神と従者

彩茸

文字の大きさ
上 下
16 / 138
第一部

神社

しおりを挟む
―――片付けをして、出掛ける準備をして・・・御鈴と令に急かされながら、家を
出る。
バスを乗り継いで、最寄りのバス停へ。降りた先にあった想像以上にきつい階段を
上りながら、体力を付けておいて良かったと思う。
鳥居をくぐり、境内へ。息の上がっていない御鈴と令を見て凄いなと思っていると、
女性の声がした。

「あら?あなた・・・」

 声のした方に顔を向けると、彩音さんが俺を見ていた。
 こんにちはと挨拶をする彩音さんに、こんにちはと返す。すると、御鈴が言った。

「稲荷の狐はおるかの?」

 遊びに来たんじゃ!と御鈴が言うと、突如賽銭箱の前に二匹の狐が現れた。
 狐は煙に包まれ、巫女装束を着た少年と少女の姿へと変わる。
 あ、宇迦と御魂だったのか。そう思っていると、宇迦が言った。

「おお御鈴!よく来たの」

「そこの人間もよく来たの」

 御魂がそう言って俺を見る。そして御鈴の足元に居る令に視線を移すと、誰じゃ?
 と首を傾げた。

「こ奴は令じゃ、妾の信者での」

「・・・どうも」

 御鈴の言葉に令は小さく頭を下げると、俺の肩に飛び乗る。

「蒼汰くん、だっけ。御鈴さんの付き添い?」

 彩音さんが聞いてきたので、そんな感じですと頷く。
 その時、令がスンッと鼻を動かした。

「嫌な予感が的中した・・・」

 令がそう呟くと同時に、拝殿の裏から人が出てくる。

「あれ、いらっしゃい」

 そう言いながらこちらに向かってきた静也さんに向かって、令が威嚇する。

「やっぱりお前か山霧!!」

「やっぱりって何だやっぱりって。あと俺はもう山霧じゃねえんだよ」

 一瞬にして令の首根っこを掴んで言った静也さんに、彩音さんは苦笑いを
 浮かべる。

「お前変なニオイがするからすぐ分かるんだよ!にゃんなんだよそのニオイ!
 離せっ、このっ」

 静也さんに掴まれたままジタバタとする令を見ていると、静也さんは令を地面に
 降ろしながら言った。

「俺が臭いみたいな言い方しやがって・・・。そういう体質なんだ、仕方ねえだろ」

「体質・・・?」

 俺が首を傾げると、静也さんは頷く。

「俺、人間を食ったことのある妖にとっては良いニオイらしくてさ。普通の妖にも、
 他とは違うニオイがするってよく言われるんだよ」

「それもあって、静也は妖に狙われやすいんじゃよ・・・」

「まあ、全て返り討ちにしておるがの・・・」

 宇迦と御魂が遠い目をしながら言う。

「この歳で現役トップなの、本当におかしいですよね・・・」

 そう言った彩音さんに、そういえばこの人晴樹さんと一緒に祓い屋やってるん
 だっけかと思い出す。
 前に会ったとき彩音さんが神主だという話は聞いていたが、静也さんは何も言って
 なかったな。・・・まあ、自ら進んで祓い屋ですとは言わないか。

「蒼汰、遊んできても良いか?」

 御鈴がそう言って俺の袖を引っ張る。わざわざ聞かなくても良いだろうにと思い
 ながら頷くと、御鈴は宇迦と御魂の元へ駆け寄り、振り返って言った。

「ちゃんと戻ってくるからの!安心して待っておれ!!」

 ・・・ああ、心配されていたのか。

「大丈夫だよ」

 そう言って笑みを浮かべると、御鈴は笑顔で頷いて遊び始めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。

なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。 そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。 そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。 彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。 それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。

戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。

隣のカキ
ファンタジー
国家存亡の危機を救った英雄レイベルト。彼は幼馴染のエイミーと婚約していた。 婚約者を想い、幾つもの死線をくぐり抜けた英雄は戦後、結婚の約束を果たす為に生まれ故郷の街へと戻る。 しかし、戦争で負った傷も癒え切らぬままに故郷へと戻った彼は、信じられない光景を目の当たりにするのだった……

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...