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第二部
桜
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―――芽々と令と共に、だるまさんがころんだをして遊ぶ。三人でも意外と成立する
もので、絶対に走らないというルールで遊んでいた。
「だーるーまーさ・・・」
「タッチ!」
「うわ、はっや!あー・・・じゃあ次、令が鬼な」
「ボクだけハンデ大きくないか?にゃんで猫又に鬼やらせるんだよ」
「人間に化ければ良いんじゃないの?」
「それは面倒臭いから嫌だ」
そんな会話をしていると、ふと御鈴に呼ばれた気がした。
小屋のある方向を見た俺を令と芽々が不思議そうな顔で見る。
「どうした?蒼汰」
「いや・・・何か、御鈴に呼ばれた気がして」
令の言葉にそう答えると、芽々があっ!と声を上げる。
「そろそろ神事が始まる時間かも!」
行こ!と俺の手を取って走り出した芽々に、足速いな?!なんて思いながら付いて
行く。
小屋の前に着くと、御鈴と史蛇が俺達を見た。
「おお!蒼汰、芽々と一緒だったんじゃな!」
「え、知り合いなのか?」
笑顔で言った御鈴に聞くと、芽々が言った。
「私、数年前まで史蛇さんと一緒に御鈴様のお世話係してたんだよ!」
驚きつつ御鈴と史蛇を見ると、二人は頷く。
「そうじゃ蒼汰。神事の前にお主にこの服を見せたくての、呼んでみたのじゃが
・・・気付いてくれたか?」
御鈴の言葉に、ああやっぱり呼ばれていたのかと思う。何となくと頷くと、御鈴は
凄く嬉しそうな顔で言った。
「さっすが妾の選んだ従者じゃ!」
「えっ、蒼汰さん御鈴様の従者だったの?!!」
芽々が驚いた顔で俺を見る。そして申し訳なさそうな顔で御鈴を見ると、バッと
頭を下げて言った。
「御鈴様、ごめんなさい!蒼汰さん借りて、一緒に遊んでました!!」
謝ることか?と思いつつ御鈴を見ると、御鈴は苦笑いを浮かべて言った。
「構わぬ、仲良くしてくれたようで感謝するぞ。・・・それより、蒼汰」
俺を見た御鈴は、何処かうずうずとした様子で。俺が首を傾げると、史蛇が溜息を
吐いて言った。
「蒼汰、お前は御鈴様の言葉をちゃんと聞いていたのか。御鈴様は服を見せるために
お前を呼んだのだぞ」
あっと思って御鈴の服を見る。よく見るといつも見ている普段着の着物とは違い、
所々に金色の刺繍が施されて少し大人っぽいものになっていることに気付いた。
「可愛いっていうより、綺麗だな」
俺の言葉を聞いた御鈴は、少し恥ずかしそうに笑みを浮かべる。
「蒼汰、妾の神事見ていてくれ!」
御鈴はそう言ってニッコリと笑った。
―――時間となり、神事が始まる。邪魔しないようにと、御鈴から少し離れた場所で
令や芽々と共にその様子を眺める。
史蛇と数人の妖が笛を吹いたり太鼓を叩いたりして音楽を奏で、それに合わせて
仮面を被った妖が舞う。御鈴は信者が用意したらしき椅子に座り、その様子を真剣な
表情で見つめていた。
音楽と舞が終わると、御鈴は小さく拍手をして立ち上がる。軽く地面を蹴り宙に
浮いた御鈴は、胸の前で祈るように手を合わせながら言った。
『晩春の候、我が役割を果たさん。我が信者に祝福を、我らを脅かしくる者に
粛清を。舞い散れ桜花、痛みを以って脅威に死を与えたまえ』
御鈴が手を開き優しく息を吹き掛けた瞬間、ブワッと風が吹く。それと同時に、
沢山の桜の花びらが宙に舞った。
周りに桜なんて生えていなかった。一体この花びらは何処から・・・?そう思って
いると、花びらの一枚が肩の上にひらりと落ちる。
花びらをそっと摘まむ。その花びらは何だか不思議な感じがして、何処か温か
かった。
「綺麗だねー!」
芽々がピョンピョンと飛び跳ねる。
「この花びら、御鈴様のニオイがする」
地面に落ちた花びらを嗅いでいた令がそう言うと、そりゃあそうだよ!と芽々が
花びらを拾い上げた。
「この花びらは、御鈴様が神事で人間を駆除するために撒いているものだもん。
御鈴様が敵とみなした人間は、この花びらに少しでも触れると死んじゃうん
だよ!」
笑顔で言う芽々に、へえ・・・と令は舞う花びらを前足で叩きながら言う。
そういえば、前に聞いたな。神事で神は、自身の治めている領域内で自分が提示
した条件を満たせない者を駆除するって。御鈴の駆除条件は、御鈴の信者を殺した
人間だったか。
・・・このよく見るような桜の花びらで、一体何人が死んだのだろう。
「まあ・・・綺麗だから、いっか」
小さく呟いたその声は、風に乗って消えていった。
もので、絶対に走らないというルールで遊んでいた。
「だーるーまーさ・・・」
「タッチ!」
「うわ、はっや!あー・・・じゃあ次、令が鬼な」
「ボクだけハンデ大きくないか?にゃんで猫又に鬼やらせるんだよ」
「人間に化ければ良いんじゃないの?」
「それは面倒臭いから嫌だ」
そんな会話をしていると、ふと御鈴に呼ばれた気がした。
小屋のある方向を見た俺を令と芽々が不思議そうな顔で見る。
「どうした?蒼汰」
「いや・・・何か、御鈴に呼ばれた気がして」
令の言葉にそう答えると、芽々があっ!と声を上げる。
「そろそろ神事が始まる時間かも!」
行こ!と俺の手を取って走り出した芽々に、足速いな?!なんて思いながら付いて
行く。
小屋の前に着くと、御鈴と史蛇が俺達を見た。
「おお!蒼汰、芽々と一緒だったんじゃな!」
「え、知り合いなのか?」
笑顔で言った御鈴に聞くと、芽々が言った。
「私、数年前まで史蛇さんと一緒に御鈴様のお世話係してたんだよ!」
驚きつつ御鈴と史蛇を見ると、二人は頷く。
「そうじゃ蒼汰。神事の前にお主にこの服を見せたくての、呼んでみたのじゃが
・・・気付いてくれたか?」
御鈴の言葉に、ああやっぱり呼ばれていたのかと思う。何となくと頷くと、御鈴は
凄く嬉しそうな顔で言った。
「さっすが妾の選んだ従者じゃ!」
「えっ、蒼汰さん御鈴様の従者だったの?!!」
芽々が驚いた顔で俺を見る。そして申し訳なさそうな顔で御鈴を見ると、バッと
頭を下げて言った。
「御鈴様、ごめんなさい!蒼汰さん借りて、一緒に遊んでました!!」
謝ることか?と思いつつ御鈴を見ると、御鈴は苦笑いを浮かべて言った。
「構わぬ、仲良くしてくれたようで感謝するぞ。・・・それより、蒼汰」
俺を見た御鈴は、何処かうずうずとした様子で。俺が首を傾げると、史蛇が溜息を
吐いて言った。
「蒼汰、お前は御鈴様の言葉をちゃんと聞いていたのか。御鈴様は服を見せるために
お前を呼んだのだぞ」
あっと思って御鈴の服を見る。よく見るといつも見ている普段着の着物とは違い、
所々に金色の刺繍が施されて少し大人っぽいものになっていることに気付いた。
「可愛いっていうより、綺麗だな」
俺の言葉を聞いた御鈴は、少し恥ずかしそうに笑みを浮かべる。
「蒼汰、妾の神事見ていてくれ!」
御鈴はそう言ってニッコリと笑った。
―――時間となり、神事が始まる。邪魔しないようにと、御鈴から少し離れた場所で
令や芽々と共にその様子を眺める。
史蛇と数人の妖が笛を吹いたり太鼓を叩いたりして音楽を奏で、それに合わせて
仮面を被った妖が舞う。御鈴は信者が用意したらしき椅子に座り、その様子を真剣な
表情で見つめていた。
音楽と舞が終わると、御鈴は小さく拍手をして立ち上がる。軽く地面を蹴り宙に
浮いた御鈴は、胸の前で祈るように手を合わせながら言った。
『晩春の候、我が役割を果たさん。我が信者に祝福を、我らを脅かしくる者に
粛清を。舞い散れ桜花、痛みを以って脅威に死を与えたまえ』
御鈴が手を開き優しく息を吹き掛けた瞬間、ブワッと風が吹く。それと同時に、
沢山の桜の花びらが宙に舞った。
周りに桜なんて生えていなかった。一体この花びらは何処から・・・?そう思って
いると、花びらの一枚が肩の上にひらりと落ちる。
花びらをそっと摘まむ。その花びらは何だか不思議な感じがして、何処か温か
かった。
「綺麗だねー!」
芽々がピョンピョンと飛び跳ねる。
「この花びら、御鈴様のニオイがする」
地面に落ちた花びらを嗅いでいた令がそう言うと、そりゃあそうだよ!と芽々が
花びらを拾い上げた。
「この花びらは、御鈴様が神事で人間を駆除するために撒いているものだもん。
御鈴様が敵とみなした人間は、この花びらに少しでも触れると死んじゃうん
だよ!」
笑顔で言う芽々に、へえ・・・と令は舞う花びらを前足で叩きながら言う。
そういえば、前に聞いたな。神事で神は、自身の治めている領域内で自分が提示
した条件を満たせない者を駆除するって。御鈴の駆除条件は、御鈴の信者を殺した
人間だったか。
・・・このよく見るような桜の花びらで、一体何人が死んだのだろう。
「まあ・・・綺麗だから、いっか」
小さく呟いたその声は、風に乗って消えていった。
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