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第4章 フィオンティアーナ編
142 オークの恐怖
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どうも、リビングアーマーの俺です。
チェインハルト商会の依頼で密偵を追って水の都ヴェティアンまできた俺たち。
追いかけていた忍者を捕まえたと思ったそのとき。
オークがヴェティアンの街を襲撃した!
俺たちはオークから逃げ回って、避難所にたどり着いたってわけだ。
俺、ロロコ、クラクラ、アルメル、ドグラ、ヒナワは壁の中に招き入れられた。
俺たちを呼んだ男の人はすぐさま扉を閉じた。
おお、なんだここ!
でかいお屋敷があった。
が、ただのお屋敷じゃなくて、横に港がくっついている。
敷地内に海に続く水場があって、そこに船が何艘も浮かんでいるのだ。
驚いた顔でそれを眺める俺たちを見て、男の人が訊いてくる。
「あんたら、冒険者か」
〈あ、はい。そんなところです〉
冒険者として登録しているのは俺とロロコとアルメルだけだけどね。
ヒナワがどうなのかは知らない。
「ここはヴェティアン一の貿易商アントン様のお屋敷の一つだ」
屋敷『の一つ』って言った?
そのアントンって人、こんな屋敷をほかに何個も持ってるの!?
フィオンティアーナもすごい栄えてたけど。
ヴェティアンも儲けてるんだなぁ。
さすが商業都市。
「他にも何人か大きな屋敷を持っている旦那がたが避難所として開放してくれてな、市民はみんなそこに逃げ込んでるってわけだ」
へー。
いい人が多いんだな。
どこぞのバカ領主とかとは大違いだ。
「ヴェティアンはほぼ全市民が商人ですからね。貧富の差はあっても階級意識はあまりないそうです」
アルメルが説明してくれる。
なるほどな。
「しかし、あんたら、オークに襲われてたっぽいけど、よく大丈夫だったな。見たところ鎧の旦那以外はみんな女なのに」
「女だと、なにかあるの?」
ロロコが問う。
ええと、それは……。
オークは性欲旺盛とかそういう話でしょうかね……?
と思ったら違うっぽい。
「いや、まあ……避難所に来てくれればわかるが……」
なぜか言葉を濁す男の人に連れられて、俺たちはお屋敷の中に入る。
大広間みたいなところに大勢の人がいた。
ここが庶民の待機場所になってるっぽい。
……のはいいんだけど。
「離してー! 私あの方に会いに行くの!」
「落ち着け! お前が見たのはオークだ!」
「はぁはぁ……オーク、オーク……っ」
「おい、しっかりしろ! 君の婚約者は僕だぞ!」
「素敵なお顔、たくましいお身体……あれが私の夫になる人……」
「違う! お前はリボフィッチ家に嫁入りする予定だっただろ!」
なんだこれ……。
そこにいる多くの女性が、なんというか、正気を失ってた。
みんな興奮していて、目にハートマークが浮かんでる錯覚すら見えてきそう。
「なんじゃこれは……」
呆れ声で呟くドグラに、男の人は答える。
「オークは妙な力を持ってるだろ。催淫効果とか言ったか? 今年のオークはそれがやたらに強いんだよ。おかげでうちの女房娘連中はあの有様だ」
なるほど、悲惨だ……。
「あの力は種族が近いエルフと、魔力に耐性のない人間が危ないっていうんだが……そっちの騎士様は大丈夫だったんで?」
と男の人はクラクラに問う。
クラクラは視線を逸らしながら、
「ふ、ふん。私はそのような浮ついた下品な力に惑わされたりはしないっ!」
さっきオーク見てカッコいいとか言ってたけどね……。
しかし納得だ。
人犬族のロロコ。
ドワーフ嬢のアルメル。
ドラゴン娘のドグラ。
三人ともオークの催淫効果は種族的な問題で効かないってわけだ。
って、あれ?
ヒナワはなんで平気なの?
普通の人間だよね?
「拙者はそういうことに対する訓練を受けているので平気なのだ」
おお!
さすがクノイチ!
どんな訓練なのかちょっと興味ある……。
「ところで、今年のオークって仰いましたけど、オークって毎年沸くものなんですか?」
とアルメルが問う。
「ああ……ここ十年くらいはずっとな。南東にある天空塔ダンジョンから出現するんだ」
天空塔ダンジョン。
世界四大ダンジョンの一つか。
「塔を攻略できる冒険者もなかなか現れないしな。今は街を襲うオークを防ぐので精一杯ってわけだが……今年のオークはちょいヤバいな」
ちょいっていうかめちゃくちゃヤバいんじゃないの?
街に入られてるし。
「なあに、これくらいはたまにあるんだ。みんな避難できりゃいいんだよ。あとは傭兵が退治してくれる――」
「た、大変だぁ!」
と、そこへ人が飛び込んできた。
「傭兵が全員逃げちまったぞ!」
うわあ、大変だぁ……。
チェインハルト商会の依頼で密偵を追って水の都ヴェティアンまできた俺たち。
追いかけていた忍者を捕まえたと思ったそのとき。
オークがヴェティアンの街を襲撃した!
俺たちはオークから逃げ回って、避難所にたどり着いたってわけだ。
俺、ロロコ、クラクラ、アルメル、ドグラ、ヒナワは壁の中に招き入れられた。
俺たちを呼んだ男の人はすぐさま扉を閉じた。
おお、なんだここ!
でかいお屋敷があった。
が、ただのお屋敷じゃなくて、横に港がくっついている。
敷地内に海に続く水場があって、そこに船が何艘も浮かんでいるのだ。
驚いた顔でそれを眺める俺たちを見て、男の人が訊いてくる。
「あんたら、冒険者か」
〈あ、はい。そんなところです〉
冒険者として登録しているのは俺とロロコとアルメルだけだけどね。
ヒナワがどうなのかは知らない。
「ここはヴェティアン一の貿易商アントン様のお屋敷の一つだ」
屋敷『の一つ』って言った?
そのアントンって人、こんな屋敷をほかに何個も持ってるの!?
フィオンティアーナもすごい栄えてたけど。
ヴェティアンも儲けてるんだなぁ。
さすが商業都市。
「他にも何人か大きな屋敷を持っている旦那がたが避難所として開放してくれてな、市民はみんなそこに逃げ込んでるってわけだ」
へー。
いい人が多いんだな。
どこぞのバカ領主とかとは大違いだ。
「ヴェティアンはほぼ全市民が商人ですからね。貧富の差はあっても階級意識はあまりないそうです」
アルメルが説明してくれる。
なるほどな。
「しかし、あんたら、オークに襲われてたっぽいけど、よく大丈夫だったな。見たところ鎧の旦那以外はみんな女なのに」
「女だと、なにかあるの?」
ロロコが問う。
ええと、それは……。
オークは性欲旺盛とかそういう話でしょうかね……?
と思ったら違うっぽい。
「いや、まあ……避難所に来てくれればわかるが……」
なぜか言葉を濁す男の人に連れられて、俺たちはお屋敷の中に入る。
大広間みたいなところに大勢の人がいた。
ここが庶民の待機場所になってるっぽい。
……のはいいんだけど。
「離してー! 私あの方に会いに行くの!」
「落ち着け! お前が見たのはオークだ!」
「はぁはぁ……オーク、オーク……っ」
「おい、しっかりしろ! 君の婚約者は僕だぞ!」
「素敵なお顔、たくましいお身体……あれが私の夫になる人……」
「違う! お前はリボフィッチ家に嫁入りする予定だっただろ!」
なんだこれ……。
そこにいる多くの女性が、なんというか、正気を失ってた。
みんな興奮していて、目にハートマークが浮かんでる錯覚すら見えてきそう。
「なんじゃこれは……」
呆れ声で呟くドグラに、男の人は答える。
「オークは妙な力を持ってるだろ。催淫効果とか言ったか? 今年のオークはそれがやたらに強いんだよ。おかげでうちの女房娘連中はあの有様だ」
なるほど、悲惨だ……。
「あの力は種族が近いエルフと、魔力に耐性のない人間が危ないっていうんだが……そっちの騎士様は大丈夫だったんで?」
と男の人はクラクラに問う。
クラクラは視線を逸らしながら、
「ふ、ふん。私はそのような浮ついた下品な力に惑わされたりはしないっ!」
さっきオーク見てカッコいいとか言ってたけどね……。
しかし納得だ。
人犬族のロロコ。
ドワーフ嬢のアルメル。
ドラゴン娘のドグラ。
三人ともオークの催淫効果は種族的な問題で効かないってわけだ。
って、あれ?
ヒナワはなんで平気なの?
普通の人間だよね?
「拙者はそういうことに対する訓練を受けているので平気なのだ」
おお!
さすがクノイチ!
どんな訓練なのかちょっと興味ある……。
「ところで、今年のオークって仰いましたけど、オークって毎年沸くものなんですか?」
とアルメルが問う。
「ああ……ここ十年くらいはずっとな。南東にある天空塔ダンジョンから出現するんだ」
天空塔ダンジョン。
世界四大ダンジョンの一つか。
「塔を攻略できる冒険者もなかなか現れないしな。今は街を襲うオークを防ぐので精一杯ってわけだが……今年のオークはちょいヤバいな」
ちょいっていうかめちゃくちゃヤバいんじゃないの?
街に入られてるし。
「なあに、これくらいはたまにあるんだ。みんな避難できりゃいいんだよ。あとは傭兵が退治してくれる――」
「た、大変だぁ!」
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