異能力と妖と短編集

彩茸

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if『幼妖騒動』

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―――立て込んでいた依頼も終わり、俺と晴樹はるきは家でのんびりと過ごしていた。
暖かな日差しに眠気を覚えていた時、携帯に電話が掛かってくる。誰だと思って
画面を見ると、そこにはまことの名前が。
・・・その電話に出た時から、俺ののんびりとした時間は終わりを告げた。

「もしもし、誠?どうしたんだ?」

「ど、どうしよう静くん!お、お祖父ちゃんが、ちっ、小さくなった・・・!!」

「・・・・・・はあ?!」



―――誠の連絡を受け、俺と晴樹は天春あまはるの妖術で狗神いぬがみ家へ向かう。
天春を呼び出す際、一応天狗てんぐさんにも報告をお願いしておいた。

「あ、いらっしゃい!」

 玄関に向かうと誠がそう言って出てくる。その後ろからひょっこりと顔を出した
 狗神の姿を見て、俺と晴樹は目を丸くした。

「狗神さん・・・だよね?」

 晴樹が困惑した表情で言う。それもそのはず、狗神の容姿は小学生かと思うほど
 幼くなっており、出会った頃の誠に色や目は違えどとてもよく似ていた。

「・・・誰じゃ?」

 狗神は幼い声でそう言って首を傾げる。まさか忘れたのかと思っていると、誠が
 言った。

「お祖父ちゃん、記憶も昔に戻ってるみたいでね?狼昂ろうこうのことは分かるらしいん
 だけど、ボク達のことは覚えてないみたいで・・・」

「狼昂の方は?」

「狼昂は、ちゃんと今の狼昂だった。狼昂に色々説明してもらって、どうにか状況は
 把握してもらったんだけど」

 俺の問いに誠はそう答えると、狗神を見て言った。

「お祖父ちゃん、この人達がさっき話した静くんと晴くん。で、その後ろに居るのが
 ・・・分かる?」

 誠の言葉に狗神はフルフルと首を横に振る。

「僕が生まれた時にはもう狗神さん大人だったからねえ・・・。あ、僕は天春!
 霧ヶ山きりがやまの天狗・・・って言っても分からないか、狗神さんの友達の息子です!」

 天春がそう言ってニコニコと笑うと、狗神はなるほどと頷いた。

「天狗さんのことも分からないのか?」

 俺がそう言うと、天春は言った。

「お父さんが狗神さんと知り合ったの、狗神さんが大人になってからだし。多分今の
 狗神さんは子供の頃の狗神さんだから、分からないんじゃないかなって」

 ね?と天春が狗神を見ると、狗神はコクリと頷いた。



―――取り敢えず家に上げてもらい、真悟しんごさんから事の詳細を聞く。朝食ができたと
呼びに行った真悟さんが本殿の扉を開けると、狗神が小さくなっていたらしい。
昨晩は普通だったらしいので、狗神が本殿に戻った後から今朝の間に何かがあった
ことは確かだそうだ。

「狼昂は何も知らないんですか?」

 俺がそう聞くと、真悟さんは言った。

「多分狼昂に聞いてみるのが一番早いと思う。・・・親父、狼昂出してくれるか?」

 狗神は頷くと、懐から石を取り出す。

「狼昂、出てこい」

 狗神がそう言うと、石から出た煙が狛犬の形となる。現れた狼昂は俺達の姿を
 見ると、開口一番こう言った。

「わたくしにも分からないのです。わたくしが寝ている間に何かあったのは確かなの
 ですが・・・」

 心配そうな顔で狗神を見る狼昂に、狗神はキョトンとした顔で首を傾げる。

「狗神さんが覚えてる知り合いとかいないの?妖とかで」

 晴樹がそう言うと、狗神が狼昂をモフモフしながら言った。

「うーん・・・雷羅らいら?でもあ奴とは喧嘩したばっかりじゃし・・・」

 狗神の言葉に、狼昂はハッとした顔をする。そして狗神に言った。

主様ぬしさま、喧嘩の原因は何だったのですか?」

「・・・雷。あ奴、ワシが寝ておる傍に雷を落としよった・・・」

 苦手なの知っとる癖に・・・とムスッとした顔で言った狗神に、狼昂は苦笑いを
 浮かべる。

「お祖父ちゃん本当に雷苦手なんだ・・・」

 そう呟いた誠に、狼昂は頷いて言った。

「主様が雷羅様と雷のことで喧嘩をしたことは、そんなに多くはありません。大体
 いつ頃のことかは分かりましたが、この頃の主様の知り合いはわたくしと雷羅様
 以外、皆もう既に亡くなっています」

「他に誰か頼れそうな人いないかな・・・」

 天春がそう言うと、晴樹が思い付いたように言った。

「・・・そうだ、雨谷うこくなら何か分かるんじゃない?」
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