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第一部
稲荷寿司
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―――静也さんも去り、俺は狼昂と話をする。どうやら狼昂もあまり従者に会う
機会がないらしく、俺と会えて嬉しいらしい。
狼昂と打ち解け、他愛もない話をする。そして、ふと気になったことを尋ねた。
「狼昂は、どうして従者になったんだ?」
狼昂は懐かしそうな目をすると、狗神を見ながら言った。
「きっかけは、わたくしが主様に怪我を治して頂いたことです。主様は治癒と殺しの
力を持つ神様ですので、傷を治すことに長けていらっしゃいました。しかし主様は
まだ幼かったので、すぐに治すということはできず・・・それこそ、夜通しで看病
してくださいました。必死に傷を治してくださった優しい主様にお仕えし、主様の
お役に立ちたい。そう思いまして」
あなたは?と狼昂は俺を見る。
「俺は・・・たまたま山を歩いていたら、御鈴に声を掛けられたんだ。そのまま
成り行きで契約を交わして・・・って感じで」
俺の言葉に狼昂は驚いた顔をする。理由も何もない奴が従者なんて変だよな・・・
なんて思っていると、狼昂は笑みを浮かべて言った。
「わたくしはてっきり、蒼汰様が御鈴様に一目惚れしたのかと」
「はあ?!」
思わず大きな声が出る。神達がこちらを一瞬見た気がしたが、今はそれどころじゃ
なかった。
俺が御鈴に惚れる?あの見た目小学生の神に??
「いや、それはないって!」
そう言うと、狼昂はクスクスと笑いながら言った。
「失礼致しました。あなたと御鈴様のニオイが、ただの従者にしてはとても似て
おりましたので。主と似たニオイの方は他にもお会いしたことがありますが、
あの方々は千年以上の付き合いだそうですし・・・。見たところ蒼汰様は人間
ですから、そんな短期間で強い繋がりを持てるものなのかと思いまして」
「・・・いや、もしかしたらなんだけど。御鈴が俺に神の力をくれた時、与え過ぎた
説があってだな・・・。実際、御鈴曰く体が変質し始めているらしいし」
ああ、でも・・・と俺は、遊んでいる御鈴を見ながら言葉を続ける。
「少し前に夢を見てから、何故かずっと御鈴の傍にいたいって思うようになってさ。
離れるのが怖くて、不安で。御鈴の傍にいると、何処か安心するというか・・・」
変だよなと狼昂を見ると、狼昂は首を横に振って言った。
「いいえ、その感情は従者としては当たり前のものでございます。お恥ずかしい話、
わたくしも主様に放っておかれたときは拗ねてしまいますし・・・。主様に頭を
撫でて頂くと、とても嬉しい気持ちになるのです。もっとお傍にいたいと、そう
思うのです」
主様の前では恥ずかしくて面と向かって言えませんが。そう言った狼昂は、狗神を
見て尻尾を振る。
狗神は俺達の会話が聞こえていたのか、ちらりとこちらを見て優しい笑みを浮か
べた。
―――彩音さんと静也さんが持ってきてくれた稲荷寿司を皆で食べる。俺の膝の上で
美味しそうな顔をしながら稲荷寿司を頬張る御鈴を見て、宇迦が言った。
「美味しそうに食べるのう・・・」
「美味しいからの!」
御鈴がニコニコしながら言う。
「そうじゃろう、美味いじゃろう!」
「何でお主が自慢げなんじゃ・・・」
狗神の言葉に御魂が呆れたように言う。
確かにこの稲荷寿司かなり美味いなと思っていると、令が言った。
「蒼汰、キャットフードの代わりにこれが良い」
「いや、こんな美味いの俺には作れねえよ・・・」
俺がそう言うと、彩音さんがクスクスと笑う。
そして、静也さんを指さして言った。
「同じこと言ってた人が、今日この稲荷寿司を作ったのよ?」
驚いて静也さんを見る。すると、静也さんは恥ずかしそうに笑って言った。
「食べたいって言ったら、作れるようになればいつでも食べられるでしょって言われ
ちゃってさ」
「蒼汰、お主も料理できるじゃろう!作れるぞ、むしろ作ってくれ!!」
御鈴がキラキラした目で俺を見る。
「あー・・・分かったよ、やってみるよ」
そう言って御鈴の頭を撫でると、御鈴は嬉しそうに笑う。
後でレシピ教えてあげるねと、彩音さんが笑顔で言った。
機会がないらしく、俺と会えて嬉しいらしい。
狼昂と打ち解け、他愛もない話をする。そして、ふと気になったことを尋ねた。
「狼昂は、どうして従者になったんだ?」
狼昂は懐かしそうな目をすると、狗神を見ながら言った。
「きっかけは、わたくしが主様に怪我を治して頂いたことです。主様は治癒と殺しの
力を持つ神様ですので、傷を治すことに長けていらっしゃいました。しかし主様は
まだ幼かったので、すぐに治すということはできず・・・それこそ、夜通しで看病
してくださいました。必死に傷を治してくださった優しい主様にお仕えし、主様の
お役に立ちたい。そう思いまして」
あなたは?と狼昂は俺を見る。
「俺は・・・たまたま山を歩いていたら、御鈴に声を掛けられたんだ。そのまま
成り行きで契約を交わして・・・って感じで」
俺の言葉に狼昂は驚いた顔をする。理由も何もない奴が従者なんて変だよな・・・
なんて思っていると、狼昂は笑みを浮かべて言った。
「わたくしはてっきり、蒼汰様が御鈴様に一目惚れしたのかと」
「はあ?!」
思わず大きな声が出る。神達がこちらを一瞬見た気がしたが、今はそれどころじゃ
なかった。
俺が御鈴に惚れる?あの見た目小学生の神に??
「いや、それはないって!」
そう言うと、狼昂はクスクスと笑いながら言った。
「失礼致しました。あなたと御鈴様のニオイが、ただの従者にしてはとても似て
おりましたので。主と似たニオイの方は他にもお会いしたことがありますが、
あの方々は千年以上の付き合いだそうですし・・・。見たところ蒼汰様は人間
ですから、そんな短期間で強い繋がりを持てるものなのかと思いまして」
「・・・いや、もしかしたらなんだけど。御鈴が俺に神の力をくれた時、与え過ぎた
説があってだな・・・。実際、御鈴曰く体が変質し始めているらしいし」
ああ、でも・・・と俺は、遊んでいる御鈴を見ながら言葉を続ける。
「少し前に夢を見てから、何故かずっと御鈴の傍にいたいって思うようになってさ。
離れるのが怖くて、不安で。御鈴の傍にいると、何処か安心するというか・・・」
変だよなと狼昂を見ると、狼昂は首を横に振って言った。
「いいえ、その感情は従者としては当たり前のものでございます。お恥ずかしい話、
わたくしも主様に放っておかれたときは拗ねてしまいますし・・・。主様に頭を
撫でて頂くと、とても嬉しい気持ちになるのです。もっとお傍にいたいと、そう
思うのです」
主様の前では恥ずかしくて面と向かって言えませんが。そう言った狼昂は、狗神を
見て尻尾を振る。
狗神は俺達の会話が聞こえていたのか、ちらりとこちらを見て優しい笑みを浮か
べた。
―――彩音さんと静也さんが持ってきてくれた稲荷寿司を皆で食べる。俺の膝の上で
美味しそうな顔をしながら稲荷寿司を頬張る御鈴を見て、宇迦が言った。
「美味しそうに食べるのう・・・」
「美味しいからの!」
御鈴がニコニコしながら言う。
「そうじゃろう、美味いじゃろう!」
「何でお主が自慢げなんじゃ・・・」
狗神の言葉に御魂が呆れたように言う。
確かにこの稲荷寿司かなり美味いなと思っていると、令が言った。
「蒼汰、キャットフードの代わりにこれが良い」
「いや、こんな美味いの俺には作れねえよ・・・」
俺がそう言うと、彩音さんがクスクスと笑う。
そして、静也さんを指さして言った。
「同じこと言ってた人が、今日この稲荷寿司を作ったのよ?」
驚いて静也さんを見る。すると、静也さんは恥ずかしそうに笑って言った。
「食べたいって言ったら、作れるようになればいつでも食べられるでしょって言われ
ちゃってさ」
「蒼汰、お主も料理できるじゃろう!作れるぞ、むしろ作ってくれ!!」
御鈴がキラキラした目で俺を見る。
「あー・・・分かったよ、やってみるよ」
そう言って御鈴の頭を撫でると、御鈴は嬉しそうに笑う。
後でレシピ教えてあげるねと、彩音さんが笑顔で言った。
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