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第3章 絶海の孤島ダンジョン編

87 この世界にはゴブリン娘がいる!(嬉しい)

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 どうも、リビングアーマの俺です。
 人犬族のロロコとドワーフ嬢のアルメルと一緒に絶海の孤島ダンジョンに挑戦中。

 その理由はドラゴンにさらわれたエルフのクラクラを助けるためなんだけど。
 そっこー道を踏み外して迷走中。

 穴に落っこちて各種モンスターに襲われて、散々な目に遭ってる。

 そこへ現れた謎の光と謎の声。

 光……っていうかなんか、ビーム?
 そんな感じのすごいやつがモンスターを一掃してくれた。

 そして俺たちを呼ぶ声。

「もう大丈夫。こっちに来なよ」

 うーん。
 罠の可能性もある。
 けど、そんなの疑っててもしょうがない。

 俺は両腕にロロコとアルメルを抱えたまま、声が聞こえたほうに飛んでいく。

 俺たちが落ちてきた穴の底からは、いくつか道が伸びているらしい。
 その中の一つから声は聞こえてきていた。

「こっちこっち」

 そんな声に導かれていく。

「冒険者かな? こんなところに人間が来るなんて珍しいね」

 とそんなことを言ってくるのは……うぉ!?

 俺は思わず身構えてしまう。
 ゴブリンじゃねえか!

 ついさっきまでモンスターと十把一絡げに俺たちも狩ろうとしてた緑色のやつら。
 それと全く同じ外見のやつがそこにいた。

 ……いや、よく見るとちょっと違うな。

 サイズは同じくらいで、小さな子供くらい。ロロコより小さい。
 緑色の肌なのも同じ。
 しかし、その顔や身体の作りは人間に近かった。

 それと、性別が明らかに違う。
 さっきのはオスだったけど、そこにいたのはメスだ。
 ……っていうか、女の子って言ったほうが良さそうな見た目。

〈君はゴブリンなのか?〉

 思わずそう尋ねた俺に、その女の子は笑いながら答える。

「正真正銘、ゴブリンだよ! まーちょっとだけ人間の血が混じってるらしいけどね」

 なるほど、それでちょっと人間っぽさがあるのか。
 そういや喋り方もかなり聞き取りやすい発音だな。

「あたしはンドゥラファシーヌ」

 え? なんて?

「だから、ンドゥラファシーヌ」

 んどらふ……うん、むり。
 ごめん。

 この世界に転生して、いくつも発音しにくい名前に出会ってきたけど。
 今回はレベルが違う。

 憶えられる気がしない。

「あーそっか。人間には発音しにくいのか。じゃーラファでいいよ」

 助かった。
 それなら憶えられる。

〈じゃあ改めてラファ。助けてくれてありがとう。俺はリビタンだ〉
「ロロコ」
「私はアルメルです」

「よろしく! 人間と人犬族とドワーフ? 面白い組み合わせのパーティだね」

 ラファは俺を人間だと思っている。
 まあリビングアーマーは普通は喋らないらしいしな。

「んで? こんなところでなにしてるの? 絶海の孤島ダンジョンに挑む冒険者も、ここにはあまり来ないはずなのに」

 ラファに聞かれ、俺はここまでの経緯を簡単に話す。
 ドラゴンが復活し、仲間のエルフを拐っていったこと。
 そのドラゴンを追ってフリエルノーラ国まで来たこと。
 ダンジョンに入ろうとしたら、入り口の館の床が抜けたこと。
 そこからひたすら落ちて、ここまで来てしまったこと。

「へー、あそこってドラゴンの巣だったんだ」

 ラファは納得したように頷く。

〈島に行ったことがあるみたいな言い方だね〉

「うん、あるよ」

 マジで!?

「けっこう大変だけどね。食料が豊富だから行く価値はあるんだ」

「で、でしたら、案内とかお願いしても……?」

 問うアルメルに、ラファは軽く頷いた。

「いいよー」

 おいおい、いいのかよ。
 こんなに簡単に案内役が現れてくれて。
 まあ助かるけどさ。

 と、そこでロロコがラファの左腕を指差して言った。

「それはなに?」

 そう――。
 ひとまずスルーしてたけど、ずっとそうしているわけにはいかなかった。

 たぶん、それが俺たちを助けてくれたあのビームの発生源なんだろう。

 ラファはロロコよりも小さい子供みたいな体格なんだけど。
 左肩の付け根から先が異様に巨大だった。

 明らかに人工物っぽい。
 けど、ただの機械ってわけでもないみたい。
 金属のような石のような、不思議な義手を、ラファは身につけているのだった。
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