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第3章 絶海の孤島ダンジョン編

EX19 ドラゴンとエルフの話

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 エルフのクラクラはドラゴンにさらわれ、延々と海の上を飛んでいた。
 大陸の東に広がるリリアンシア海の荒波が真下に見える。

 バリガンガルドを守るため戦っている途中。
 突然ドラゴンが口を聞いた。
 クラクラのことをライレンシアと呼び、相変わらず美しいとかなんとか言っていた。
 かと思うと、クラクラを前足で捕らえると、そのまま飛び去ったのだ。

 途中、休憩なのか何度か地上に降りた。

 一回目はクラクラの故郷であるフリエルノーラ国の王宮。
 二回目は絶海の孤島ダンジョンの周縁部だと思われる森の中。

 どちらでも、クラクラはドラゴンに訴えた。
 人違いだ。
 私はライレンシアではない。
 私にはやるべきことがあるから帰してほしい、と。

 しかしドラゴンは聞く耳を持たず、クラクラを連れてひたすら東へ飛んだ。

 相手は最強のエンシェント・ドラゴンだ。
 本気で機嫌を損ねて殺されては敵わない。
 途中からクラクラは、とりあえず目的地に着くまでおとなしくしていることにした。

 そして……。

「おお、見えてきた……」

 ドラゴンが声を上げる。
 見れば、海の中にポツンと島がある。
 絶海の孤島ダンジョンの本島だろう。

 島の中央には城が建っている。
 もう長らく手入れされていないようで、ボロボロだった。

「ああ、なんということじゃ。我が城が……」

 ドラゴンは嘆くような声を発した。

 ――ギイイイイイ!

 そこへ、城の中からモンスターが現れた。
 ワイバーンだ。

 小型のドラゴンとでもいった姿。
 もちろんドラゴンほどの強さはない。
 だが、それでも一体出現すれば、冒険者パーティが苦戦する相手である。
 それが十体、二十体と、まるでコウモリの群れみたいに大量に出現する。

「グオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

 ドラゴンが咆哮する。

 その一声だけでワイバーンたちは一斉に方向転換。
 すぐに、島のあちこちに散っていった。

「すごい……」

 クラクラは思わず呟いた。

 ドラゴンはそのまま悠々と城の城壁に降りていった。
 城壁は普通のものよりかなり幅広い。
 ちょうどドラゴンの巨体が降りるのにちょうどいいサイズだ。
 ここがこのドラゴンの居城なのだとしたら、ここが玄関なのかもしれない。

 城壁に降りたドラゴンはクラクラを解放した。

 クラクラは城壁からまず島の方を見る。
 森に覆われている。
 はっきりとは見えないが、大量のモンスターがいるようだ。

 次に城の方を見る。
 やはり大量のモンスターが潜んでいるようだ。

「我が少し寝ている間に、雑魚どもがはびこりおって……」

 忌々しそうにそう言うと、ドラゴンはクラクラに言ってくる。

「少しここにおれ、ライレンシア。掃除をしてくる」

「いや、だから私は――」

 相変わらずクラクラの話を聞かず、ドラゴンは城壁から城の中へ向かった。

「……ん?」

 クラクラは一瞬目を疑った。

 城に入る直前、ドラゴンの姿が縮んだように見えたのだ。

 そういえば、こんな話を聞いたことがある。
 高い魔力を持つドラゴンは自分の姿を自由に変えられるのだ。

 考えてみればこの城、本体はあのドラゴン用にしては小さい。
 城にいる間は、あのドラゴンは小さいサイズで生活しているのかもしれない。

「…………」

 しばらく待っていると、城の中からすごい騒ぎの音が聞こえてきた。

 ――ギギギギギギ!

 ――ギャギャギャギャ!

『ここは我の城じゃ! 出ていけ!』

 どしんばたん!
 がらんごろん!
 ばきばきばきばきばき!

 続いて大量の足音が遠のいていく。

 モンスターたちがドラゴンに追い出されたのだろう。

 そして。

「ふう、やれやれ。待たせたな」

「え…………?」

 そう言いながら戻ってきたドラゴンの姿を見てクラクラは驚愕した。
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