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第3章 絶海の孤島ダンジョン編

108 ダンジョンが攻略できないからってぶっ壊すのは間違っているだろうか

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 どうもリビングアーマーの俺です。
 こっちは魔法を使えるトカゲウオさんたち。
 そして、トカゲウオさんたちが生み出した超巨大火の玉。

〈うわああああああ!〉

 ヤバいヤバいヤバいヤバい!
 嘘でしょ!?
 トカゲウオがこんなすごい魔法使えるなんて!

 これ、あれだ。
 ゲームの序盤で出てきたモンスターの色違いが後から出てきたときの感じ。
 同じような外見だから弱いだろうと思ったらめっちゃ強いの。

 勘弁して!

  ――ボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロ!ボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロ!

 そこら中のトカゲウオさんたちがめっちゃ怒ってる。
 その鳴き声の大合唱に伴って、火の玉はどんどん大きくなっていく。

 あの……。
 そんなに大きくしたら、自分たちにも被害が出るんじゃないの?
 もうその辺でやめておいたら?

 ――ボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロ!ボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロボロ!

 あ、無駄そうですね。
 聞く耳持たないってやつですね。

〈うおおおおおおお!〉

 俺は水面から飛び跳ねるトカゲウオをかわしながら逃げる。
 その空間の壁際まで逃げてきて、少し離れたところにいるラファに声をかける。

〈おおい、ラファ!〉
「ぐー、ぐー、ぐー」
〈まだ寝てるのかよ!〉

 なんでこの状況で寝てられるんだ!?

 とりあえず、もうここはいったん逃げるしかない。
 レベルアップとか言ってる場合じゃない。
 そういう作業はもっと自分の実力に見合った安全な場所でやるもんだ。

〈それ!〉

 俺はゴーレムパーツになってる右腕を射出した。
 ラファがいる穴の縁に指をひっかける。
 そしてワイヤーを回収して自分の身体を引っ張る。

 ――ボロボロボロボロ!

 あ、てめえ、このやろ!

 トカゲウオが飛びついてきた。
 俺の左腕!
 右脚も!

 くそ、回収してる余裕はない。
 火の玉がすぐそこまで迫っている。

 左腕と右脚パーツを失った状態で、俺はワイヤーで飛んでいく。

 穴に飛び込み、そのままラファに激突した。

「ぶわわ!? ど、どうしたのリビタン?」
〈どうしたもこうしたもねー! 逃げるぞ!〉
「え? おわー! これはまた派手に怒らせたね」

 落ち着いてる場合じゃねー!

 火の玉はもうすぐ目の前まで迫っている。
 しかも高温のそれは、岩壁を溶かして、俺たちのところまで普通にたどり着きそう。
 穴に逃れたからって安全じゃなさそうだ。

 おいおい、これヤバいんじゃねえの?

 しかしラファはなぜか穴の縁に身を乗り出す。

〈お、おい、なにしてるんだ?〉
「大丈夫」

 ラファはニカリと笑って言ってきた。

「寝たら回復した。あれ、撃てるよ」

 おお、マジか!

 ラファはゴーレムパーツの義手になっている左腕を掲げる。
 その腕が真ん中あたりでガション! と折れ曲がる。
 中からは大砲のようなパーツが現れる。

「よーし、いくよー」

 気楽な声で言って、ラファは攻撃開始。

 ――ヒュゴ!

 眩い閃光が走ったかと思うと、火の玉を貫いた。
 次の瞬間、火の玉は爆発四散!

 ――ヒュゴ!
 ――ヒュゴ!
 ――ヒュゴ!

 続いて第二射、第三射、第四射。
 っていうか連射を制御できないんだったな……。

 ビームが放たれるたびに激しい爆発音と岩が崩れる音が響き渡る。

 ――ボロボロボロボロボロ!
 ――ボロボロボロボロボロ!
 ――ボロボロボロボロボロ!

 悲鳴とも怒号ともつかないトカゲウオの声が響き渡る。

 そして……。

「ふー、撃った撃った」

 ようやく収まったビーム砲を収納するラファ。
 これでまた一日は使えないわけだな。

〈しっかし、すごいことになってるな……〉

 俺は半分呆れながらトカゲウオの狩場を眺める。

 めっちゃくちゃに崩れて、全然違う形の空間になっている。
 たくさんあったため池も、全部蒸発してなくなってしまった。
 そこかしこに焼け焦げたトカゲウオの死骸。

 すげえな。
 もう原型留めてねえじゃん。

 そういや俺の左腕パーツと右脚パーツは見当たらないな。
 どうしよう。
 腕はともかく、脚はないと移動すら不便だ。

 ん?

 崩れた岩の下に、なにか埋まってるな?
 俺のパーツかな?

〈ちょっと見ていっていいか?〉
「もちろん。あたしも食料確保したいし」

 そう言って俺たちは変わり果てた第三関門へ降りていった。
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