220 / 286
第5章 天空塔ダンジョン編
186 冒険書とアルメル・Ⅱ
しおりを挟む
どうもリビングアーマー?の俺です。
いや、リビングアーマーじゃねえよな。
だって今の俺、冒険書だもん。
「え、リビタンさん? ど、どどど、どういうことですか?」
とアルメルがめっちゃ混乱してるけどそれは俺が聞きたい。
冒険書はいつも、鎧の内側にバンドで留めていた。
バンドは本来、鎧パーツ同士を留めたりするやつなんだけどな。
ほら、リビングアーマーの場合、それ必要ないからさ。
むしろ、止めてないほうが、いざというときバラバラになれる。
まあ、今はそのせいで全身バラバラになってしまったわけだが……。
とにかく、その冒険書が、バンドが外れて飛び出しちゃったんだろう。
それはわかる。
わからんのは……。
なんでその冒険書に俺の意識が宿ってるのかってことだ。
「うーん、意味がわかりませんね」
と唸るアルメル。
〈冒険書に意思が宿ったなんて例はないのか?〉
「聞いたことがないですね。そもそも、普通に考えてありえないでしょう。長い間触れてたら意思が宿るっていうなら、リビタンさんはこの塔や大陸にも乗り移れるってことになります」
たしかになぁ。
俺が意識を宿せるのはあくまで鎧のパーツだけ。
リビングアーマーだもんな。
「ん……でも、もしかしたら……え、そういうこと……?」
〈なんだ、なんか思いついたのか――っていうかアルメル。なんか遠くにいってないか? だんだん声が小さくなってってるみたいなんだけど〉
「あ、すみません。考え事をしてたら……」
とアルメルの声が戻ってくる。
「というかリビタンさん。自分で動けないんですか?」
〈動けないしなにも見えてない〉
音が聞こえるのと感触があるだけだ。
「それ、自分がどのパーツなのかわからなかったからじゃないですか? 今は冒険書だってわかったんですから、形をイメージすれば、動いたり、視覚を確保したりできるんじゃないでしょうか」
なるほど、言われてみれば。
そもそも、鎧がパーツで動いたりものを見たりするのだって不自然なんだ。
不自然さで言えば、本だって大して変わらない。
〈よし……〉
冒険書はこんな形で……。
ページをめくって。
鳥が羽ばたくみたいなイメージで……。
――ばさばさばさ!
できた!
宙に浮き上がった感覚があった。
となれば、こっちに目があるようなイメージで……。
やった!
見える!
見えるぞ!
いや、リビングアーマーじゃねえよな。
だって今の俺、冒険書だもん。
「え、リビタンさん? ど、どどど、どういうことですか?」
とアルメルがめっちゃ混乱してるけどそれは俺が聞きたい。
冒険書はいつも、鎧の内側にバンドで留めていた。
バンドは本来、鎧パーツ同士を留めたりするやつなんだけどな。
ほら、リビングアーマーの場合、それ必要ないからさ。
むしろ、止めてないほうが、いざというときバラバラになれる。
まあ、今はそのせいで全身バラバラになってしまったわけだが……。
とにかく、その冒険書が、バンドが外れて飛び出しちゃったんだろう。
それはわかる。
わからんのは……。
なんでその冒険書に俺の意識が宿ってるのかってことだ。
「うーん、意味がわかりませんね」
と唸るアルメル。
〈冒険書に意思が宿ったなんて例はないのか?〉
「聞いたことがないですね。そもそも、普通に考えてありえないでしょう。長い間触れてたら意思が宿るっていうなら、リビタンさんはこの塔や大陸にも乗り移れるってことになります」
たしかになぁ。
俺が意識を宿せるのはあくまで鎧のパーツだけ。
リビングアーマーだもんな。
「ん……でも、もしかしたら……え、そういうこと……?」
〈なんだ、なんか思いついたのか――っていうかアルメル。なんか遠くにいってないか? だんだん声が小さくなってってるみたいなんだけど〉
「あ、すみません。考え事をしてたら……」
とアルメルの声が戻ってくる。
「というかリビタンさん。自分で動けないんですか?」
〈動けないしなにも見えてない〉
音が聞こえるのと感触があるだけだ。
「それ、自分がどのパーツなのかわからなかったからじゃないですか? 今は冒険書だってわかったんですから、形をイメージすれば、動いたり、視覚を確保したりできるんじゃないでしょうか」
なるほど、言われてみれば。
そもそも、鎧がパーツで動いたりものを見たりするのだって不自然なんだ。
不自然さで言えば、本だって大して変わらない。
〈よし……〉
冒険書はこんな形で……。
ページをめくって。
鳥が羽ばたくみたいなイメージで……。
――ばさばさばさ!
できた!
宙に浮き上がった感覚があった。
となれば、こっちに目があるようなイメージで……。
やった!
見える!
見えるぞ!
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
いつもの電車を降りたら異世界でした 身ぐるみはがされたので【異世界商店】で何とか生きていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
電車をおりたら普通はホームでしょ、だけど僕はいつもの電車を降りたら異世界に来ていました
第一村人は僕に不親切で持っているものを全部奪われちゃった
服も全部奪われて路地で暮らすしかなくなってしまったけど、親切な人もいて何とか生きていけるようです
レベルのある世界で優遇されたスキルがあることに気づいた僕は何とか生きていきます
「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~
平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。
三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。
そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。
アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。
襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。
果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる