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第2章 バリガンガルド編
78 いざ、エルフの国へ
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どうも、リビングアーマの俺です。
馬車の隣で揺られているのは人犬族のロロコ。
反対の隣はドワーフっ娘のアルメル。
いや、べつに両手に花でモテモテみたいな状況ではないです。
俺が真ん中に座らないと、重さで馬車が傾いちゃうんです。
俺たちはバリガンガルドの街を出て、東へ向かっていた。
エルフのクラクラをさらったドラゴンを追いかける旅である。
ちなみにラッカムさんとは途中で別れた。
ロロコのことを伝えるために人犬族の村に戻ったのだ。
同行したがっていたが、自警団長としての仕事もあるみたいだしな。
しかし――俺はいまだに理解できていない。
〈ドラゴンは確かに東に飛び去ったけど、そのあとべつの方角に向かったかもしれないだろ? 本当に東に向かって大丈夫なのか?〉
出発前に聞いておけよって話だけどね。
まあ、急いでたし。
詳しいことは旅の途中で聞けばいいやと思って放置していた疑問だ。
「それは大丈夫だと思います」
と答えるのはアルメルだ。
〈なんで?〉
「あのドラゴンの巣が東にあるからです」
竜の巣か……。
なんか怖そうだな。
「ヴェルターネックの森の東端にフリエルノーラ国があるでしょう? その先のバンダーガンダー山を越えるとリリアンシア海があって――」
〈待って待って待って!〉
固有名詞のオンパレード!
辛い!
しかしアルメルは不思議そうな顔で首を傾げる。
「どうしました?」
どうやら今の単語は大体一般常識レベルっぽいな。
現代世界で言えば、エベレストとか地中海レベルの知名度なのか?
しかし俺はこの世界の人間じゃないんですー。
〈ええと……俺、めちゃくちゃ田舎の出身なんで、地名とか全然わからないんだ。だから子供に初めて地理を教えるくらいのつもりで話してくれると助かる〉
「私も。この辺りのことは知ってるけど、遠くのことは全然知らない」
とロロコも言う。
アルメルは簡単に頷いた。
ふう……よかった。
「わかりました。では大陸の大雑把な地理から説明しましょう」
おお、助かる!
と言うわけでアルメル先生の大陸地理講座、はじまり~。
「この大陸は、大雑把に言えば南北に長い楕円形をしています。卵を立てた形だと思ってください」
ふむ、なるほど。
「その中央を東西に貫いているのが、ヴェルターネックの森。その地下に広がっているのが世界四大ダンジョンの一つ、大洞窟ダンジョンです」
俺とロロコ、クラクラがさまよい歩いていたダンジョンだな。
その北にライレンシア湖とバリガンガルドの街がある。
「森を隔てて大陸の北半分はほぼヴォルフォニア帝国領ですが、支配下の属国が反乱を起こし不安定な土地が多いです。一方南は小国がたくさんあって戦乱が続いています」
つまり北も南も戦争続きってこと?
実はきな臭い世界だったんだな……。
これまでほとんど洞窟にいたから全然知らなかったぜ。
「いくつか有名な国や都市もありますが、それはまた今度にしましょう。今回はこれから向かう場所について説明します」
とアルメル。
頷く俺とロロコ。
「大陸を東西に貫くヴェルターネックの森。その東の端にあるのが、フリエルノーラ国。エルフの国です」
ああ、それだけなんとなく聞き覚えがあると思ったら、そうか。
クラクラの出身国か。
俺がそう言うと、アルメルは頷いた。
「そうですね。エルフの国は他にもいくつかありますが、昔ながらの樹海生活を送っているのはフリエルノーラの民だけです」
おお!
それはエルフっぽい!
〈それは見てみたいなー〉
「クラクラの国、行きたい」
そう言う俺とロロコに、アルメルは答える。
「安心してください。どちらにしろ通ることになりますから」
お、それはどういうこと?
「ヴェルターネックの森の先には巨大なバンダーガンダー山があります。その向こう側は断崖絶壁で、大陸はそこで終わり。その先にはリリアンシア海が広がっています」
ふむふむ……。
俺は頭の中で必死に地図を描く。
まあつまり、大陸の東側に広がるのがリリアンシア海っていう海なのね。
「そしてリリアンシア海の沖に浮かぶのが、世界四大ダンジョンの一つ、絶海の孤島ダンジョン、別名ドラゴンの巣です」
出た、四大ダンジョン!
「もともとその島自体は普通の島だったらしいんですが、ドラゴンが住処にしたことで魔物が居つくようになり、ダンジョン化したと言われています」
〈ちなみに、そのダンジョン、難易度は大洞窟ダンジョンとどっちが高い?〉
「圧倒的に絶海の孤島ダンジョンが上です。大洞窟ダンジョンは四大ダンジョンの中でも最弱ですよ」
マジかよ……。
まあ、転生して初めて入ったダンジョンが最弱だったのは幸いだろうけど。
「絶海の孤島ダンジョンに入る方法は二つあります」
アルメルは話を続ける。
「一つはバンダーガンダー山に登り、そこから飛んでいく。これはまあ、飛行系モンスターを飼いならしでもしない限り無理ですし、山に登るのも素人では難しいので現実的ではありません」
ふむ。
「もう一つが、フリエルノーラ国にある入り口から地下に降りて、海底を通って孤島まで行く方法です。絶海の孤島ダンジョンに挑む冒険者は大抵、この方法をとります」
ふむふむ。
なるほど。
つまりドラゴンは、おそらく自分の巣である絶海の孤島ダンジョンに向かった。
そこへ行きたい人間は、フリエルノーラ国の入り口を通るしかない、と。
〈じゃあ、まずはフリエラノール国に向かうわけだな〉
「フリエルノーラ国です」
〈フリエレノール〉
「フリエルノーラ」
〈フレエレノール!〉
ああ、もう!
なんだってこの世界の地名は舌噛みそうなのばっかなんだ!
……舌ないけど!
馬車の隣で揺られているのは人犬族のロロコ。
反対の隣はドワーフっ娘のアルメル。
いや、べつに両手に花でモテモテみたいな状況ではないです。
俺が真ん中に座らないと、重さで馬車が傾いちゃうんです。
俺たちはバリガンガルドの街を出て、東へ向かっていた。
エルフのクラクラをさらったドラゴンを追いかける旅である。
ちなみにラッカムさんとは途中で別れた。
ロロコのことを伝えるために人犬族の村に戻ったのだ。
同行したがっていたが、自警団長としての仕事もあるみたいだしな。
しかし――俺はいまだに理解できていない。
〈ドラゴンは確かに東に飛び去ったけど、そのあとべつの方角に向かったかもしれないだろ? 本当に東に向かって大丈夫なのか?〉
出発前に聞いておけよって話だけどね。
まあ、急いでたし。
詳しいことは旅の途中で聞けばいいやと思って放置していた疑問だ。
「それは大丈夫だと思います」
と答えるのはアルメルだ。
〈なんで?〉
「あのドラゴンの巣が東にあるからです」
竜の巣か……。
なんか怖そうだな。
「ヴェルターネックの森の東端にフリエルノーラ国があるでしょう? その先のバンダーガンダー山を越えるとリリアンシア海があって――」
〈待って待って待って!〉
固有名詞のオンパレード!
辛い!
しかしアルメルは不思議そうな顔で首を傾げる。
「どうしました?」
どうやら今の単語は大体一般常識レベルっぽいな。
現代世界で言えば、エベレストとか地中海レベルの知名度なのか?
しかし俺はこの世界の人間じゃないんですー。
〈ええと……俺、めちゃくちゃ田舎の出身なんで、地名とか全然わからないんだ。だから子供に初めて地理を教えるくらいのつもりで話してくれると助かる〉
「私も。この辺りのことは知ってるけど、遠くのことは全然知らない」
とロロコも言う。
アルメルは簡単に頷いた。
ふう……よかった。
「わかりました。では大陸の大雑把な地理から説明しましょう」
おお、助かる!
と言うわけでアルメル先生の大陸地理講座、はじまり~。
「この大陸は、大雑把に言えば南北に長い楕円形をしています。卵を立てた形だと思ってください」
ふむ、なるほど。
「その中央を東西に貫いているのが、ヴェルターネックの森。その地下に広がっているのが世界四大ダンジョンの一つ、大洞窟ダンジョンです」
俺とロロコ、クラクラがさまよい歩いていたダンジョンだな。
その北にライレンシア湖とバリガンガルドの街がある。
「森を隔てて大陸の北半分はほぼヴォルフォニア帝国領ですが、支配下の属国が反乱を起こし不安定な土地が多いです。一方南は小国がたくさんあって戦乱が続いています」
つまり北も南も戦争続きってこと?
実はきな臭い世界だったんだな……。
これまでほとんど洞窟にいたから全然知らなかったぜ。
「いくつか有名な国や都市もありますが、それはまた今度にしましょう。今回はこれから向かう場所について説明します」
とアルメル。
頷く俺とロロコ。
「大陸を東西に貫くヴェルターネックの森。その東の端にあるのが、フリエルノーラ国。エルフの国です」
ああ、それだけなんとなく聞き覚えがあると思ったら、そうか。
クラクラの出身国か。
俺がそう言うと、アルメルは頷いた。
「そうですね。エルフの国は他にもいくつかありますが、昔ながらの樹海生活を送っているのはフリエルノーラの民だけです」
おお!
それはエルフっぽい!
〈それは見てみたいなー〉
「クラクラの国、行きたい」
そう言う俺とロロコに、アルメルは答える。
「安心してください。どちらにしろ通ることになりますから」
お、それはどういうこと?
「ヴェルターネックの森の先には巨大なバンダーガンダー山があります。その向こう側は断崖絶壁で、大陸はそこで終わり。その先にはリリアンシア海が広がっています」
ふむふむ……。
俺は頭の中で必死に地図を描く。
まあつまり、大陸の東側に広がるのがリリアンシア海っていう海なのね。
「そしてリリアンシア海の沖に浮かぶのが、世界四大ダンジョンの一つ、絶海の孤島ダンジョン、別名ドラゴンの巣です」
出た、四大ダンジョン!
「もともとその島自体は普通の島だったらしいんですが、ドラゴンが住処にしたことで魔物が居つくようになり、ダンジョン化したと言われています」
〈ちなみに、そのダンジョン、難易度は大洞窟ダンジョンとどっちが高い?〉
「圧倒的に絶海の孤島ダンジョンが上です。大洞窟ダンジョンは四大ダンジョンの中でも最弱ですよ」
マジかよ……。
まあ、転生して初めて入ったダンジョンが最弱だったのは幸いだろうけど。
「絶海の孤島ダンジョンに入る方法は二つあります」
アルメルは話を続ける。
「一つはバンダーガンダー山に登り、そこから飛んでいく。これはまあ、飛行系モンスターを飼いならしでもしない限り無理ですし、山に登るのも素人では難しいので現実的ではありません」
ふむ。
「もう一つが、フリエルノーラ国にある入り口から地下に降りて、海底を通って孤島まで行く方法です。絶海の孤島ダンジョンに挑む冒険者は大抵、この方法をとります」
ふむふむ。
なるほど。
つまりドラゴンは、おそらく自分の巣である絶海の孤島ダンジョンに向かった。
そこへ行きたい人間は、フリエルノーラ国の入り口を通るしかない、と。
〈じゃあ、まずはフリエラノール国に向かうわけだな〉
「フリエルノーラ国です」
〈フリエレノール〉
「フリエルノーラ」
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ああ、もう!
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