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第四部
予測
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―――芽々の報告を補足する形で、史蛇も発言をする。分からなかったと言われた
部分の一部は、糸繰が補足していた。
「呪いの神様の神事が行われるのは秋、新月の夜なんだそうです。神事の大まかな
流れは、御鈴様の神事と同じ。違う点を挙げるとすれば、信者の一部が忽然と姿を
消す、というところですね」
〈前に蒼汰には話したんですけど、オレが殺してました。昨年の神事はどうなってた
のか知らないですけど。〉
「昨年も、同じように信者が消えていたそうだ。誰が消していた・・・殺していた
のかは分からないが」
芽々の報告に糸繰が補足を入れ、史蛇が追加で発言をする。
「噂では、従者を捨ててから呪いの神様に少し余裕がなくなったらしく」
「余裕がなくなった・・・?」
芽々の報告に、思わず口を挟む。芽々は頷くと、御鈴を見て言った。
「おそらく、従者・・・糸繰くんに丸投げしていた事を自分でするようになったん
じゃないかと思われます。重役の一人が、呪いの神様が代わりが見つからないと
ぼやいていたのを耳にしたようで」
〈主なら、全部一人でやっていてもおかしくない。あの方は、要らないと思えば
簡単に切り捨てられるだけの力を持っているから。〉
メモを芽々に見せた糸繰は、ふと考える素振りを見せると溜息を吐く。
「どうした?」
そう聞くと、糸繰は何とも言えない顔で俺を見た後メモにペンを走らせた。
〈いや、主にまだ使うって言われたのを思い出して。もしかしたら今年の神事は
・・・とか、思っただけだ。〉
「呪いの神の神事に、貴方が呼ばれるかもしれないと?」
メモを覗き込んだ利斧がそう言うと、静かに話を聞いていた令がえっ?!と声を
上げる。
「にゃっ、にゃんとかならないのか・・・?」
「・・・妾では、あの神相手に何もできないじゃろう。糸繰が自分で抵抗するか、
蒼汰が抵抗するか・・・いずれにせよ、戦うことにはなるじゃろうな」
令の言葉に、御鈴が暗い面持ちで答える。糸繰はそれを見て申し訳なさそうな顔を
すると、御鈴にメモを差し出した。
〈もしかしたらってだけですから。大丈夫です、操られでもしない限りオレは協力
する気なんてありませんから。〉
「それ、フラグって言うんだぞ・・・」
思わず突っ込んだ俺に、糸繰はきょとんとした顔で首を傾げる。
「何もないと良いんですけど・・・。あっ、報告に戻りますね」
芽々がそう言って報告を再開する。信者の様子などは糸繰も知らなかったらしく、
時折驚いた顔を見せながら話を聞いていた。
―――報告が終わり、信者に出された昼食を食べる。満腹になり窓から差し込む
暖かな光に微睡んでいると、利斧のクスクスと笑う声がした。そちらを見ると
どうやら利斧の膝に座っていた御鈴が眠ってしまったようで、彼は柔らかな笑みを
浮かべて彼女を見ていた。
「すみません、貴方の御鈴を取ってしまいました」
「別に取られたなんて思ってませんよ・・・」
俺の視線に気付いた利斧が放った言葉にそう返すと、では暫くこのままでと彼は
嬉しそうに笑みを浮かべる。
〈親子って、あんな感じなのか?〉
糸繰がそう書いたメモを差し出してきたので、どうだろうなと俺は言う。
・・・俺も、あんな感じで父親の膝の上で眠ってみたかった。いや、もしかしたら
覚えていないだけでやってもらっていたのかもしれない。
「良いなぁ・・・」
思わず口から零れた言葉に、ハッとして口を押さえる。利斧は少し驚いた顔を
すると、ニッコリと笑って言った。
「膝は貸せませんが、背中でしたら貸して差し上げますよ」
「えっ、遠慮しておきます!」
顔が熱くなるのを感じていると、糸繰が服を引っ張ってくる。どうした?と
聞くと、彼は何も言わず俺の腕を引っ張った。
いきなり引っ張られたので俺はバランスを崩し、糸繰の胸元へダイブする。すると
彼は俺を抱きしめ、背中をポンポンと優しく叩いた。
・・・困惑している間にも、糸繰は一定のリズムで背中を叩いてくる。心地良い
リズムに眠気が襲ってくるが、何とか耐える。
〈蒼汰、おやすみ。〉
一度俺を抱きしめるのを止めた糸繰がそう書いたメモを渡し、再び抱きしめて
くる。
また心地良いリズムで叩かれ出した背中。襲って来た眠気に、俺は今度こそ眠りに
落ちるのだった。
部分の一部は、糸繰が補足していた。
「呪いの神様の神事が行われるのは秋、新月の夜なんだそうです。神事の大まかな
流れは、御鈴様の神事と同じ。違う点を挙げるとすれば、信者の一部が忽然と姿を
消す、というところですね」
〈前に蒼汰には話したんですけど、オレが殺してました。昨年の神事はどうなってた
のか知らないですけど。〉
「昨年も、同じように信者が消えていたそうだ。誰が消していた・・・殺していた
のかは分からないが」
芽々の報告に糸繰が補足を入れ、史蛇が追加で発言をする。
「噂では、従者を捨ててから呪いの神様に少し余裕がなくなったらしく」
「余裕がなくなった・・・?」
芽々の報告に、思わず口を挟む。芽々は頷くと、御鈴を見て言った。
「おそらく、従者・・・糸繰くんに丸投げしていた事を自分でするようになったん
じゃないかと思われます。重役の一人が、呪いの神様が代わりが見つからないと
ぼやいていたのを耳にしたようで」
〈主なら、全部一人でやっていてもおかしくない。あの方は、要らないと思えば
簡単に切り捨てられるだけの力を持っているから。〉
メモを芽々に見せた糸繰は、ふと考える素振りを見せると溜息を吐く。
「どうした?」
そう聞くと、糸繰は何とも言えない顔で俺を見た後メモにペンを走らせた。
〈いや、主にまだ使うって言われたのを思い出して。もしかしたら今年の神事は
・・・とか、思っただけだ。〉
「呪いの神の神事に、貴方が呼ばれるかもしれないと?」
メモを覗き込んだ利斧がそう言うと、静かに話を聞いていた令がえっ?!と声を
上げる。
「にゃっ、にゃんとかならないのか・・・?」
「・・・妾では、あの神相手に何もできないじゃろう。糸繰が自分で抵抗するか、
蒼汰が抵抗するか・・・いずれにせよ、戦うことにはなるじゃろうな」
令の言葉に、御鈴が暗い面持ちで答える。糸繰はそれを見て申し訳なさそうな顔を
すると、御鈴にメモを差し出した。
〈もしかしたらってだけですから。大丈夫です、操られでもしない限りオレは協力
する気なんてありませんから。〉
「それ、フラグって言うんだぞ・・・」
思わず突っ込んだ俺に、糸繰はきょとんとした顔で首を傾げる。
「何もないと良いんですけど・・・。あっ、報告に戻りますね」
芽々がそう言って報告を再開する。信者の様子などは糸繰も知らなかったらしく、
時折驚いた顔を見せながら話を聞いていた。
―――報告が終わり、信者に出された昼食を食べる。満腹になり窓から差し込む
暖かな光に微睡んでいると、利斧のクスクスと笑う声がした。そちらを見ると
どうやら利斧の膝に座っていた御鈴が眠ってしまったようで、彼は柔らかな笑みを
浮かべて彼女を見ていた。
「すみません、貴方の御鈴を取ってしまいました」
「別に取られたなんて思ってませんよ・・・」
俺の視線に気付いた利斧が放った言葉にそう返すと、では暫くこのままでと彼は
嬉しそうに笑みを浮かべる。
〈親子って、あんな感じなのか?〉
糸繰がそう書いたメモを差し出してきたので、どうだろうなと俺は言う。
・・・俺も、あんな感じで父親の膝の上で眠ってみたかった。いや、もしかしたら
覚えていないだけでやってもらっていたのかもしれない。
「良いなぁ・・・」
思わず口から零れた言葉に、ハッとして口を押さえる。利斧は少し驚いた顔を
すると、ニッコリと笑って言った。
「膝は貸せませんが、背中でしたら貸して差し上げますよ」
「えっ、遠慮しておきます!」
顔が熱くなるのを感じていると、糸繰が服を引っ張ってくる。どうした?と
聞くと、彼は何も言わず俺の腕を引っ張った。
いきなり引っ張られたので俺はバランスを崩し、糸繰の胸元へダイブする。すると
彼は俺を抱きしめ、背中をポンポンと優しく叩いた。
・・・困惑している間にも、糸繰は一定のリズムで背中を叩いてくる。心地良い
リズムに眠気が襲ってくるが、何とか耐える。
〈蒼汰、おやすみ。〉
一度俺を抱きしめるのを止めた糸繰がそう書いたメモを渡し、再び抱きしめて
くる。
また心地良いリズムで叩かれ出した背中。襲って来た眠気に、俺は今度こそ眠りに
落ちるのだった。
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