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第4章 フィオンティアーナ編

158 ドグラとマグラ

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「我のことはもう忘れてくれっ!」

 どうも、リビングアーマーの俺です。

 俺、ロロコ、クラクラの三人で、ドラゴン娘のドグラがいる部屋に来た。

 が、ドグラはタンスの陰に隠れて顔を出そうとしない。

 そして冒頭のようなことを言ってきたというわけだ。

 ……まー無理もないか。

 オーク寄せの臭いで具合が悪くなって途中退場。
 その上フィオンティアーナの街にゲロをぶちまけて。
 結果謎の宗教集団を生み出してしまったとあれば、さ。

 なんか、もう、こう知り合いと顔合わせたくなくなる気持ちはわかる。

 けどそういうわけにはいかないんだよなぁ。

〈そう言わず出てきてくれ。ドグラじゃないとできないことがあるんだよ〉

「うるしゃいうるしゃい! なんじゃ貴様は! しばらく見ないうちに偉そうに鎧に装飾など入れおって!」

 いやそれ言いがかりじゃん……。

 まあ確かにずいぶん豪華そうな見た目にはなりましたけど。

「ドグラ、わがまま、だめ」

 とロロコが言う。

 エンシェント・ドラゴンに臆せずそんなことを言えるんだから肝が据わってるよな。

「ほら、クラクラも」

「う、うむ……」

 そう言われて、クラクラも気が進まない様子ながら声をかける。

「ドグラ、出てきてくれないか。そなたにしか頼めないことがあるのだ」

「うん!」

 変わり身はっや!

 タンスの陰から飛び出したドグラはガシッとクラクラに抱きついた。

 エンシェント・ドラゴンの威厳のかけらもないな……。

 ともかく出てきてくれたのはありがたい。

 俺はこれまでにあった色々をドグラに説明する。

 ヴォルフォニア帝国が天空塔ダンジョンに謎の装置を仕掛けたこと。
 そのせいでオークたちが暴走していること。
 ダンジョンの管理者であるオークキングたちにその装置の除去を頼まれていること。
 しかし、その装置に至る道を、ドラゴンのマグラが塞いでいること。

「マグラがそんなところにおるのか。なんをしておるのだ、あのバカは」

 ドグラは不機嫌そうにそう言う。

〈ひょっとしてあんまり仲が良くないのか?〉

「良くはないの。あいつは自分がやらかした悪事を全部我に押しつけよる。おかげで我の評判が悪くなるのじゃ」

 七つの都市を滅ぼしたのも、ドグラのせいになってたもんな……。

「ま、よかろ。そういう事情なら、さっと行って叱りつけてやるとしよう。それに、その装置を仕掛けた者のことも気になるしの……」

 そうなのだ。

 天空塔ダンジョンに謎の装置を仕掛けたのは帝国の研究者。
 その名前は『ライレンシア』とのことだった。

 ドグラの婚約者だったエルフ。

 バリガンガルドの近くの湖の名前になっていて。
 さらに、絶海の孤島ダンジョンのゴーレムが自らをそう名乗っていた。

 クラクラにそっくりでもあるという彼女。

 それが今も生きているのか?
 あるいは別人なのか?

 いいかげんその辺りのこともはっきりさせたい。

「よし、善は急げじゃ。さっさと行くぞ」

 ドグラはそう言うと、部屋の窓を開けて飛び出した。

 そのままドラゴン態に変化する。

「三人とも早く乗れ」

〈待ってくれ。アルメルとラファがまだ戻ってきてないんだ〉

 二人はラファの新しい義手探しに出かけてる。

「べつに構わんじゃろ。ダンジョンの攻略をするでもなし。そんなものすぐに終わりじゃ」

 まあたしかに。
 天空塔ダンジョンは管理者であるオークがいれば自由に通行できるらしい。

 だったら特に準備なしで向かってもいいか。

 そう思い、ドグラの背中に乗ろうとしたときだ。

 グラグラっと世界が揺れた。

 地震……いや、普通の地震じゃない。

 自分の周りの魔力が揺れる、不愉快な感覚。

 これは……!

 ええと、ええと、なんだっけ。

 久しぶりすぎて名前忘れたわ!
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