神と従者

彩茸

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第四部

両目

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―――二対一になった戦い。名前が分からない俺さえも呪うことができる神通力を
持つ荒契が有利かに思われたが、実際はこちらの隠していた手札が猛威を振るって
いた。

「厄介だなぁ、それ」

 荒契がぼやく。糸繰が手に持っている真っ白な人形が、また一つ漆黒に染まる。
 俺が糸繰に指示を出し、荒契が神通力を使った直後に糸繰の妖術で呪いの対象を
 強制的に真っ白な人形へと変えていた。
 ・・・言葉では簡単に言えるが、実際はかなり難易度の高いことをやっている。
 俺の合図が遅れても駄目、糸繰の妖術が遅れても駄目。呪いが発動する前に
 対象を変更しなければいけない。そして、対象を強制的に変更するには、呪いが
 何を対象にして何を行うものなのかを瞬時に把握する必要がある。
 合図と同時に断片的な情報は伝えているが、それを正確に処理して妖術を発動
 させるのは糸繰にしかできない芸当だろう。

「次。いと、呼吸不能」

 柏木で荒契に攻撃を仕掛けつつ、俺は言う。柏木が逸らされたので追撃されない
 ように荒契から距離を取る。
 隣で座り込んでいる糸繰に視線を向けると、彼の手にあった白い人形は漆黒に
 染まっていた。彼の足元には漆黒の人形が綺麗に並べられており、フリー
 マーケットみたいだな・・・なんて思う。

「次。俺、神通力禁止」

「次。俺、失明」

「次。いと、昏睡」

 増えていく漆黒の人形。真っ白な人形は、あとどれくらい残っているのだろうか。

「・・・・・・」

 目が合った糸繰から、無言の圧を感じる。人形の残量が少ないのか、糸繰の妖力が
 少なくなっているのか・・・どちらにせよ、あまり時間は残されていないようだ。
 思いっ切り地面を蹴り、荒契へと迫る。手に持った刀で柏木を逸らそうとしていた
 荒契に、柏木を向けず蹴りを食らわせる。

「痛いなぁ」

 そう言いながらも受け身を取った荒契の顎目掛けて、スピード重視で柏木を振り
 上げる。彼は顔を上に逸らし、柏木を回避しようとする。
 ・・・だが、こちらの方が少しだけ早かった。

「あっ」

 荒契の慌てたような声が聞こえる。柏木が当たり、荒契の仮面が外れたのだ。

「え・・・・・・」

 荒契の顔を見て言葉を失う。彼の顔は予想よりも若く、そして・・・。

「お前、その目どうなって・・・」

「どうも何も、見たまんまだけどぉ?」

 両目は、明らかに偽物だった。
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