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第一部
従者
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―――ワイワイと遊ぶ御鈴、宇迦、御魂、そして巻き込まれた令を賽銭箱の前の
階段に腰掛けて眺める。
彩音さんは社務所へと消えていき、俺の隣には静也さんが座っていた。
「・・・そういえば、由紀は居ないんですか?」
俺がそう聞くと、静也さんはちらりと俺を見る。
「バタバタしてるから、冬休みは帰省しないってさ。由紀に会いたかったのか?」
「いや、居ないのかなーと思っただけで」
俺の言葉に、静也さんはふーん?と何か言いたげな顔で俺を見る。
別に何もないですって!と言うと、ごめんってと苦笑いで返された。
「・・・従者って、どんな感じ?」
ふと、静也さんが聞く。どんなって・・・と悩んでいると、静也さんは言った。
「興味本位で申し訳ないんだけど。俺の知ってる従者って、主を敬って常に敬語ー
みたいな奴らなんだよ。でも、蒼汰くんは御鈴ちゃんにタメ口だろ?だからどんな
感じなんだろうって気になってさ」
「そうですね・・・俺にとっての御鈴は、主というより家族に近い感じなんです。
御鈴も俺に命令したがらなくて・・・。だからですかね、敬うって気持ちが
そんなに沸かないんですよ。もちろん俺は御鈴のことを大切にしたいと思って
いるし、守りたいって思っているんですけど・・・」
俺の回答に静也さんは、なるほどと興味深げに頷く。
「そういえば御鈴は神が従者といるところを見て従者が欲しくなったらしいんです
けど、どの神も従者がいるものなんですか?」
俺の問いに、静也さんは首を横に振る。
「まさか。結婚してから神様に会う機会は増えたけど、今のところ俺が知ってる
従者は蒼汰くん入れて三人だし、皆が皆って訳じゃない。自分の神社がある
神様は、そこの面子で事足りてるだろうしな」
宇迦と御魂にも、従者はいないし。そう言った静也さんは、ああでも・・・と
付け加える。
「神社のない神様ならいるかもな、従者。まあその辺は神様の方が詳しいだろ」
静也さんはそう言うと立ち上がり、遊んでいる神達を見る。そして俺をちらりと
見ると、聞いてみたらどうだ?と言った。
「え、いや、ちょっと・・・」
流石にそこまでは・・・と思っていると、ふと宇迦と御魂が空を見上げた。
「宇迦?御魂?」
御鈴が首を傾げる。すると、宇迦が言った。
「今日も来たのか、あ奴」
「暇なのかの?まあ気持ちは分かるが」
御魂がそう言った瞬間、フワリと風が吹いた。気配を感じそちらを見ると、銀髪に
犬耳と尻尾を生やした獣っぽい黄色の目の若い男性が境内の入口に立っていた。
「あ!大きな犬の神じゃ!!」
御鈴が嬉しそうな顔で言う。すると、静也さんが言った。
「あ、丁度良いのが来た」
男性は静也さんの言葉に首を傾げる。
静也さんは男性を手招きすると、俺を見て言った。
「この神様が、さっき言った俺が知ってる従者の主。狗神だ」
「えっと、き・・・・・・蒼汰です、初めまして」
ふと令の言葉を思い出し、下の名前だけを伝える。すると男性・・・狗神は、
人の好さそうな笑顔を浮かべて言った。
「初めまして、狗神じゃ」
静也さんが狗神に俺のことを紹介すると、御鈴が駆け寄ってきて言った。
「蒼汰、折角じゃから従者同士で話してみてはどうじゃ?」
「従者って・・・え、何処に?」
見た感じ狗神は一人なのだが。そう思っていると、狗神は懐から親指ほどの
大きさの小さな石を取り出した。
「狼昂、出てこい」
狗神がそう言うと、石から煙が立ち上る。
煙はだんだんと形を成していき、やがて御鈴と大差ない大きさの狛犬が現れた。
狛犬・・・狼昂は、俺を見るなり近付いて匂いを嗅いでくる。
「主様!」
ブンブンと尻尾を振りながら嬉しそうな顔をして狗神を見た狼昂に、狗神は笑みを
浮かべて言った。
「そ奴も従者じゃ。仲良くしてやれ」
「蒼汰、仲良くするんじゃぞ」
御鈴がそう言って俺を見る。頷くと、御鈴は狗神を連れて宇迦達の所へと戻って
いった。
階段に腰掛けて眺める。
彩音さんは社務所へと消えていき、俺の隣には静也さんが座っていた。
「・・・そういえば、由紀は居ないんですか?」
俺がそう聞くと、静也さんはちらりと俺を見る。
「バタバタしてるから、冬休みは帰省しないってさ。由紀に会いたかったのか?」
「いや、居ないのかなーと思っただけで」
俺の言葉に、静也さんはふーん?と何か言いたげな顔で俺を見る。
別に何もないですって!と言うと、ごめんってと苦笑いで返された。
「・・・従者って、どんな感じ?」
ふと、静也さんが聞く。どんなって・・・と悩んでいると、静也さんは言った。
「興味本位で申し訳ないんだけど。俺の知ってる従者って、主を敬って常に敬語ー
みたいな奴らなんだよ。でも、蒼汰くんは御鈴ちゃんにタメ口だろ?だからどんな
感じなんだろうって気になってさ」
「そうですね・・・俺にとっての御鈴は、主というより家族に近い感じなんです。
御鈴も俺に命令したがらなくて・・・。だからですかね、敬うって気持ちが
そんなに沸かないんですよ。もちろん俺は御鈴のことを大切にしたいと思って
いるし、守りたいって思っているんですけど・・・」
俺の回答に静也さんは、なるほどと興味深げに頷く。
「そういえば御鈴は神が従者といるところを見て従者が欲しくなったらしいんです
けど、どの神も従者がいるものなんですか?」
俺の問いに、静也さんは首を横に振る。
「まさか。結婚してから神様に会う機会は増えたけど、今のところ俺が知ってる
従者は蒼汰くん入れて三人だし、皆が皆って訳じゃない。自分の神社がある
神様は、そこの面子で事足りてるだろうしな」
宇迦と御魂にも、従者はいないし。そう言った静也さんは、ああでも・・・と
付け加える。
「神社のない神様ならいるかもな、従者。まあその辺は神様の方が詳しいだろ」
静也さんはそう言うと立ち上がり、遊んでいる神達を見る。そして俺をちらりと
見ると、聞いてみたらどうだ?と言った。
「え、いや、ちょっと・・・」
流石にそこまでは・・・と思っていると、ふと宇迦と御魂が空を見上げた。
「宇迦?御魂?」
御鈴が首を傾げる。すると、宇迦が言った。
「今日も来たのか、あ奴」
「暇なのかの?まあ気持ちは分かるが」
御魂がそう言った瞬間、フワリと風が吹いた。気配を感じそちらを見ると、銀髪に
犬耳と尻尾を生やした獣っぽい黄色の目の若い男性が境内の入口に立っていた。
「あ!大きな犬の神じゃ!!」
御鈴が嬉しそうな顔で言う。すると、静也さんが言った。
「あ、丁度良いのが来た」
男性は静也さんの言葉に首を傾げる。
静也さんは男性を手招きすると、俺を見て言った。
「この神様が、さっき言った俺が知ってる従者の主。狗神だ」
「えっと、き・・・・・・蒼汰です、初めまして」
ふと令の言葉を思い出し、下の名前だけを伝える。すると男性・・・狗神は、
人の好さそうな笑顔を浮かべて言った。
「初めまして、狗神じゃ」
静也さんが狗神に俺のことを紹介すると、御鈴が駆け寄ってきて言った。
「蒼汰、折角じゃから従者同士で話してみてはどうじゃ?」
「従者って・・・え、何処に?」
見た感じ狗神は一人なのだが。そう思っていると、狗神は懐から親指ほどの
大きさの小さな石を取り出した。
「狼昂、出てこい」
狗神がそう言うと、石から煙が立ち上る。
煙はだんだんと形を成していき、やがて御鈴と大差ない大きさの狛犬が現れた。
狛犬・・・狼昂は、俺を見るなり近付いて匂いを嗅いでくる。
「主様!」
ブンブンと尻尾を振りながら嬉しそうな顔をして狗神を見た狼昂に、狗神は笑みを
浮かべて言った。
「そ奴も従者じゃ。仲良くしてやれ」
「蒼汰、仲良くするんじゃぞ」
御鈴がそう言って俺を見る。頷くと、御鈴は狗神を連れて宇迦達の所へと戻って
いった。
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