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第一章 はずれスキル持ちなのだが?
1.田舎でスローライフをおくりたいのだが?
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俺の夢は田舎でスローライフを送ること!
若い癖になにジジ臭いこと言っているのかって?
……そりゃ俺だって昔は
『いつか父さんの様に凄い冒険者になるんだ!』
そんな夢を見ていた。
俺のスキルは所謂『ユニーク』と言われているもので、その名は『親の七光り』。
一日に七回のみ、親の持っていたスキルや力を自分のものとして使う事が出来る。
俺が小さい時、王都を魔物の群れから守って死んだ親父は王都で最強と謳われたパラディンだ。
だから子どもの時は、そんな親父の力を使えた俺は子ども達の中で正真正銘最強だった。
でも……。
日に七回しか使えないスキルで強敵と渡り合うのは不可能だ。
俺は大きくなってすぐ、そんな事を悟ってしまった。
そこで、夢破れた俺は十八になったら王都を離れ、田舎でスローライフを送ろうと決めた。
僧侶だった母も、八年前の流行り病で亡くしている。
両親に変わり俺の面倒を見てくれた街の皆には恩を感じてはいるが、王都自体に未練はない。
色んなスキルに特化した人間が多く集まる王都では大して役に立たない俺のスキルだが、田舎に行けばそれなりに役立ち重宝されるのではないか……。
そんな打算もあった。
上手く行けば最近流行っている芝居のように、赴いた先の田舎で『助けた不遇な美少女達と悠々自適のスローライフ!!』なんて、美味しい展開も起こりうるかもしれない。
そんな事を妄想しながら、俺は一人、楽しい都落ちの日を指折り数え待ち望んでいたのだが?
◇◆◇◆◇
「じゃあ、ハクタカ。彼女達の事、頼んだぞ!!」
どういうことか王都を離れる前に、親父の戦友であったギルドマスターのコネで国最強のギルドに無理矢理に席が用意され。
そして事もあろうに、ギルマスのゴリ押しにより、問答無用で勇者パーティーに組み込まれることとなってしまった。
……あり得ない。
『使えない奴め!!』
そう言われてパーティーをクビになった『はずれ』スキル持ちが、実は物凄いヤツであった事が後に発覚し、縁の下の力持ちを失い落ちぶれていく旧パーティーを尻目に一人成り上がっていく。
最近そんな小説がここ王都で流行っているのは知っていたが……。
ギルマス、それの影響を受けすぎじゃないか??!
小説は小説だ。
いくら期待されても、俺のスキルにまだ知らぬ発動条件何て無い。
命を落としかねない事態に遭遇しても、きっと俺のは『はずれ』スキルのままだぞ!
しばし焦った後――
「へいへい、せいぜい死なないよう頑張るよ」
でもまぁ、そこまで焦ることもないかと気を取り直した。
どうせすぐに小説の出だしの様に
『はずれスキル持ちの癖に勇者パーティーに居座ろうなんておこがましい!』
とか何とか、どこかからクレームが来て体良く追放してもらえるだろう。
そして俺はスキルの真の効果が発動される事も無く、無事当初の予定どおり生涯田舎でスローライフを送るのだ。
妙に切り替えが早い所が俺の数少ない長所の一つだ。
そう高を括っていたのだが?
◇◆◇◆◇
「……よろしく」
パーティーメンバーの僧侶と戦士に促され、渋々といった様子を隠さずにそう言った勇者は、俺より二つも年若い女の子だった。
少し癖のあるやや赤みが強い栗色の猫っ毛に、リスか何かの小動物を思わせるクリっとした大きなアンバーの瞳。
彼女は名前をアリアと言った。
「気を悪くしないでやってくださいね。アリアは昔、別のパーティーにいた時、足手まといだからと森に置き去りにされて死にかけた事があって……。それ以来、あまり人と関わりたがらないの」
そうアリアの事情を教えてくれたのは、パーティーメンバーのレイラだ。
青みがかった長い黒髪に、母なる海を思わせるマリンブルーの瞳。
二十そこそこという年齢の割に落ち着いていてたおやかな雰囲気のする彼女の職業は僧侶で『再生』のスキルを持つ。
しかし、戦闘ではアリア達が強くて特にやる事が無い為、主にアリアの世話を焼いてやっているらしい。
「女の子を一人森に置き去りにした?」
レイラの話に、俺が思わず眉を顰め険しい顔をすれば
「アリアの事を置き去りにした奴等はその後、無謀な戦いに挑み全滅したと聞いている。罰が当たった訳だ。……だからそんなに怖い顔をするな、アリアが怖がるだろう?」
レイラと並びアリアを守るように立っていた、燃えるように赤い髪と揃いの瞳をした背の高い女の人がそんな事を教えてくれた。
彼女の名前はローザ。
年もレイラと近く、女性らしい凹凸のある体つきをしている彼女は、意外にもタンク役もこなす『破壊』のスキルを持った戦士なのだそうだ。
俺が自己紹介を済ませ
「ハクタカだ、よろしく」
そう言って手を差し出せば、ローザもレイラも柔らかく笑って
「こちらこそ」
そう言いながら握手を返してくれた。
おいおい!!
そこは
『何だと?! ギルマスの紹介だから期待したというのに、とんだはずれスキル持ちじゃないか!!』
と俺を罵倒しながら俺を追放するフラグを立てる絶好のチャンスだろうに。
何だよ、みんなそんなにテンプレ小説が好きなのか?!
ビビらずとも俺が化けることなんてないんだぞ??
若い癖になにジジ臭いこと言っているのかって?
……そりゃ俺だって昔は
『いつか父さんの様に凄い冒険者になるんだ!』
そんな夢を見ていた。
俺のスキルは所謂『ユニーク』と言われているもので、その名は『親の七光り』。
一日に七回のみ、親の持っていたスキルや力を自分のものとして使う事が出来る。
俺が小さい時、王都を魔物の群れから守って死んだ親父は王都で最強と謳われたパラディンだ。
だから子どもの時は、そんな親父の力を使えた俺は子ども達の中で正真正銘最強だった。
でも……。
日に七回しか使えないスキルで強敵と渡り合うのは不可能だ。
俺は大きくなってすぐ、そんな事を悟ってしまった。
そこで、夢破れた俺は十八になったら王都を離れ、田舎でスローライフを送ろうと決めた。
僧侶だった母も、八年前の流行り病で亡くしている。
両親に変わり俺の面倒を見てくれた街の皆には恩を感じてはいるが、王都自体に未練はない。
色んなスキルに特化した人間が多く集まる王都では大して役に立たない俺のスキルだが、田舎に行けばそれなりに役立ち重宝されるのではないか……。
そんな打算もあった。
上手く行けば最近流行っている芝居のように、赴いた先の田舎で『助けた不遇な美少女達と悠々自適のスローライフ!!』なんて、美味しい展開も起こりうるかもしれない。
そんな事を妄想しながら、俺は一人、楽しい都落ちの日を指折り数え待ち望んでいたのだが?
◇◆◇◆◇
「じゃあ、ハクタカ。彼女達の事、頼んだぞ!!」
どういうことか王都を離れる前に、親父の戦友であったギルドマスターのコネで国最強のギルドに無理矢理に席が用意され。
そして事もあろうに、ギルマスのゴリ押しにより、問答無用で勇者パーティーに組み込まれることとなってしまった。
……あり得ない。
『使えない奴め!!』
そう言われてパーティーをクビになった『はずれ』スキル持ちが、実は物凄いヤツであった事が後に発覚し、縁の下の力持ちを失い落ちぶれていく旧パーティーを尻目に一人成り上がっていく。
最近そんな小説がここ王都で流行っているのは知っていたが……。
ギルマス、それの影響を受けすぎじゃないか??!
小説は小説だ。
いくら期待されても、俺のスキルにまだ知らぬ発動条件何て無い。
命を落としかねない事態に遭遇しても、きっと俺のは『はずれ』スキルのままだぞ!
しばし焦った後――
「へいへい、せいぜい死なないよう頑張るよ」
でもまぁ、そこまで焦ることもないかと気を取り直した。
どうせすぐに小説の出だしの様に
『はずれスキル持ちの癖に勇者パーティーに居座ろうなんておこがましい!』
とか何とか、どこかからクレームが来て体良く追放してもらえるだろう。
そして俺はスキルの真の効果が発動される事も無く、無事当初の予定どおり生涯田舎でスローライフを送るのだ。
妙に切り替えが早い所が俺の数少ない長所の一つだ。
そう高を括っていたのだが?
◇◆◇◆◇
「……よろしく」
パーティーメンバーの僧侶と戦士に促され、渋々といった様子を隠さずにそう言った勇者は、俺より二つも年若い女の子だった。
少し癖のあるやや赤みが強い栗色の猫っ毛に、リスか何かの小動物を思わせるクリっとした大きなアンバーの瞳。
彼女は名前をアリアと言った。
「気を悪くしないでやってくださいね。アリアは昔、別のパーティーにいた時、足手まといだからと森に置き去りにされて死にかけた事があって……。それ以来、あまり人と関わりたがらないの」
そうアリアの事情を教えてくれたのは、パーティーメンバーのレイラだ。
青みがかった長い黒髪に、母なる海を思わせるマリンブルーの瞳。
二十そこそこという年齢の割に落ち着いていてたおやかな雰囲気のする彼女の職業は僧侶で『再生』のスキルを持つ。
しかし、戦闘ではアリア達が強くて特にやる事が無い為、主にアリアの世話を焼いてやっているらしい。
「女の子を一人森に置き去りにした?」
レイラの話に、俺が思わず眉を顰め険しい顔をすれば
「アリアの事を置き去りにした奴等はその後、無謀な戦いに挑み全滅したと聞いている。罰が当たった訳だ。……だからそんなに怖い顔をするな、アリアが怖がるだろう?」
レイラと並びアリアを守るように立っていた、燃えるように赤い髪と揃いの瞳をした背の高い女の人がそんな事を教えてくれた。
彼女の名前はローザ。
年もレイラと近く、女性らしい凹凸のある体つきをしている彼女は、意外にもタンク役もこなす『破壊』のスキルを持った戦士なのだそうだ。
俺が自己紹介を済ませ
「ハクタカだ、よろしく」
そう言って手を差し出せば、ローザもレイラも柔らかく笑って
「こちらこそ」
そう言いながら握手を返してくれた。
おいおい!!
そこは
『何だと?! ギルマスの紹介だから期待したというのに、とんだはずれスキル持ちじゃないか!!』
と俺を罵倒しながら俺を追放するフラグを立てる絶好のチャンスだろうに。
何だよ、みんなそんなにテンプレ小説が好きなのか?!
ビビらずとも俺が化けることなんてないんだぞ??
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