまた気恥ずかし気に目線を彷徨わせました。

「…………」

はい、会話、即行で終了してしまいました。
しかし、こんなコミュ障不器用な所も推しウィルの子どもの頃らしくて大好きです。

「ウィリアム様は何の本を読まれていたのですか?」

そうこちらから再度話を振れば、

「あぁ、これは……」

とウィルが手に持っていた本の表紙を見せてくれました。
美しい装丁の成されたその本は、どうやら初級の魔導書のようでした。


「ウィリアム様は魔法に興味がおありなんですね」

私がそう言えば

「適性があるかどうかは分からないけれどね」

そう言ってウィルはまた恥ずかし気に下を向きます。

適性?
ありますとも!!
何て言ったって、ウィルあなたは最終的には最強魔術師と言われるようになるんですよ!!!

……残念ながら魔力を暴走させた私と相打ちになる形で亡くなってしまいますが。

あ。
やばい。
最期のシーン思い出しただけで涙が……


そんな事を思い、一人百面相をしていた時でした。
私の元に、閃きの神が降臨されました。

「そうだ!! ウィリアム様! 明日から本格的に魔術を習いましょう!! そうすれば、独学で最強と言われた貴方以上に強くなれるかもしれません!!!」

ウィルが訳が分からないという顔をしたので、私は少し思案した末、思い切って私が転生者であること、そしてウィルの死を防ぎたいと思っている事をまるっと話してみました。




結局、ウィルがどこまで私の話を信じてくれたのかは定かではありませんが。

「君も一緒なら……」

ウィルはそう言うと、それならばそもそも私が魔力暴走をおこさないよう私も一緒に魔術を習う事を条件に、私の提案を受け入れてくれました。


あくまで推しとは干渉しあわず、密かに推しの幸せを見守る『壁』になりたかったのですけどね。
まぁでも成り行きで関りを持つ事になった以上、ウィルを守る為の魔法障壁の一枚になれるくらいには頑張りたいと思います!


「私も頑張るけど……。もしもの時は相打ちではなく、絶対に! 確実に!! 完膚なきまでに!!! オーバーキルで!!!! 消し炭も残らないよう私の事倒してね??!!! 約束よ?」

リリーメイのキャラデザはそれなりの美少女なのですが。
オタク特有の早口とウィルの生存確率が爆上がりするのが嬉し過ぎるあまりグフグフ笑う姿が絶妙に気持ち悪かったのかでしょうか?
それを聞いたウィルは、笑顔を見せてくれるでもなくまた困ったように目を逸らし、実に曖昧に頷いたのでした。






******


それからは私の護衛という名目で、有名な魔術師を講師に呼び、その者を城に上がる時には共に連れて行くようになりました。

初めて魔法を習う推しウィルの目は、キラキラ輝いていてそれはそれは可愛らしく。
魔術講師先生に作っていただいた動画を撮影出来る魔術具で舐めるように撮影させてもらいました。

「ちょっと……リリー……撮らないでよ。恥ずかしいじゃないか……」

そう言って真っ赤になりながら両腕で自身の顔を覆うように隠す推しの姿の映像を夜寝る前に見て鼻血を吹き、一体何枚のシーツをダメにしてしまったかはもう覚えていません。




そうして――
私の楽しい子ども時代の三年間はあっという間に過ぎていったのでした。
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