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第4章 フィオンティアーナ編
EX28 少年とゴーレムの話
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ヴォルフォニア帝国の南端。
ヴェルターネックの森近くにある都市バリガンガルド。
その主の居城で事件が起こっていた。
「逃げたい者は今のうちにさっさと逃げ出せ! 僕に従うなら危害は加えない! ただし、抵抗するなら容赦はしないぞ!」
大量のゴーレムが城を占拠していた。
そいつらがどこから侵入したのか誰も分からなかった。
まるで突然湧いて出たように大量のゴーレムが城内に出現したのだ。
ゴーレムたちは城に詰めていた兵士たちに襲いかかり武器を奪い取った。
城はあっという間に無力化された。
城主のガレンシア公は不在。
主だった兵も彼に付き従っていったので城にいない。
その上相手は剣も槍も弓矢も効かない人形である。
どうにもできなかった。
「今からこの城は僕、ガレンシア公国の正統なる後継者、ベル・ガレンシアのものとする!」
そして、ゴーレムを操っている者が姿を表したとき、皆が目を丸くした。
普段ドジばかりして城主に怒られたり蹴られたりしていた使用人の少年。
それが、別人かと思うほど凛々しい表情で広間に現れたのだから。
傍にはメイドのカタリナが付き従っていた。
ベルはゴーレムたちを率いて広間の階段の上にあるバルコニーに立つ。
そしてそこに集まった、主だった兵士や使用人に向かって告げる。
「現ガレンシア公は簒奪者だ! 僕の父と母を殺し、この城と国を奪った! 僕はそれを取り戻しただけだ! だが、異論があるというのなら——」
ゴーレムを動かし脅しをかけようとするベル。
しかし、それより早く、
兵士たちが一斉に臣下の礼をした。
「——へ?」
思わず気の抜けた声をあげてしまうベル。
兵士の一人が言ってくる。
「もちろん異論はありません。我らは元々あなたのお父上に仕えていた。正しき主の元へ戻れる……それは我らにとって喜びです」
なあ、と同意を求める兵士に他の兵士たちも頷く。
「どう考えてもあのバカ城主よりベル様のほうがいいよ」
「っていうか、いつ決起の相談してくれるのかって待ってたんですよ」
「そうだそうだ」
兵士だけではない。
使用人たちも笑みを浮かべてベルを見ていた。
「ベル坊が主ならこの城もずっと居心地良くなるよ」
「バカお前、ベル様って呼べよ」
「いけない、いつもの癖で……」
「みんな……」
ベルは思わず泣きそうになる。
父と母の仇を取りたい。
その思いだけでここまでやってきた。
だが、公位を取り戻すことは、仕える兵士や使用人のためにもなるらしい。
これはまだ始まりに過ぎない。
ガレンシア公国の領地も取り戻さねばならないのだ。
ベルは兵士たちに協力を呼びかけるべく、ふたたび声を上げる。
「僕と一緒にガレンシア公と戦ってくれる者は?」
兵士全員がそれに応えたのは言うまでもなかった。
ヴェルターネックの森近くにある都市バリガンガルド。
その主の居城で事件が起こっていた。
「逃げたい者は今のうちにさっさと逃げ出せ! 僕に従うなら危害は加えない! ただし、抵抗するなら容赦はしないぞ!」
大量のゴーレムが城を占拠していた。
そいつらがどこから侵入したのか誰も分からなかった。
まるで突然湧いて出たように大量のゴーレムが城内に出現したのだ。
ゴーレムたちは城に詰めていた兵士たちに襲いかかり武器を奪い取った。
城はあっという間に無力化された。
城主のガレンシア公は不在。
主だった兵も彼に付き従っていったので城にいない。
その上相手は剣も槍も弓矢も効かない人形である。
どうにもできなかった。
「今からこの城は僕、ガレンシア公国の正統なる後継者、ベル・ガレンシアのものとする!」
そして、ゴーレムを操っている者が姿を表したとき、皆が目を丸くした。
普段ドジばかりして城主に怒られたり蹴られたりしていた使用人の少年。
それが、別人かと思うほど凛々しい表情で広間に現れたのだから。
傍にはメイドのカタリナが付き従っていた。
ベルはゴーレムたちを率いて広間の階段の上にあるバルコニーに立つ。
そしてそこに集まった、主だった兵士や使用人に向かって告げる。
「現ガレンシア公は簒奪者だ! 僕の父と母を殺し、この城と国を奪った! 僕はそれを取り戻しただけだ! だが、異論があるというのなら——」
ゴーレムを動かし脅しをかけようとするベル。
しかし、それより早く、
兵士たちが一斉に臣下の礼をした。
「——へ?」
思わず気の抜けた声をあげてしまうベル。
兵士の一人が言ってくる。
「もちろん異論はありません。我らは元々あなたのお父上に仕えていた。正しき主の元へ戻れる……それは我らにとって喜びです」
なあ、と同意を求める兵士に他の兵士たちも頷く。
「どう考えてもあのバカ城主よりベル様のほうがいいよ」
「っていうか、いつ決起の相談してくれるのかって待ってたんですよ」
「そうだそうだ」
兵士だけではない。
使用人たちも笑みを浮かべてベルを見ていた。
「ベル坊が主ならこの城もずっと居心地良くなるよ」
「バカお前、ベル様って呼べよ」
「いけない、いつもの癖で……」
「みんな……」
ベルは思わず泣きそうになる。
父と母の仇を取りたい。
その思いだけでここまでやってきた。
だが、公位を取り戻すことは、仕える兵士や使用人のためにもなるらしい。
これはまだ始まりに過ぎない。
ガレンシア公国の領地も取り戻さねばならないのだ。
ベルは兵士たちに協力を呼びかけるべく、ふたたび声を上げる。
「僕と一緒にガレンシア公と戦ってくれる者は?」
兵士全員がそれに応えたのは言うまでもなかった。
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