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第一章 はずれスキル持ちなのだが?
7.もとより王都を離れ、田舎でスローライフを謳歌する予定だったんだが?
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「……ハクタカ! ……ハクタカ!!」
アリアに揺すって起こされ目が覚めて……
目が覚めた事に驚いた。
生きている?
死ぬ前に見る走馬灯のようなものかと思った。
しかし、アリアに飛びつかれた瞬間、額と額を強くぶつけ物凄く痛かった事で夢ではないとようやく気づく。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
アリアはそう言って泣いていた。
訳が分からず傍に立っていたローザを見上げれば
「アリアが『生贄』のスキルで、ハクタカを治したんだ。代償は……ハクタカ、お前のスキルだ」
「俺のスキル??」
いつもの様にスキルを使おうとして、これまで普通にやっていたそれを、どうやっていいのか全く分からなくなっている事に気づいて、俺はそれが本当の事だと気づいた。
「ごめんなさい……」
「アリアが気にすることじゃない。もともとはずれスキルだ。助けてくれてありがとう」
泣き崩れるアリアの頭を撫でながらそう真実と本心を告げるのだが、アリアの涙は止まらない。
「アリアは全く悪くない。俺が撒いた種だ。俺は……」
自らの愚かさを悔やみギリッと奥歯を噛んで、俺は言った。
「俺はこのパーティーを離れる為、死んだ振りをしようとしてわざと攻撃を避けなかったんだ……」
パン!
そんな音がして左の頬を痛みが走った。
顔を上げればレイラが泣いていて。
それで俺はレイラに平手打ちをされた事を知った。
「俺が馬鹿な事やったせいで、アリアに大けがさせた。アリア、本当に……本当にすまなかった」
ようやくそれだけ言って大粒の涙をボロボロと零す俺を見て、アリアはその綺麗な目に涙を沢山浮かべたまま、ぼんやり俺の顔を見ていた。
ローザは
「ハクタカは最後までお人よしが過ぎる」
そう言って目を逸らしたまま、全てを飲み込むと、それ以上何も言わないでいてくれた。
◇◆◇◆◇
いくら元が『はずれ』だったとは言え、スキルが全く無くなった以上、いくらアリアが強く望もうと、俺がこのパーティーと共に行動する事は不可能だった。
「もともと王都を離れ、田舎でスローライフを謳歌する予定だったんだ」
そう言ってヘラッと笑って見せれば、新たに仲間として加わったトレーユが俺の代わりにアリア達を命に代えても守ると誓ってくれた。
「それじゃ、みんな元気でな!」
俺はそれだけ告げ精一杯笑って街の門を出ると、振り返らず歩き出した。
ギルマスは新しい働き先を紹介してくれると言ってくれたが、当初の予定通り俺はそれを断った。
アリアの後ろ髪を引くような事があってはいけないと、行く先は誰にも告げなかった。
◇◆◇◆◇
スキル無しの何の取り柄もない俺が、知り合いもいない田舎の閉鎖的なコミュニティーに溶け込むのは思いの他大変だった。
それでも村の仕事を地道に手伝ったりしていくうちに、何とか少しずつ認めてもらう事が出来た。
かつて夢見た、助けた不遇な美少女との悠々自適なスローライフとは程遠く。
独り身のまま忙しく駆け回る毎日だ。
しかし、余計な事を考えず泥のように眠れる分、忙しいのも単純な肉体労働に駆り出されることも悪い事ではないと思っている。
そんな時、勇者パーティーが魔王を倒したとの噂が流れてきた。
俺がパーティーを離れ、一年と少しが経った頃のことだった。
アリアは王都で皆と幸せに暮らせているのだろうか。
きっと沢山悲しい事、苦しい事があっただろう。
それが全て帳消しになるくらいの幸せが、この先アリアにありますように。
アリアの瞳と同じ琥珀色の月が輝く夜、俺は柄にもなく一人そんな風に月に向かって祈るのだった。
アリアに揺すって起こされ目が覚めて……
目が覚めた事に驚いた。
生きている?
死ぬ前に見る走馬灯のようなものかと思った。
しかし、アリアに飛びつかれた瞬間、額と額を強くぶつけ物凄く痛かった事で夢ではないとようやく気づく。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
アリアはそう言って泣いていた。
訳が分からず傍に立っていたローザを見上げれば
「アリアが『生贄』のスキルで、ハクタカを治したんだ。代償は……ハクタカ、お前のスキルだ」
「俺のスキル??」
いつもの様にスキルを使おうとして、これまで普通にやっていたそれを、どうやっていいのか全く分からなくなっている事に気づいて、俺はそれが本当の事だと気づいた。
「ごめんなさい……」
「アリアが気にすることじゃない。もともとはずれスキルだ。助けてくれてありがとう」
泣き崩れるアリアの頭を撫でながらそう真実と本心を告げるのだが、アリアの涙は止まらない。
「アリアは全く悪くない。俺が撒いた種だ。俺は……」
自らの愚かさを悔やみギリッと奥歯を噛んで、俺は言った。
「俺はこのパーティーを離れる為、死んだ振りをしようとしてわざと攻撃を避けなかったんだ……」
パン!
そんな音がして左の頬を痛みが走った。
顔を上げればレイラが泣いていて。
それで俺はレイラに平手打ちをされた事を知った。
「俺が馬鹿な事やったせいで、アリアに大けがさせた。アリア、本当に……本当にすまなかった」
ようやくそれだけ言って大粒の涙をボロボロと零す俺を見て、アリアはその綺麗な目に涙を沢山浮かべたまま、ぼんやり俺の顔を見ていた。
ローザは
「ハクタカは最後までお人よしが過ぎる」
そう言って目を逸らしたまま、全てを飲み込むと、それ以上何も言わないでいてくれた。
◇◆◇◆◇
いくら元が『はずれ』だったとは言え、スキルが全く無くなった以上、いくらアリアが強く望もうと、俺がこのパーティーと共に行動する事は不可能だった。
「もともと王都を離れ、田舎でスローライフを謳歌する予定だったんだ」
そう言ってヘラッと笑って見せれば、新たに仲間として加わったトレーユが俺の代わりにアリア達を命に代えても守ると誓ってくれた。
「それじゃ、みんな元気でな!」
俺はそれだけ告げ精一杯笑って街の門を出ると、振り返らず歩き出した。
ギルマスは新しい働き先を紹介してくれると言ってくれたが、当初の予定通り俺はそれを断った。
アリアの後ろ髪を引くような事があってはいけないと、行く先は誰にも告げなかった。
◇◆◇◆◇
スキル無しの何の取り柄もない俺が、知り合いもいない田舎の閉鎖的なコミュニティーに溶け込むのは思いの他大変だった。
それでも村の仕事を地道に手伝ったりしていくうちに、何とか少しずつ認めてもらう事が出来た。
かつて夢見た、助けた不遇な美少女との悠々自適なスローライフとは程遠く。
独り身のまま忙しく駆け回る毎日だ。
しかし、余計な事を考えず泥のように眠れる分、忙しいのも単純な肉体労働に駆り出されることも悪い事ではないと思っている。
そんな時、勇者パーティーが魔王を倒したとの噂が流れてきた。
俺がパーティーを離れ、一年と少しが経った頃のことだった。
アリアは王都で皆と幸せに暮らせているのだろうか。
きっと沢山悲しい事、苦しい事があっただろう。
それが全て帳消しになるくらいの幸せが、この先アリアにありますように。
アリアの瞳と同じ琥珀色の月が輝く夜、俺は柄にもなく一人そんな風に月に向かって祈るのだった。
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