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卒業編
卒業
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―――帰る方向が同じなので、俺と山野は無言のまま廊下を進む。身長は違えど
歩幅が同じなため、必然的に山野の隣を歩いていた。
「・・・悪い、助かった」
ボソリと山野が言う。
「お前がお礼言うと、何か違和感あるんだよな」
俺がそう言うと、山野は俺を睨みつけた。
「オレのこと何だと思ってんだ。お前だって、お礼言うと違和感あるんだからな」
「はあ?俺のこと何だと思ってるんだ」
俺も山野を睨みつけ、二人で睨み合いながらも歩を進める。
少し歩くと俺と山野は同時に溜息を吐き、再び前を見た。
「・・・前から思ってたんだが、何で山野は他の奴らと俺への態度が全然違うんだ。
誠と話してるとき以上に口悪いだろ、お前」
俺がそう言うと、山野は鼻で笑う。そして、俺を見て言った。
「大嫌いな奴に、取り繕う必要があると思うか?」
狗神以上に嫌いだよ、お前のこと。そう付け加えた山野に、それが素かよと返す。
「山霧だって、他の奴らとオレへの態度全然違うじゃねえか。お前、オレと話してる
ときが一番口悪いだろ」
そう言った山野に、俺は笑って言った。
「大嫌いな奴の前で、取り繕う必要はねえだろ」
「ああそうかよ」
山野はそう言うと、前を向く。俺も前を向き、二人並んで寮へ戻った。
―――部屋に戻ると、誠がベッドの上でゴロゴロしていた。
「あ、おかえり~」
誠がそう言って起き上がる。
「ただいま」
俺がそう言うと、誠は少し寂しそうな顔をして言った。
「・・・こういう会話、今日で最後になっちゃうんだね」
「まあ、そうだな」
「離れ離れになるの、ちょっと寂しいかも」
そう言って誠は苦笑いを浮かべる。
・・・月陰学園に来てから三年とちょっと、本当に色んなことがあった。
そして、色んな出会いがあった。
初めての人間の友達、妖のクオーター、出合頭に俺の友達を滅しようとした奴、
妖を憎む大嫌いな奴、そいつのペア、弟の友人、父さんの知り合い・・・。
人間だけじゃない、沢山の妖とも出会った。仲良くなったり、殺したり・・・
本当に、色々あったな。
初めて狗神家にお邪魔したときのことを思い出す。あの日狗神が言っていた、
『お前さんの元には多くの者が集う』という言葉。あれは本当だった。
俺は本当に、独りじゃなかった。
「またすぐ会えるさ」
俺はそう言って笑う。そうだねと誠が笑った時、扉をノックする音が聞こえた。
扉を開けると、そこにはお菓子の詰まった袋を持った彩音と清水さんの姿が。
「最後だし、お菓子パーティーしましょ!」
「さっき晴樹くん達も呼んできました!」
彩音と清水さんはそう言って笑う。
「チョコある?!」
誠が目を輝かせると、彩音達の後ろから和正がひょっこりと顔を出して言った。
「持って来たぜ!」
ぞろぞろと部屋の中に入ってきた皆の後ろから、晴樹がジュースのペットボトルを
抱えてやってくる。
「静兄、紙コップ持ってない?」
「前に買ったやつが残ってるぞ」
俺がそう言うと、晴樹は良かったと笑みを浮かべる。
その後俺達は、夕飯の時間になるまでお菓子パーティーをするのだった。
「思ってたよりも大きいな・・・」
「まあ、元は富豪の屋敷だったらしいしね・・・」
二人の青年が、とある屋敷の前に立っていた。
青年の名前は山霧 静也と山霧 晴樹。彼らは、二人一組で活動している
フリーランスの祓い屋である。
「俺が先に行くから、援護頼んだ」
兄の静也が、そう言って刀を抜く。
「分かった、後ろは僕に任せて」
弟の晴樹が、そう言ってホルスターから銃を抜く。
屋敷の中に入ると、階段の下で一匹の妖が二人を怯えた顔で見つめていた。
「なあ、ここにこういう妖いなかったか?」
静也がそう言って鞄から取り出した資料を妖に見せる。妖は震える手で二階を
指さした。
「ありがとう、君は襲われないように気を付けてね」
晴樹がそう言って妖に手を振る。妖は驚いた顔をした後、小さな声で言った。
「殺さないの・・・?」
静也と晴樹は微笑むと、妖に言った。
「悪意のない妖とは仲良くしてるんだ」
――祓い屋を生業としている異能力者達の中で、とある噂が流れていた。最強と
呼ばれる、二人組の祓い屋がいると。その祓い屋は誰よりも強く、誰よりも妖に
優しいという。――
・・・異能力と妖と、ほとんどは敵対するそれらの共存を願う青年達。
妖達と笑い合う彼らの姿は傍から見れば異様な光景だが、そこには確かに絆が
あった。
『異能力と妖と』完―――
歩幅が同じなため、必然的に山野の隣を歩いていた。
「・・・悪い、助かった」
ボソリと山野が言う。
「お前がお礼言うと、何か違和感あるんだよな」
俺がそう言うと、山野は俺を睨みつけた。
「オレのこと何だと思ってんだ。お前だって、お礼言うと違和感あるんだからな」
「はあ?俺のこと何だと思ってるんだ」
俺も山野を睨みつけ、二人で睨み合いながらも歩を進める。
少し歩くと俺と山野は同時に溜息を吐き、再び前を見た。
「・・・前から思ってたんだが、何で山野は他の奴らと俺への態度が全然違うんだ。
誠と話してるとき以上に口悪いだろ、お前」
俺がそう言うと、山野は鼻で笑う。そして、俺を見て言った。
「大嫌いな奴に、取り繕う必要があると思うか?」
狗神以上に嫌いだよ、お前のこと。そう付け加えた山野に、それが素かよと返す。
「山霧だって、他の奴らとオレへの態度全然違うじゃねえか。お前、オレと話してる
ときが一番口悪いだろ」
そう言った山野に、俺は笑って言った。
「大嫌いな奴の前で、取り繕う必要はねえだろ」
「ああそうかよ」
山野はそう言うと、前を向く。俺も前を向き、二人並んで寮へ戻った。
―――部屋に戻ると、誠がベッドの上でゴロゴロしていた。
「あ、おかえり~」
誠がそう言って起き上がる。
「ただいま」
俺がそう言うと、誠は少し寂しそうな顔をして言った。
「・・・こういう会話、今日で最後になっちゃうんだね」
「まあ、そうだな」
「離れ離れになるの、ちょっと寂しいかも」
そう言って誠は苦笑いを浮かべる。
・・・月陰学園に来てから三年とちょっと、本当に色んなことがあった。
そして、色んな出会いがあった。
初めての人間の友達、妖のクオーター、出合頭に俺の友達を滅しようとした奴、
妖を憎む大嫌いな奴、そいつのペア、弟の友人、父さんの知り合い・・・。
人間だけじゃない、沢山の妖とも出会った。仲良くなったり、殺したり・・・
本当に、色々あったな。
初めて狗神家にお邪魔したときのことを思い出す。あの日狗神が言っていた、
『お前さんの元には多くの者が集う』という言葉。あれは本当だった。
俺は本当に、独りじゃなかった。
「またすぐ会えるさ」
俺はそう言って笑う。そうだねと誠が笑った時、扉をノックする音が聞こえた。
扉を開けると、そこにはお菓子の詰まった袋を持った彩音と清水さんの姿が。
「最後だし、お菓子パーティーしましょ!」
「さっき晴樹くん達も呼んできました!」
彩音と清水さんはそう言って笑う。
「チョコある?!」
誠が目を輝かせると、彩音達の後ろから和正がひょっこりと顔を出して言った。
「持って来たぜ!」
ぞろぞろと部屋の中に入ってきた皆の後ろから、晴樹がジュースのペットボトルを
抱えてやってくる。
「静兄、紙コップ持ってない?」
「前に買ったやつが残ってるぞ」
俺がそう言うと、晴樹は良かったと笑みを浮かべる。
その後俺達は、夕飯の時間になるまでお菓子パーティーをするのだった。
「思ってたよりも大きいな・・・」
「まあ、元は富豪の屋敷だったらしいしね・・・」
二人の青年が、とある屋敷の前に立っていた。
青年の名前は山霧 静也と山霧 晴樹。彼らは、二人一組で活動している
フリーランスの祓い屋である。
「俺が先に行くから、援護頼んだ」
兄の静也が、そう言って刀を抜く。
「分かった、後ろは僕に任せて」
弟の晴樹が、そう言ってホルスターから銃を抜く。
屋敷の中に入ると、階段の下で一匹の妖が二人を怯えた顔で見つめていた。
「なあ、ここにこういう妖いなかったか?」
静也がそう言って鞄から取り出した資料を妖に見せる。妖は震える手で二階を
指さした。
「ありがとう、君は襲われないように気を付けてね」
晴樹がそう言って妖に手を振る。妖は驚いた顔をした後、小さな声で言った。
「殺さないの・・・?」
静也と晴樹は微笑むと、妖に言った。
「悪意のない妖とは仲良くしてるんだ」
――祓い屋を生業としている異能力者達の中で、とある噂が流れていた。最強と
呼ばれる、二人組の祓い屋がいると。その祓い屋は誰よりも強く、誰よりも妖に
優しいという。――
・・・異能力と妖と、ほとんどは敵対するそれらの共存を願う青年達。
妖達と笑い合う彼らの姿は傍から見れば異様な光景だが、そこには確かに絆が
あった。
『異能力と妖と』完―――
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