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第6章 ガルアシラ・ヴォルフォンシアガルド編

211 魔族と魔物の世界

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「大変動が起こった時、拙者はちょうどヴェルターネックの森の近くにおりました」

 ふと空を見ると、人が宙に浮かんでいたのだそうだ。

「その片方に見覚えがありました。一度だけ帝都で拝謁した、皇帝陛下――フィルシオール十七世陛下です」

 そして、その皇帝を抱えて飛んでいたのは、闇色の肌の女性。

「そのときは誰だかわかりませんでしたが、後からそれが魔族として覚醒したライレンシア博士だと知りました」

 ライレンシア博士は帝都で魔族として覚醒したらしい。
 そこから皇帝を連れて大陸中央部まで飛んできた。
 そして大変動を引き起こした……。

〈ライレンシア博士が魔族として覚醒したのはどうしてなんだ?〉

「彼女にはもともと魔族の血が混じっていたようです」

 とクーネアさんが言ってくる。

「リビタン様が天空塔ダンジョンの術式を書き換え、世界の魔力の流れが変化しました。そのことで魔族の血統が目覚めやすくなった……ということはあると思います。しかし直接のきっかけはエドです」

 エドは自分が体内に取り込んでいた魔王の力を、その魔力の流れに乗せて拡散したのだという。

 魔王。
 世界の全ての魔力の源。
 その濃い闇の力に反応して、魔族の血統の濃い者が魔族として覚醒した。

 ヒナワが続ける。

「大変動が起こると、ヴェルターネックの森から一斉に魔物が飛び出してきました。魔族となったライレンシア博士が力を拡散したために、さらに魔王の力の影響が広まったということでしょう」

 そしてその直後、大陸が真っ二つに割れた、とのこと。

 さらに影響は大陸全土に広まる。

「大陸中で、魔族として覚醒する者が続出したのです」

 各地で、闇色の肌に変質した人々が他の人間を襲う。
 ある者はその土地で支配者となった。
 またある者はモンスターと共にダンジョンに消えた。
 そして、多くの者は皇帝とライレンシア博士の元に集ったという。

「皇帝とライレンシア博士はその後、この帝都ではなく、近くの廃都ダンジョンに拠点を置き、魔族を受け入れているそうです」

 ってことは、三つの勢力のうちの一つ、ヴォルフォニア帝国は……。

「はい。魔族の国家ということになります」

 それでダンジョンが拠点か……。

 ベルが言う。

「そんなことが起こったので、エルフを帝都に連れて行こうとしていた騎士団長のガイアンも考えを改めたみたいでした。僕と、クラクラさんとドグラさんと協力して、エルフの皆さんを安全な場所に移送したんです」

 なるほどな……。

〈そういえば、そのガイアンはここにはいないのか?〉

「彼は……皇帝を諫めると言って廃都ダンジョンに向かって……それっきりです」

 そうか……。

 彼だけじゃない。
 それだけの大異変だ。
 きっと多くの人が犠牲になってる。

 でもさ。
 それって……。

 俺が天空塔ダンジョンの術式を書き換える。
 →
 世界中の魔力の流れが変化する。
 →
 エドがその流れに魔王の力を乗せる。
 →
 ライレンシア博士が魔族として目覚めて、その力で大変動を起こす。

 ……つまり全ての原因って。

「違うよ、リビたん」

 と、ロロコがまるで俺の心を読んだかのようなタイミングで言ってきた。

「リビたんが術式を書き換えなかったら、天空塔ダンジョンは倒壊して、世界はとっくに滅亡してた。それを救ったのはリビたんだよ」

〈ロロコ……〉

 くそっ……。
 この世界に来てから、この犬耳っ娘には助けられてばかりだな。

「ああ……そうだな」

 俺は頷く。

 さて、大体の事情はわかってきた。
 詳しいことは全然だけどな。
 あんまり細かいことをいつまでも聞いてるわけにもいかないだろう。

「で、俺は何をすればいいんだ?」

 そのために、目覚めさせたんだろう?
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