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第2章 バリガンガルド編
EX13 商人と秘書と保護国管理官の話
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「エド様」
森の中を歩いていたエド・チェインハルトの横にクーネアが現れた。
まるで虚空から突然湧いて出たような不自然な出現だった。
この世界には転移魔法などというものは存在しない。
にもかかわらず、彼女の出現は、そういった魔法を使ったとしか思えないものだった。
しかし、エドはクーネアの出現に驚くことなく答える。
「どうだった、首尾は?」
「はい、滞りなく」
クーネアは眼鏡を持ち上げながら頷く。
「フリエルノーラ国は、ガレンシア公国との仲介をチェインハルト商会に委託することに同意いたしました。魔鉱石の採掘事業についても商会主導で行えます」
「ふむ、素晴らしい」
エドはパンと手を打ち合わせる。
「クーネア。君のおかげで商会は信じられないペースで発展している。有能な部下というのは何者にも変えがたいものだね」
「恐縮です」
エドの褒め言葉にも、表情を緩ませることなく頭を下げるクーネア。
「しかしエド様の遠大な計画を思えば、まだまだ物足りません」
「焦りは禁物だよ、クーネア」
エドは苦笑する。
「なにしろ規模は大きく、同時に緻密さも要求される。『魔王復活』という事業のためには失敗は許されない。急ぐことより、失敗の芽を潰すことを優先せねば。この輩のようなね」
そう言って、エドは足元に倒れている男を軽く蹴る。
「うぎっ!」
その男――ガレンシア公国保護国管理官ギルバートは悲鳴を上げた。
「な、なんなんですか貴方がたは!? 私をこのような目に遭わせて、公国が黙っていると思いますか? 公国の背後にはヴォルフォニア帝国もいるのですよ? 帝国と事を構えれば、いかな大商会といえど……ぎゃ!」
ふたたび蹴りつけられ悲鳴を上げるギルバート。
「馬鹿な方だ……帝国が貴方のような馬鹿一人を気にかけるわけがないでしょう。有能な人材ならまだしも、私欲で姫を手に入れようとする色ボケなど」
「どう排除しようかと考えておりましたが、ちょうどよかったですね。まさかドラゴンが吹き飛ばしてくれるとは」
クーネアの言葉に頷き、エドはギルバートの襟首を掴んで起こす。
「ええ……行方不明、ということで誰も気にしないでしょう」
「ぐっ……わ、私をどうするつもりだ!」
「死んでいただきます。と言っても直接手を下すのは、私は好きではないのでね」
そう告げると、エドはいつもはめている手袋を脱いで、右手のひらにある『なにか』をギルバートに見せた。
「な!? なんだ、それは……それは……あ、が、ぐ、うぉおおおおおおお!」
その『なにか』を見るなり、ギルバートは恐怖に顔を痙攣らせる。
目を血走らせ、頭を振り回し――
――やがて彼は泡を吹いて絶命した。
エドは手袋をはめなおすと、何事もなかったように歩き出す。
「次の用事はなんだったかな」
「はい。ヴォルフォニア帝国の騎士団長ガイアン様と面会の予定です」
そんな会話を交わしながら歩いていく二人。
次の瞬間。
その姿はかき消え、森には樹々のざわめきと動物たちの鳴き声だけが残った。
森の中を歩いていたエド・チェインハルトの横にクーネアが現れた。
まるで虚空から突然湧いて出たような不自然な出現だった。
この世界には転移魔法などというものは存在しない。
にもかかわらず、彼女の出現は、そういった魔法を使ったとしか思えないものだった。
しかし、エドはクーネアの出現に驚くことなく答える。
「どうだった、首尾は?」
「はい、滞りなく」
クーネアは眼鏡を持ち上げながら頷く。
「フリエルノーラ国は、ガレンシア公国との仲介をチェインハルト商会に委託することに同意いたしました。魔鉱石の採掘事業についても商会主導で行えます」
「ふむ、素晴らしい」
エドはパンと手を打ち合わせる。
「クーネア。君のおかげで商会は信じられないペースで発展している。有能な部下というのは何者にも変えがたいものだね」
「恐縮です」
エドの褒め言葉にも、表情を緩ませることなく頭を下げるクーネア。
「しかしエド様の遠大な計画を思えば、まだまだ物足りません」
「焦りは禁物だよ、クーネア」
エドは苦笑する。
「なにしろ規模は大きく、同時に緻密さも要求される。『魔王復活』という事業のためには失敗は許されない。急ぐことより、失敗の芽を潰すことを優先せねば。この輩のようなね」
そう言って、エドは足元に倒れている男を軽く蹴る。
「うぎっ!」
その男――ガレンシア公国保護国管理官ギルバートは悲鳴を上げた。
「な、なんなんですか貴方がたは!? 私をこのような目に遭わせて、公国が黙っていると思いますか? 公国の背後にはヴォルフォニア帝国もいるのですよ? 帝国と事を構えれば、いかな大商会といえど……ぎゃ!」
ふたたび蹴りつけられ悲鳴を上げるギルバート。
「馬鹿な方だ……帝国が貴方のような馬鹿一人を気にかけるわけがないでしょう。有能な人材ならまだしも、私欲で姫を手に入れようとする色ボケなど」
「どう排除しようかと考えておりましたが、ちょうどよかったですね。まさかドラゴンが吹き飛ばしてくれるとは」
クーネアの言葉に頷き、エドはギルバートの襟首を掴んで起こす。
「ええ……行方不明、ということで誰も気にしないでしょう」
「ぐっ……わ、私をどうするつもりだ!」
「死んでいただきます。と言っても直接手を下すのは、私は好きではないのでね」
そう告げると、エドはいつもはめている手袋を脱いで、右手のひらにある『なにか』をギルバートに見せた。
「な!? なんだ、それは……それは……あ、が、ぐ、うぉおおおおおおお!」
その『なにか』を見るなり、ギルバートは恐怖に顔を痙攣らせる。
目を血走らせ、頭を振り回し――
――やがて彼は泡を吹いて絶命した。
エドは手袋をはめなおすと、何事もなかったように歩き出す。
「次の用事はなんだったかな」
「はい。ヴォルフォニア帝国の騎士団長ガイアン様と面会の予定です」
そんな会話を交わしながら歩いていく二人。
次の瞬間。
その姿はかき消え、森には樹々のざわめきと動物たちの鳴き声だけが残った。
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