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第3章 絶海の孤島ダンジョン編
EX18 冒険者部隊とドラゴンの話・Ⅱ
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リザルドたち冒険者部隊は一気に緊張感を高めた。
絶海の孤島ダンジョンにはドラゴンはもういないとされてきた。
しかし、彼らの眼前には、たしかに巨大なドラゴンがいた。
(ガイアンさんが報告を忘れた……わけがねえよな。だったら、ガイアンさんもドラゴンがいることを知らなかったってわけか)
リザルドはそんなことを考えながら、傍にいた部下に小声で指示をする。
「ひとまず引き返すぞ。対ドラゴン用の備えなんかしてねえ。それに、ガイアンさんに伝えとく必要もあるだろう」
「了解です」
部下がほかのメンバーにもリザルドの指示を伝えようとしたところで、メンバーの一人がそのことに気づいた。
「おい……ドラゴンが誰か連れてるぞ」
「本当だ。ありゃあエルフだな」
「なに?」
リザルドはドラゴンの足元に目を凝らす。
たしかにいた。
金色の髪の、美しい女エルフだ。
なぜか腕だけに鎧をつけている。
エルフはドラゴンと向き合ってなにかを話しているようだ。
「っていうか、喧嘩してませんか?」
「まさか……」
部下の言葉をリザルドは反射的に否定する。
ドラゴンと喧嘩できるやつなんかこの世にいるはずがない。
……はずなのだが。
たしかにそのエルフはドラゴンと言い争っているように見えた。
その内容は残念ながらここまで聞こえてこない。
しかしその争い方がだんだん激しくなっていき、最終的に、
――グオオオオオォォォォオオオオオオオオオオオアアアアアアアア!
ドラゴンが言い負かされて、キレた。
「うぉ!?」
思わず耳を塞ぐリザルド。
ほかの冒険者たちも同様だ。
ドラゴンはどすんどすんと地団駄を踏んで、前足でエルフを捕まえると、バサバサと翼を羽ばたかせた。
強風が巻き起こり、草樹が盛大に揺れる。
どん! と最後に一踏み地面を叩くと、ドラゴンは宙に飛び上がった。
そのまま東の空へ飛んでいった。
「なんだったんだ……」
「痴話喧嘩?」
「エルフとドラゴンがか? バカ言うなよ」
冒険者たちは口々に言い合う。
そこへリザルドが声をかける。
「おおい、もたもたすんなよ。撤退は変わらねえ。あのドラゴン、たぶんダンジョンの本島に戻るんだろう。今の装備じゃドラゴンがいるダンジョンなんぞ探索できねえ」
リザルドの言葉に冒険者たちは撤退の準備をする。
ドラゴンにさらわれたエルフのことは気になるが、彼女を助けるにしても今の自分たちの装備では心許ない。
どちらにしろ、いったん引き返すしかないのだ。
しかし――。
「隊長……なんか音が聞こえませんか?」
「ああ。それも、とんでもなく不吉な音がな……」
その音は足元から聞こえてきた。
ガラ、ガラ……と岩が崩れる音。
メキ、メキ……と木の根が折れる音。
ビキ、ビキ……と地面にヒビの入る音。
ここにいる冒険者の多くが、ダンジョン探索の際に多かれ少なかれ経験したことのある音だった。
「やばいっ――」
隊長がメンバーに指示を飛ばす暇はなかった。
彼らの足元の地面が盛大に崩れ、冒険者部隊のメンバーは全員、強制的に絶海の孤島ダンジョンに突入させられたのだった。
◆◇◆◇◆
このドラゴンの地団駄で発生した地割れは、一方では冒険者部隊をダンジョンに引き摺り込み、一方ではリビングアーマーとゴブリン娘が窮地を脱するきっかけになったのだった。
絶海の孤島ダンジョンにはドラゴンはもういないとされてきた。
しかし、彼らの眼前には、たしかに巨大なドラゴンがいた。
(ガイアンさんが報告を忘れた……わけがねえよな。だったら、ガイアンさんもドラゴンがいることを知らなかったってわけか)
リザルドはそんなことを考えながら、傍にいた部下に小声で指示をする。
「ひとまず引き返すぞ。対ドラゴン用の備えなんかしてねえ。それに、ガイアンさんに伝えとく必要もあるだろう」
「了解です」
部下がほかのメンバーにもリザルドの指示を伝えようとしたところで、メンバーの一人がそのことに気づいた。
「おい……ドラゴンが誰か連れてるぞ」
「本当だ。ありゃあエルフだな」
「なに?」
リザルドはドラゴンの足元に目を凝らす。
たしかにいた。
金色の髪の、美しい女エルフだ。
なぜか腕だけに鎧をつけている。
エルフはドラゴンと向き合ってなにかを話しているようだ。
「っていうか、喧嘩してませんか?」
「まさか……」
部下の言葉をリザルドは反射的に否定する。
ドラゴンと喧嘩できるやつなんかこの世にいるはずがない。
……はずなのだが。
たしかにそのエルフはドラゴンと言い争っているように見えた。
その内容は残念ながらここまで聞こえてこない。
しかしその争い方がだんだん激しくなっていき、最終的に、
――グオオオオオォォォォオオオオオオオオオオオアアアアアアアア!
ドラゴンが言い負かされて、キレた。
「うぉ!?」
思わず耳を塞ぐリザルド。
ほかの冒険者たちも同様だ。
ドラゴンはどすんどすんと地団駄を踏んで、前足でエルフを捕まえると、バサバサと翼を羽ばたかせた。
強風が巻き起こり、草樹が盛大に揺れる。
どん! と最後に一踏み地面を叩くと、ドラゴンは宙に飛び上がった。
そのまま東の空へ飛んでいった。
「なんだったんだ……」
「痴話喧嘩?」
「エルフとドラゴンがか? バカ言うなよ」
冒険者たちは口々に言い合う。
そこへリザルドが声をかける。
「おおい、もたもたすんなよ。撤退は変わらねえ。あのドラゴン、たぶんダンジョンの本島に戻るんだろう。今の装備じゃドラゴンがいるダンジョンなんぞ探索できねえ」
リザルドの言葉に冒険者たちは撤退の準備をする。
ドラゴンにさらわれたエルフのことは気になるが、彼女を助けるにしても今の自分たちの装備では心許ない。
どちらにしろ、いったん引き返すしかないのだ。
しかし――。
「隊長……なんか音が聞こえませんか?」
「ああ。それも、とんでもなく不吉な音がな……」
その音は足元から聞こえてきた。
ガラ、ガラ……と岩が崩れる音。
メキ、メキ……と木の根が折れる音。
ビキ、ビキ……と地面にヒビの入る音。
ここにいる冒険者の多くが、ダンジョン探索の際に多かれ少なかれ経験したことのある音だった。
「やばいっ――」
隊長がメンバーに指示を飛ばす暇はなかった。
彼らの足元の地面が盛大に崩れ、冒険者部隊のメンバーは全員、強制的に絶海の孤島ダンジョンに突入させられたのだった。
◆◇◆◇◆
このドラゴンの地団駄で発生した地割れは、一方では冒険者部隊をダンジョンに引き摺り込み、一方ではリビングアーマーとゴブリン娘が窮地を脱するきっかけになったのだった。
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