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第3章 絶海の孤島ダンジョン編
90 芋虫と芋虫と芋虫
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どうも、リビングアーマーの俺です。
絶海の孤島ダンジョンを攻略中。
目的は、ドラゴンにさらわれたエルフのクラクラの救出だ。
俺以外のメンバーは三人。
人犬族のロロコ。
ドワーフ嬢のアルメル。
それに、途中で出会ったゴブリン娘のラファ。
ラファはクラクラがいると思われる「ドラゴンの巣」までの道を知っている。
なので道案内を頼んだのだった。
現在、俺たちはひたすら洞窟を進行中。
前にさまよっていた大洞窟ダンジョンとそんなに変わらない感じがするな。
違うのは、妙に湿っぽいというか、水っぽいところ。
ラファによると、
「ここはもうリリアンシア海の真下だからね。海水が落ちてきてるんだよ」
とのこと。
言われてみれば、潮っぽい臭いがするな。
「ところでさ、リビタンだっけ?」
〈ん? ああ、なんだ〉
「その、ガションガションいうのどうにかならない? モンスターに聞かれて危険だと思うよ?」
あー……。
そりゃそうだよな。
俺自身は常に聞いてるのでほとんど気にならなくなってた。
全身鎧の俺は、動くたびに金属がぶつかる音が鳴り響くのだ。
アルメルに調整してもらったので、普通の鎧よりかなり静かではあるんだけど。
それでも洞窟内だと反響してかなり大きく聞こえる。
ラファにはまだ、俺がリビングアーマーだと言っていなかった。
ラファは俺が普通の人間だと思っている。
だから「脱げば?」という気持ちにもなるだろうな。
〈えーと、なんていうか説明が難しいんだが……ラファのその腕みたいなもんだって思ってもらえるとありがたい〉
俺はそう言ってラファの左腕を指差す。
彼女の左腕は、肩から先が義手になっている。
アルメルによれば、オリハルコン製のゴーレムの腕らしい。
それがどういう理屈で彼女の身体に接続しているのかはわからないけど。
彼女はそれを自分の腕のように扱っている。
しかし腕は彼女の皮膚と結合していて、取り外せるようにはなっていない。
俺の身体も、まあそんなようなものだろう。
本体は鎧ではなく霊体なんだけど。
霊体だけで活動できるわけではない。
「なるほどねー。じゃあしょうがないか」
俺の言葉に納得してくれたらしく、ラファは頷いた。
よかった。
でもそのうちちゃんとリビングアーマーだってことは説明したほうがいいかもな。
「止まって」
そんなことを考えていると、ラファが言ってきた。
道がそこで途切れていて、その先は広い空間になっているようだった。
その広い空間に通じる穴から外を覗いてから、ラファは呟く。
「どうしたの」
「モンスターがうじゃうじゃいる」
ロロコの言葉に答えるラファ。
うへえ、マジかよ。
いっぱい、とか、たくさん、とかじゃなくてうじゃうじゃっていうのが嫌な感じ。
「なんのモンスターですか?」
「芋虫と芋虫と芋虫だね」
アルメルの問いにはそう答える。
〈それってつまりヴァイン・キャタピラーがたくさんいるってことじゃないのか?〉
ちょっと前に遭遇した、植物の根が芋虫に擬態したモンスターだ。
しかしそういうことではないらしい。
「ヴァイン・キャタピラーもいるよ。でも、ケイヴ・キャタピラーとノンアーマー・アーマーバグもいるんだ」
え、なんだって?
「うわ、ほんとですね」
ラファの横から外を覗き込んで、アルメルが言ってくる。
「ケイヴ・キャタピラーは、ヴァイン・キャタピラーが外見を真似た、本物の芋虫のモンスターです。ノンアーマー・アーマー・バグはアーマー・バグの亜種で、かたい殻に覆われていないものです。外見は似ていますが、芋虫とは違いますね」
そういや、前にレッサー・アーマー・バグってのと遭遇したな。
一時期あれの殻にはお世話になった……。
あれのでかいやつがアーマー・バグ。
その殻なしがノンアーマー・アーマー・バグってことか。
それプラスとマイナス相殺して、ただのバグでいいんじゃねえの……?
まあともかく、その三種類の芋虫っぽいモンスターがこの先にいるってわけね。
〈まあ、いるのはわかったけど、それ、またラファのさっきの攻撃で退治できるんじゃないの?〉
ゴーレムの腕から発射されたビーム兵器みたいなすごい攻撃。
ぶっちゃけアレがあれば、ドラゴンでも倒せるんじゃないの? という気がする。
「あれは一日に一回くらいしか撃てないんだよ。撃つときは勝手に連射になっちゃうし、タイミングが重要なんだ」
おっと、そうだったのか……。
まあ、あんなすごい攻撃をぽんぽん撃てるわけがないか。
それができるなら、今ごろラファはこのダンジョンの主になってるか。
うーん。
それじゃどうしようか。
また俺がみんなを抱えて、モンスターの上を浮いていけばいいかな。
と思ってたら、
――ずぞぞぞぞぞぞ。
なにかが這い回るような音が聞こえてきた。
――ずぞぞぞぞぞぞ。
――ずぞぞぞぞぞぞぞぞ。
――ずぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞ!
音はどんどん大きくなって、しかも増えていってる。
なんか嫌な予感がしますねえ……。
「大変です! ケイヴ・キャタピラーとヴァイン・キャタピラーとアーマー・ノンアーマー、じゃなくてノンアーマー・バグ、じゃなくて、ああもう! とにかく芋虫たちがこっちに向かってきます!」
やっぱりね!
あとその名前、改名したほうがいいよね!
絶海の孤島ダンジョンを攻略中。
目的は、ドラゴンにさらわれたエルフのクラクラの救出だ。
俺以外のメンバーは三人。
人犬族のロロコ。
ドワーフ嬢のアルメル。
それに、途中で出会ったゴブリン娘のラファ。
ラファはクラクラがいると思われる「ドラゴンの巣」までの道を知っている。
なので道案内を頼んだのだった。
現在、俺たちはひたすら洞窟を進行中。
前にさまよっていた大洞窟ダンジョンとそんなに変わらない感じがするな。
違うのは、妙に湿っぽいというか、水っぽいところ。
ラファによると、
「ここはもうリリアンシア海の真下だからね。海水が落ちてきてるんだよ」
とのこと。
言われてみれば、潮っぽい臭いがするな。
「ところでさ、リビタンだっけ?」
〈ん? ああ、なんだ〉
「その、ガションガションいうのどうにかならない? モンスターに聞かれて危険だと思うよ?」
あー……。
そりゃそうだよな。
俺自身は常に聞いてるのでほとんど気にならなくなってた。
全身鎧の俺は、動くたびに金属がぶつかる音が鳴り響くのだ。
アルメルに調整してもらったので、普通の鎧よりかなり静かではあるんだけど。
それでも洞窟内だと反響してかなり大きく聞こえる。
ラファにはまだ、俺がリビングアーマーだと言っていなかった。
ラファは俺が普通の人間だと思っている。
だから「脱げば?」という気持ちにもなるだろうな。
〈えーと、なんていうか説明が難しいんだが……ラファのその腕みたいなもんだって思ってもらえるとありがたい〉
俺はそう言ってラファの左腕を指差す。
彼女の左腕は、肩から先が義手になっている。
アルメルによれば、オリハルコン製のゴーレムの腕らしい。
それがどういう理屈で彼女の身体に接続しているのかはわからないけど。
彼女はそれを自分の腕のように扱っている。
しかし腕は彼女の皮膚と結合していて、取り外せるようにはなっていない。
俺の身体も、まあそんなようなものだろう。
本体は鎧ではなく霊体なんだけど。
霊体だけで活動できるわけではない。
「なるほどねー。じゃあしょうがないか」
俺の言葉に納得してくれたらしく、ラファは頷いた。
よかった。
でもそのうちちゃんとリビングアーマーだってことは説明したほうがいいかもな。
「止まって」
そんなことを考えていると、ラファが言ってきた。
道がそこで途切れていて、その先は広い空間になっているようだった。
その広い空間に通じる穴から外を覗いてから、ラファは呟く。
「どうしたの」
「モンスターがうじゃうじゃいる」
ロロコの言葉に答えるラファ。
うへえ、マジかよ。
いっぱい、とか、たくさん、とかじゃなくてうじゃうじゃっていうのが嫌な感じ。
「なんのモンスターですか?」
「芋虫と芋虫と芋虫だね」
アルメルの問いにはそう答える。
〈それってつまりヴァイン・キャタピラーがたくさんいるってことじゃないのか?〉
ちょっと前に遭遇した、植物の根が芋虫に擬態したモンスターだ。
しかしそういうことではないらしい。
「ヴァイン・キャタピラーもいるよ。でも、ケイヴ・キャタピラーとノンアーマー・アーマーバグもいるんだ」
え、なんだって?
「うわ、ほんとですね」
ラファの横から外を覗き込んで、アルメルが言ってくる。
「ケイヴ・キャタピラーは、ヴァイン・キャタピラーが外見を真似た、本物の芋虫のモンスターです。ノンアーマー・アーマー・バグはアーマー・バグの亜種で、かたい殻に覆われていないものです。外見は似ていますが、芋虫とは違いますね」
そういや、前にレッサー・アーマー・バグってのと遭遇したな。
一時期あれの殻にはお世話になった……。
あれのでかいやつがアーマー・バグ。
その殻なしがノンアーマー・アーマー・バグってことか。
それプラスとマイナス相殺して、ただのバグでいいんじゃねえの……?
まあともかく、その三種類の芋虫っぽいモンスターがこの先にいるってわけね。
〈まあ、いるのはわかったけど、それ、またラファのさっきの攻撃で退治できるんじゃないの?〉
ゴーレムの腕から発射されたビーム兵器みたいなすごい攻撃。
ぶっちゃけアレがあれば、ドラゴンでも倒せるんじゃないの? という気がする。
「あれは一日に一回くらいしか撃てないんだよ。撃つときは勝手に連射になっちゃうし、タイミングが重要なんだ」
おっと、そうだったのか……。
まあ、あんなすごい攻撃をぽんぽん撃てるわけがないか。
それができるなら、今ごろラファはこのダンジョンの主になってるか。
うーん。
それじゃどうしようか。
また俺がみんなを抱えて、モンスターの上を浮いていけばいいかな。
と思ってたら、
――ずぞぞぞぞぞぞ。
なにかが這い回るような音が聞こえてきた。
――ずぞぞぞぞぞぞ。
――ずぞぞぞぞぞぞぞぞ。
――ずぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞ!
音はどんどん大きくなって、しかも増えていってる。
なんか嫌な予感がしますねえ……。
「大変です! ケイヴ・キャタピラーとヴァイン・キャタピラーとアーマー・ノンアーマー、じゃなくてノンアーマー・バグ、じゃなくて、ああもう! とにかく芋虫たちがこっちに向かってきます!」
やっぱりね!
あとその名前、改名したほうがいいよね!
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