神と従者

彩茸

文字の大きさ
上 下
23 / 156
第一部

見学

しおりを挟む
―――休憩しつつ静也さんと圭梧の模擬戦を見ていたのだが・・・何だこれ、動きが
見えねえ。
さっきの模擬戦でかなり手加減されていたのだと実感させられるその戦いに、俺だけ
でなく御鈴も呆然としていた。

「圭梧くん、癖だろうけど夜月抜こうとしない!」

「何で抜いちゃ駄目なんだよ!」

「危ないからだよ!晴樹に怒られるの俺なんだからな?!」

 そんな会話をしながらも攻撃の手を一切緩めない彼らに、格の違いというか・・・
 次元の違いを感じた。
 段々目が慣れてきたのか、少しずつ圭梧と静也さんの太刀筋が見えるようになって
 くる。互いに急所を狙い合いつつも、たまにフェイントを入れる。武器だけでなく
 体全てを使って相手にダメージを与えようと動いている。
 ・・・暫く見ていて、気付いた。静也さんは瞬時に動いて攻撃を躱している・・・
 まるで勘を身体能力で補いながら戦っているような感じなのだが、一方の圭梧は
 静也さんの攻撃が繰り出される少し前に動いて攻撃を躱す・・・まるで状況を判断
 してあらかじめ動いているかのような戦い方をしていた。
 静也さんみたいな戦い方はできないが、圭梧みたいな戦い方ならできるんじゃない
 だろうか・・・なんて考えが浮かんでくる。

「あっ」

 御鈴が声を上げる。それと同時に、戦いは終わりを迎えた。
 静也さんの持っている木刀が、圭梧の喉元に突き付けられる。圭梧の持っていた
 刀は地面に叩き落とされており、圭梧は両手を上げて言った。

「降参・・・」

 静也さんは木刀を下げると、圭梧の刀を拾い上げながら笑みを浮かべる。

「流石晴樹の息子だな、よく見えてる。前戦ったときよりも動きが良くなったんじゃ
 ないか?」

「え、マジで?やったあ!」

 嬉しそうな顔で刀を受け取った圭梧は、お待たせ!と俺を見る。
 俺が立ち上がると、御鈴がボソッと呟いた。

「あ奴、まだを出しておらんかったな。いや、それは圭梧の方もか・・・」

 その言葉に、動きを止める。うっそだろ・・・と思いながら、静也さんと圭梧を
 見る。

「あ、あの、もしかしてお互い本気で戦ってなかったりします・・・?」

 そう聞くと、静也さんと圭梧はキョトンとした顔をして同時に言った。

「そりゃあ、本気出したらどっちも怪我するし」

 互いに手加減してあれかよ。
 うわあ・・・と声を漏らすと、圭梧が言った。

「本気ってあれだろ?互いに殺す気でやるって事だろ?」

「え、あ、えっと・・・うん、そうだよな。ごめん、気にしないでくれ・・・」

 ・・・やっぱり、祓い屋は倫理観がぶっ飛んでいるのかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール
ファンタジー
 古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。  彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。  経営者は若い美人姉妹。  妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。  そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。  最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

職業選択の自由~ネクロマンサーを選択した男~

新米少尉
ファンタジー
「私は私の評価を他人に委ねるつもりはありません」 多くの者達が英雄を目指す中、彼はそんなことは望んでいなかった。 ただ一つ、自ら選択した道を黙々と歩むだけを目指した。 その道が他者からは忌み嫌われるものであろうとも彼には誇りと信念があった。 彼が自ら選んだのはネクロマンサーとしての生き方。 これは職業「死霊術師」を自ら選んだ男の物語。 ~他のサイトで投稿していた小説の転載です。完結済の作品ですが、若干の修正をしながらきりのよい部分で一括投稿していきますので試しに覗いていただけると嬉しく思います~

赤い流れ星3

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
美幸とシュウ、そして、野々村と和彦はどうなる!? 流れ星シリーズ、第3弾。完結編です。 時空の門をくぐったひかりとシュウ… お互いの記憶をなくした二人は…? 誤解ばかりですれ違う和彦と野々村は、一体どうなる? ※表紙画はくまく様に描いていただきました。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

月は夜をかき抱く ―Alkaid―

深山瀬怜
ライト文芸
地球に七つの隕石が降り注いでから半世紀。隕石の影響で生まれた特殊能力の持ち主たち《ブルーム》と、特殊能力を持たない無能力者《ノーマ》たちは衝突を繰り返しながらも日常生活を送っていた。喫茶〈アルカイド〉は表向きは喫茶店だが、能力者絡みの事件を解決する調停者《トラブルシューター》の仕事もしていた。 アルカイドに新人バイトとしてやってきた瀧口星音は、そこでさまざまな事情を抱えた人たちに出会う。

処理中です...