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第二部
一ツ目
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―――談笑しながら歩く御鈴と史蛇の後ろを、令と共に歩く。神事には多くの信者が
集まるようで、すれ違う妖達が俺を見てコソコソ話しているのが聞こえた。
「何だあの人間・・・」
「人間が何故御鈴様の傍に・・・」
「アイツ変なニオイがする」
「あの人間、食って良いのかな?」
そんな声や集まる視線に、居心地が悪くなる。
俺だけが異質。そんな空気に、何だか不安になってきた。
「御鈴・・・」
小さく呟く。どうせ聞こえないだろうなと思っていると、御鈴が振り向いた。
振り向いた御鈴に驚き、立ち止まる。すると御鈴は俺の手を掴んで言った。
「不安にならずとも大丈夫じゃ。蒼汰は妾の選んだ従者、胸を張って良い」
ニッコリと笑う御鈴が何処か頼もしい。
守る側の俺が守られている気がするな・・・なんて思いながら、俺はコクリと
頷いた。
・・・少し歩くと、小さな小屋の前で史蛇が立ち止まる。
「・・・蒼汰、お前はここまでだ。御鈴様は準備がある、神事が始まるまで自由に
していると良い」
俺を見ながら史蛇は言う。えっと・・・と御鈴を見ると、御鈴は少し申し訳なさ
そうな顔をして言った。
「すまぬな。妾が準備している間は、男を近付けることはできぬのじゃ」
「え、何で・・・」
俺の言葉に御鈴は頬を赤らめると、小さな声で言った。
「・・・蒼汰は、女児の裸体を見たいのか?」
「は?!!」
思わず大きな声を上げる。史蛇がジト目で俺を見たので、ブンブンと首を横に
振った。
「御鈴様、そう意地悪な言い方をするものではありません。普通に着替えるだけで
しょう」
史蛇がそう言うと、御鈴はえへへと笑う。何だそういうことかと思っていると、
令が言った。
「史蛇もここまで、って事になるのか?」
史蛇は首を傾げると、令を覗き込む。鋭い目で令を見る史蛇に令がビクリと体を
震わせると、史蛇は溜息を吐いて言った。
「何を勘違いしているのか知らないが、我はメスだ。御鈴様の準備の補助も行って
いる」
・・・中性的な声だったから気付かなかったが、史蛇の性別は女だったらしい。
そ、そうかと後退りした令は、俺の肩に飛び乗った。
―――妖達の視線から逃れるように、静かな場所を求めて歩く。令が肩に乗っている
おかげか、襲ってこようとする妖はいなかった。
小屋から大分離れ、人目に付かないような木陰に腰を下ろす。普段から目立たない
ような生活を送っていたので、既に少し疲れていた。
「大丈夫か?」
「まあ、うん・・・」
令の言葉にそう返しつつも、深い溜息を吐く。
膝の上に乗った令を撫でながらボーっとしていると、後ろから声を掛けられた。
「人間さん、ここで何してるの?」
驚いて振り返る。そこには、御鈴よりも少し年上に見える一ツ目の少女が立って
いた。
少女は俺と目が合うと、ニッコリと笑う。何かされるんじゃないだろうか。そんな
ことを考えながら少女を見ていると、少女は俺の隣に座って言った。
「人間さん、さっき御鈴様と歩いてた人でしょ?そこの猫又くんも一緒に」
「そうだけど・・・。えっと、何か用か?」
そう聞くと、ううんと少女は首を横に振る。
「何してるのかなーって気になっただけ!私ね、芽々っていうの!人間さんと
猫又くんの名前は?」
これは答えて良いんだろうか。そう思っていると、令が言った。
「ボクは令、こいつは蒼汰だ。芽々はここでにゃにしてるんだ?」
「えっとね、神事が始まるまで暇だからウロウロしてたの!」
少女・・・芽々はそう言うとニッコリと笑う。
「ねえねえ、蒼汰さんと令くんは暇?暇なら一緒に遊ぼ!」
芽々にそう言われ、俺と令は顔を見合わせる。
「まあ、神事が始まるまでなら」
俺がそう言うと、令も同意するように頷く。
芽々は嬉しそうに顔をパッと輝かせると、立ち上がって俺に手を差し伸べてきた。
集まるようで、すれ違う妖達が俺を見てコソコソ話しているのが聞こえた。
「何だあの人間・・・」
「人間が何故御鈴様の傍に・・・」
「アイツ変なニオイがする」
「あの人間、食って良いのかな?」
そんな声や集まる視線に、居心地が悪くなる。
俺だけが異質。そんな空気に、何だか不安になってきた。
「御鈴・・・」
小さく呟く。どうせ聞こえないだろうなと思っていると、御鈴が振り向いた。
振り向いた御鈴に驚き、立ち止まる。すると御鈴は俺の手を掴んで言った。
「不安にならずとも大丈夫じゃ。蒼汰は妾の選んだ従者、胸を張って良い」
ニッコリと笑う御鈴が何処か頼もしい。
守る側の俺が守られている気がするな・・・なんて思いながら、俺はコクリと
頷いた。
・・・少し歩くと、小さな小屋の前で史蛇が立ち止まる。
「・・・蒼汰、お前はここまでだ。御鈴様は準備がある、神事が始まるまで自由に
していると良い」
俺を見ながら史蛇は言う。えっと・・・と御鈴を見ると、御鈴は少し申し訳なさ
そうな顔をして言った。
「すまぬな。妾が準備している間は、男を近付けることはできぬのじゃ」
「え、何で・・・」
俺の言葉に御鈴は頬を赤らめると、小さな声で言った。
「・・・蒼汰は、女児の裸体を見たいのか?」
「は?!!」
思わず大きな声を上げる。史蛇がジト目で俺を見たので、ブンブンと首を横に
振った。
「御鈴様、そう意地悪な言い方をするものではありません。普通に着替えるだけで
しょう」
史蛇がそう言うと、御鈴はえへへと笑う。何だそういうことかと思っていると、
令が言った。
「史蛇もここまで、って事になるのか?」
史蛇は首を傾げると、令を覗き込む。鋭い目で令を見る史蛇に令がビクリと体を
震わせると、史蛇は溜息を吐いて言った。
「何を勘違いしているのか知らないが、我はメスだ。御鈴様の準備の補助も行って
いる」
・・・中性的な声だったから気付かなかったが、史蛇の性別は女だったらしい。
そ、そうかと後退りした令は、俺の肩に飛び乗った。
―――妖達の視線から逃れるように、静かな場所を求めて歩く。令が肩に乗っている
おかげか、襲ってこようとする妖はいなかった。
小屋から大分離れ、人目に付かないような木陰に腰を下ろす。普段から目立たない
ような生活を送っていたので、既に少し疲れていた。
「大丈夫か?」
「まあ、うん・・・」
令の言葉にそう返しつつも、深い溜息を吐く。
膝の上に乗った令を撫でながらボーっとしていると、後ろから声を掛けられた。
「人間さん、ここで何してるの?」
驚いて振り返る。そこには、御鈴よりも少し年上に見える一ツ目の少女が立って
いた。
少女は俺と目が合うと、ニッコリと笑う。何かされるんじゃないだろうか。そんな
ことを考えながら少女を見ていると、少女は俺の隣に座って言った。
「人間さん、さっき御鈴様と歩いてた人でしょ?そこの猫又くんも一緒に」
「そうだけど・・・。えっと、何か用か?」
そう聞くと、ううんと少女は首を横に振る。
「何してるのかなーって気になっただけ!私ね、芽々っていうの!人間さんと
猫又くんの名前は?」
これは答えて良いんだろうか。そう思っていると、令が言った。
「ボクは令、こいつは蒼汰だ。芽々はここでにゃにしてるんだ?」
「えっとね、神事が始まるまで暇だからウロウロしてたの!」
少女・・・芽々はそう言うとニッコリと笑う。
「ねえねえ、蒼汰さんと令くんは暇?暇なら一緒に遊ぼ!」
芽々にそう言われ、俺と令は顔を見合わせる。
「まあ、神事が始まるまでなら」
俺がそう言うと、令も同意するように頷く。
芽々は嬉しそうに顔をパッと輝かせると、立ち上がって俺に手を差し伸べてきた。
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