神と従者

彩茸

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第二部

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―――やはり次の日になっても熱は下がっておらず、あまり味のしない朝食を
モソモソと食べる。
学校に休みの連絡を入れ、どうしたもんかなと思いながらベッドに潜り込む。
すると御鈴と令が部屋に入ってきた。

「蒼汰、妾は少し出掛けてくる。令に留守を任せるから、何かあったら令に言って
 くれ」

「ボクが面倒見てやるから、蒼汰は大人しく寝てろよ」

 御鈴と令にそう言われ、分かったと頷く。
 令を残し御鈴が部屋を出て行くと、令がベッドに上がってきて言った。

「御鈴様が、もしかしたら解熱剤が効いていないのかもってさ。蒼汰、辛いとか
 ないか?」

「体調はいつも通りな気が・・・ああいや、飯の味があんまりしないんだよな。
 それがちょっと辛いかも」

「そうか。・・・まあ、寝てれば多少マシになるだろ」

 俺の言葉に令はそう言うと、毛布の中に頭を突っ込んで俺の腹の辺りまでやって
 くる。

「令・・・?」

「特別に、ボクが湯たんぽ代わりになってやる。早くよくなれよ」

 令の体温で腹の辺りが温かい。ありがとうと俺は言って、静かに目を瞑った。



―――揺さぶられて、目を覚ます。
最初に視界に入ったのは御鈴、次に視界に入ったのは・・・。

「晴樹さん?!」

 驚いて、ガバッと起き上がる。晴樹さんはそれに驚いたようで、うわっと声を
 上げた。
 どうしてうちに、晴樹さんが・・・。そう思っていると、御鈴が言った。

「宇迦と御魂に聞きに行ったら、静也が晴樹なら何とかできるかもしれないと言って
 おっての。こうして来てもらったのじゃ」

「御鈴ちゃん、期待してもらってる所悪いんだけど、僕の知識って趣味程度
 だからね・・・?」

 困ったような顔でそう言った晴樹さんは、ちょっとごめんねと俺の額に手を
 当てる。

「うーん、しっかり熱出てるね・・・。寒気とかは?」

「全くないです」

 晴樹さんの問いにそう答えると、晴樹さんは手を離しそっか・・・と呟く。
 何やら考えている様子の晴樹さんに首を傾げると、晴樹さんは御鈴を見た。

「・・・ねえ御鈴ちゃん、蒼汰くんの体力って人間レベル?」

 晴樹さんの問いに御鈴は少し悩む様子を見せると、ベッドに上がり俺の胸に手を
 当てる。

「いや・・・体力は人間よりあるじゃろうな。元の体力に加え、変質分で増えておる
 じゃろうし・・・」

 御鈴の言葉に晴樹さんはなるほどと頷く。
 そして俺を見ると、少し申し訳なさそうな顔をしながら言った。

「もしかしたらちょっと辛い思いさせちゃうかもしれないけど・・・それでも良い
 なら、何とかできると思う。蒼汰くん、どうする?」

「熱が下がるなら、まあ・・・」

 何をされるんだ。そう思いながらも頷くと、晴樹さんはそれじゃあと立ち上がる。

「用意してくるから、ちょっと待ってて。御鈴ちゃんも手伝ってくれる?」

「お安い御用じゃ!」

 晴樹さんの言葉に御鈴はそう言うと二人で部屋を出て行く。
 部屋に残された俺は、横になったまま目を開けてこちらを見ている令を抱き上げ、
 あったけー・・・と顔を摺り寄せていた。



―――少しして、淡い赤色の液体が入っているコップを持った御鈴が戻ってくる。
晴樹さんが部屋に入ってくると、御鈴は晴樹さんと頷き合って俺を見た。

「ちゃんと全部飲むんじゃぞ!」

 そう言って御鈴に渡されたコップに恐る恐る口を付ける。

「にっっが!!」

 一口飲んだだけで口いっぱいに広がった苦みに思わず声を上げると、晴樹さんが
 にこやかな笑顔で言った。

「良薬は口に苦し、だよ」

 わざとなんじゃないかと思うほどに苦いその液体を、目に涙を浮かべながら
 飲み干す。
 おおーと小さく拍手する御鈴と晴樹さんにやっぱり罰ゲームなんじゃ・・・
 なんて思っていると、突然凄まじい眠気に襲われた。

「睡眠薬・・・?」

 フワフワとする頭でそう呟くと、コップを受け取った晴樹さんは首を横に振って
 言った。

「ううん、解熱の薬。まあ、人間用じゃないけど」

 体に力が入らず、ベッドに倒れ込む。晴樹さんは俺に毛布を掛けながら苦笑いを
 浮かべていた。

「何用・・・なんですか・・・」

 薄れゆく意識の中そう聞くと、意識が途切れる直前に晴樹さんは言った。

「妖用だよ」
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