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強化合宿編
無茶
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―――狗神の所に着くと、すぐに狗神に治癒術を掛けてもらった。
綺麗さっぱり消え去った傷と痛みに感嘆の声を上げていると、心配そうな顔をして
彩音が駆け寄って来た。
「大丈夫・・・?」
「・・・ごめん、邪魔した」
僕がそう言うと、彩音は首をブンブンと横に振る。
「休憩にするか」
狗神がそう言って彩音と先程まで戦っていたであろう狼昂を呼び寄せる。
狼昂を石の中に戻した狗神は、雷羅を見て呆れた顔で言った。
「お主、手加減下手じゃろ」
「いや、だってこの子が大丈夫だって言うから・・・」
「こ奴は大丈夫じゃなくても大丈夫と言うんじゃ。のう?」
狗神がそう言って僕を見る。僕が首を傾げると、自覚なしかと溜息を吐かれた。
「静也、無理しちゃ駄目だからね?」
彩音にそう言われ、そんなつもりは・・・と返すと、頬をつねられた。
「あなたねえ・・・こっちは見てるだけで心配になるのよ!いっつも無茶して!!」
怒る彩音に何も言えず目を逸らすと、雷羅が笑って言った。
「そういう所、何だか狗神みたいだね!」
僕は彩音の手を退けると、雷羅を見て首を傾げる。
「弱っちいのに、すーぐ無茶して。こっちの心配なんて気付きもしない」
雷羅はそう言って、ね?と狗神を見る。狗神は顔を逸らし、うるさいと小さく
呟いた。
「狗神さんが、弱い・・・?」
不思議そうに首を傾げる彩音に、雷羅は頷く。どういうことだと狗神を見ると、
狗神は雷羅をちらりと見て言った。
「ワシより雷羅の方が何倍も強いからの。雷羅から見れば、ワシは弱っちいん
じゃろう」
僕と彩音は驚いた顔で雷羅を見る。雷羅はニコニコと笑うと言った。
「まあ、ぼくの方が狗神より数百年くらい年上っていうのもあるかもしれない
けどね!なんせ、狗神が小さい頃からちょくちょく面倒見てたし」
あの頃は可愛かったなあ~と言う雷羅に、狗神は少し恥ずかしそうな顔をする。
「・・・あれ、その雷羅に父が勝ったんですか・・・?」
僕がそう言うと、雷羅はうんうんと頷いた。
「気付いたかい?山霧のヤバさに。・・・まあ、その血を引いてるんだ、君もきっと
強くなるさ!」
そう言って笑った雷羅に同意するように、狗神も頷く。それを見ていた彩音が、
私も強くならなくちゃと呟いた。
―――夕方、僕達はお堂に戻るため山を登る。
あの後狗神と彩音の横で雷羅の雷を避けていたのだが、結局全て避けるなんてことは
できず、何度か狗神に治療してもらった。
「悪いな、何度も中断させちゃって」
「良いのよ。・・・それより、何であんなに怪我しても動けてたのか不思議でなら
ないんだけど。痛くないの?」
「え?痛いけど。・・・まあ、体動くし良いかなって」
「おかしいんじゃないの?あなたの感覚・・・」
「そうか?」
彩音とそんな会話をしていると、茂みの中からニコニコと僕達に手を振る天春と
涙目の清水さんが出て来た。
「・・・天狗の倅、何があったんじゃ」
狗神が清水さんを見て聞くと、天春は苦笑いを浮かべて言った。
「いやあ、普通に戦ってたんですけど・・・」
「天春くんに、一撃も、入らなくて・・・」
清水さんが俯きながら言うと、天春はごめんってと困った顔をする。
「手加減・・・は、したんだな」
清水さんがそこまで怪我をしていないのを見て僕が天春に言うと、当たり前
じゃん!と返された。
清水さんはそれが悔しかったのか、ヌンチャクを持つ手に力を籠めると顔を上げ
天春を見て言った。
「次こそは、ちゃんと攻撃当てますから・・・!」
強い子だね~と雷羅が笑う。頑張ってねと彩音が清水さんの背中をポンポンと
叩いた。
―――お堂で天狗さんの用意してくれた夕食を食べながら、僕達は話をする。
ムスッとした顔の誠と和正に何かあったのかと聞くと、誠が言った。
「・・・天狗さんに、一回も触れなかった」
悔しいと呟いた誠に、天狗さんは笑う。無言でご飯を口に運ぶ和正にそっちは?と
尋ねると、和正は落魅をちらりと見て言った。
「・・・落魅の教え方が分かりやすくて、何か腹立った」
「ああ、落魅は教えるの上手だよ」
さらりと言った晴樹に、僕達は驚いた顔をする。落魅はその様子を見てニヤニヤと
笑いながら言った。
「まあ、晴樹に戦い方を教えたのはあっしですからねえ。才能はありやすし、
このままいけば晴樹よりも強くなるんじゃないですかい?」
「褒められても嬉しくねー・・・」
ムスッとしたままの和正を見て、落魅は楽しそうに笑う。
「・・・馬鹿にされてるんじゃないカ?」
のっぺらぼうがそう言って晴樹を見るが、晴樹はのっぺらぼうを見ることなく
呟いた。
「・・・今は、良い。取り敢えず、のっぺらぼうに勝つのが先」
「そうかヨ・・・」
和やかな時間が流れる。少し前まで敵だった妖も交えて過ごすこの時間は、少し
奇妙だが何処か安心するようなものだった。
綺麗さっぱり消え去った傷と痛みに感嘆の声を上げていると、心配そうな顔をして
彩音が駆け寄って来た。
「大丈夫・・・?」
「・・・ごめん、邪魔した」
僕がそう言うと、彩音は首をブンブンと横に振る。
「休憩にするか」
狗神がそう言って彩音と先程まで戦っていたであろう狼昂を呼び寄せる。
狼昂を石の中に戻した狗神は、雷羅を見て呆れた顔で言った。
「お主、手加減下手じゃろ」
「いや、だってこの子が大丈夫だって言うから・・・」
「こ奴は大丈夫じゃなくても大丈夫と言うんじゃ。のう?」
狗神がそう言って僕を見る。僕が首を傾げると、自覚なしかと溜息を吐かれた。
「静也、無理しちゃ駄目だからね?」
彩音にそう言われ、そんなつもりは・・・と返すと、頬をつねられた。
「あなたねえ・・・こっちは見てるだけで心配になるのよ!いっつも無茶して!!」
怒る彩音に何も言えず目を逸らすと、雷羅が笑って言った。
「そういう所、何だか狗神みたいだね!」
僕は彩音の手を退けると、雷羅を見て首を傾げる。
「弱っちいのに、すーぐ無茶して。こっちの心配なんて気付きもしない」
雷羅はそう言って、ね?と狗神を見る。狗神は顔を逸らし、うるさいと小さく
呟いた。
「狗神さんが、弱い・・・?」
不思議そうに首を傾げる彩音に、雷羅は頷く。どういうことだと狗神を見ると、
狗神は雷羅をちらりと見て言った。
「ワシより雷羅の方が何倍も強いからの。雷羅から見れば、ワシは弱っちいん
じゃろう」
僕と彩音は驚いた顔で雷羅を見る。雷羅はニコニコと笑うと言った。
「まあ、ぼくの方が狗神より数百年くらい年上っていうのもあるかもしれない
けどね!なんせ、狗神が小さい頃からちょくちょく面倒見てたし」
あの頃は可愛かったなあ~と言う雷羅に、狗神は少し恥ずかしそうな顔をする。
「・・・あれ、その雷羅に父が勝ったんですか・・・?」
僕がそう言うと、雷羅はうんうんと頷いた。
「気付いたかい?山霧のヤバさに。・・・まあ、その血を引いてるんだ、君もきっと
強くなるさ!」
そう言って笑った雷羅に同意するように、狗神も頷く。それを見ていた彩音が、
私も強くならなくちゃと呟いた。
―――夕方、僕達はお堂に戻るため山を登る。
あの後狗神と彩音の横で雷羅の雷を避けていたのだが、結局全て避けるなんてことは
できず、何度か狗神に治療してもらった。
「悪いな、何度も中断させちゃって」
「良いのよ。・・・それより、何であんなに怪我しても動けてたのか不思議でなら
ないんだけど。痛くないの?」
「え?痛いけど。・・・まあ、体動くし良いかなって」
「おかしいんじゃないの?あなたの感覚・・・」
「そうか?」
彩音とそんな会話をしていると、茂みの中からニコニコと僕達に手を振る天春と
涙目の清水さんが出て来た。
「・・・天狗の倅、何があったんじゃ」
狗神が清水さんを見て聞くと、天春は苦笑いを浮かべて言った。
「いやあ、普通に戦ってたんですけど・・・」
「天春くんに、一撃も、入らなくて・・・」
清水さんが俯きながら言うと、天春はごめんってと困った顔をする。
「手加減・・・は、したんだな」
清水さんがそこまで怪我をしていないのを見て僕が天春に言うと、当たり前
じゃん!と返された。
清水さんはそれが悔しかったのか、ヌンチャクを持つ手に力を籠めると顔を上げ
天春を見て言った。
「次こそは、ちゃんと攻撃当てますから・・・!」
強い子だね~と雷羅が笑う。頑張ってねと彩音が清水さんの背中をポンポンと
叩いた。
―――お堂で天狗さんの用意してくれた夕食を食べながら、僕達は話をする。
ムスッとした顔の誠と和正に何かあったのかと聞くと、誠が言った。
「・・・天狗さんに、一回も触れなかった」
悔しいと呟いた誠に、天狗さんは笑う。無言でご飯を口に運ぶ和正にそっちは?と
尋ねると、和正は落魅をちらりと見て言った。
「・・・落魅の教え方が分かりやすくて、何か腹立った」
「ああ、落魅は教えるの上手だよ」
さらりと言った晴樹に、僕達は驚いた顔をする。落魅はその様子を見てニヤニヤと
笑いながら言った。
「まあ、晴樹に戦い方を教えたのはあっしですからねえ。才能はありやすし、
このままいけば晴樹よりも強くなるんじゃないですかい?」
「褒められても嬉しくねー・・・」
ムスッとしたままの和正を見て、落魅は楽しそうに笑う。
「・・・馬鹿にされてるんじゃないカ?」
のっぺらぼうがそう言って晴樹を見るが、晴樹はのっぺらぼうを見ることなく
呟いた。
「・・・今は、良い。取り敢えず、のっぺらぼうに勝つのが先」
「そうかヨ・・・」
和やかな時間が流れる。少し前まで敵だった妖も交えて過ごすこの時間は、少し
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