異能力と妖と

彩茸

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実習編

後輩

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―――それから数日後。僕と晴樹が指定された時間に指定された場所へ行くと、
照真くんの父親と和正が立っていた。

「あれ?二人共何でここに居るんだ?」

 和正が不思議そうな顔で言う。こっちが聞きたいと僕が言うと、照真くんの父親が
 苦笑いを浮かべて言った。

「この前は断っちゃってごめんね。先に和正と約束していたから、俺は無理でね」

「いえ、大丈夫です。・・・えっと、僕達はどうすれば良いんでしょうか」

 僕の言葉に照真くんの父親はちょっと待っててと携帯を取り出し、電話を掛ける。
 電話を終えた照真くんの父親は、今から来るってと苦笑いを浮かべる。
 待つこと数分。上空から声が聞こえた。

「ごめーん!寝坊したあ!!」

 驚いて上を見ると、そこには黒いスーツに身を包んだ女性の姿が。
 よく見ると女性は死神が持つような大きな鎌を持っており、それをくるくると
 回すと僕達の前に降りてきた。

「ごめんごめん、君達が山霧先輩の息子達だよね?」

 僕と晴樹が頷くと、先輩そっくり~!と女性は笑う。

「あ、えっと・・・山霧 静也です。よろしくお願いします」

「・・・山霧 晴樹です、よろしくお願いします」

 僕と晴樹がそう言って頭を下げると、女性はニコッと笑って言った。

「あたしは苅野かりの 麗奈れいな、フリーランスの祓い屋をしてる。麗奈って呼んでね!」

 女性・・・麗奈さんは照真くんの父親を見ると、頭を下げる。

「ごっめんアッキー、起こしてもらったのに二度寝した!」

「せ、先輩、その呼び方はやめてくださいって・・・」

 麗奈さんの言葉に照真くんの父親はそう言うと、困ったような顔をする。

「アッキー・・・」

 晴樹がそう呟くと、和正が僕達に小声で言った。

あきらだから、アッキーらしいぜ。父さ・・・あの人が言ってた」

「恥ずかしがらなくても、普通に僕達の前で父さんって呼んでも良いんだぞ?」

 僕がそう言うと、和正は恥ずかしそうに笑う。仲良くなったようで良かったなんて
 思っていると、照真くんの父親・・・晃さんが言った。

「じゃあ、君達は先輩に付いて行って。俺達は今からあっちの見回りに行ってくる
 から」

 僕達が頷くと、それじゃあと言って晃さんは歩き出す。
 僕達に手を振りながら晃さんの後を付いて行く和正に手を振り返していると、
 麗奈さんが言った。

「そうそう、電話ごめんね?眠すぎて頭回ってなくてさー」

「あの時間に眠いって・・・夜勤だったんですか?」

 晴樹がそう聞くと、麗奈さんは頷く。

「あたしの仕事、大半が早朝か真夜中なんだよね。山霧先輩みたいに日中じゃないと
 まともに能力使えないって訳でもないし、現フリーランス最強として夜中の呼び
 出しが多いんだよ」

 生きてた頃は山霧先輩が最強だったんだよーと言った麗奈さんに、父さんが死んだ
 ことは知っているんだなと思う。
 晃さんと和正が行った方向とは逆の方向に歩き出した麗奈さんの隣を歩きながら、
 僕は聞いた。

「そうだ、父の能力って何だったんですか?」

 麗奈さんは、知らないの?!と驚いた顔で僕を見る。
 僕と晴樹が頷くと、麗奈さんは言った。

「山霧先輩の能力はね、だよ」

「影?」

 僕達が首を傾げると、麗奈さんは僕の影を指さす。

「そう、影。といっても、影を作ったり操ったりって訳じゃなくてね。影を踏んで
 相手の動きを止めたり、影を踏んだ相手と位置を交換したりってな感じだった」

 何か面白い能力でしょと麗奈さんは笑う。

「山霧先輩と同じ班で実践授業やってた頃は、先輩の能力で動きを止めてあたし達が
 攻撃するなんてこともあってね。・・・まあでも、あの人体力も身体能力も他の
 生徒とは比べ物にならないくらい高くてさ。後輩のあたし達が行動する前に妖討伐
 しちゃったりして、ペアの先輩によく怒られてたよ」

 懐かしいねと呟いた麗奈さんに、晴樹が少し悲しそうな顔をする。
 そんな晴樹に気付いてか、麗奈さんは言った。

「・・・ごめんね、あんまり君達の前でする話じゃなかったかも」

「・・・いえ、もっと聞きたいです」

 首を横に振って言った晴樹に、麗奈さんは優しく微笑む。
 そして歩きながら、父さんとの実践授業の思い出を聞かせてくれるのだった。
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