神と従者

彩茸

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第四部

本拠地

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―――朧車に目的地を告げ、なるべく急いで向かってもらう。目指すは糸繰が
いるであろう、呪いの神の本拠地だ。
場所は前に糸繰が教えてくれた。危ないから近付いちゃ駄目な場所だと教えて
くれたが、今は緊急事態だ。

「着きましたよ」

「ありがとう。・・・危ないから、帰ってて良いぞ」

「では、失礼します」

 朧車とそんな言葉を交わし、俺は一人森の中を進む。木々の隙間から差し込む
 光に、日が昇ったのだと気付いた。
 開けた場所に着くと、どうやら妖達が祭りの準備をしているようで。話し掛けるか
 迷っていると、近寄ってきた妖が訝しむような顔で俺を見て話し掛けてきた。

「誰だあんた、ここに何か用か?」

「ああいや、通りすがったら何かやってるみたいだったからさ。何してんだろうな
 って思って」

「何だ、通りすがりの神様かい。今日はおら達の神様のなんだ、部外者は
 去った方が身のためだぞ」

「お前達の神様は部外者に厳しいのか?」

「他の神様もそうだろうが、呪いの神様は特に邪魔されるのを嫌うからな。ほれ、
 おらだって話してるのバレたらまずいんだ。去った去った」

 ずいぶん親切な妖だな、そんでもって俺はやっぱり神って認識なのか。そんな
 感想を抱きつつ、俺は静かにその場を離れる。
 糸繰の姿を探しつつ歩くが、どうにも見つからない。何処だ何処だと探して
 いると、コソコソと話す妖達の声が聞こえた。

「ねえ聞いた?神様、従者を連れ帰ってきたらしいよ」

「従者って、あの鬼よね?捨てたって聞いてたけど・・・何かあったのかな」

「聞いた話だと、人手が足りないんだって。従者も嫌そうな顔してなかったし、
 無理矢理連れて来た訳じゃないのかなって見た人が言ってた」

 そんな会話に、即座に糸繰の事だと気付く。他に何か情報はないかと聞き耳を
 立てていると、妖の一人が言った。

「でもまあ、従者が何やってるかなんて知らないし。毎年毎年、隅の建物の中に
 籠っているだけじゃない」

「前にお母さんが言ってたんだけど、従者って神様に出される食事の毒見役もしてる
 らしいよ」

「そっか、あんたのお母さん配膳係だっけ」

「そうそう。従者には毒見だって伝えてないんだってさ、毒が盛られている可能性が
 あるなんて神様に言われたら殺されちゃうからって」

「殺されるのは嫌だよね~」

 そこでその話題は終わったらしく、妖達は別の話題で盛り上がり始める。
 隅にある建物か・・・なんて考えながら、俺は気配を消して歩みを進めた。
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