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第2章 バリガンガルド編

66 バラバラⅣ【右脚と自警団長】

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〈――ドラゴンが蘇るってのか?〉

 エドから聞いた話にびっくりして、思わず全パーツでそう言ってしまった。

「ん? なんだ、ドラゴンって」

 バリガンガルドの街を駆けるラッカムが聞いてくる。
 ちなみに、俺は彼に持たれてる状態だ。
 浮いてるところを街の住人に見られたら、びっくりされちゃうからね。

〈いや……なんか、ライレンシア湖のドラゴンが復活するって〉
「誰がそんなことを言っている?」
〈えっと〉

 この人、名前なんだっけ?

〈そうそう。エド・チェインハルトって人が〉
「エド!? あいつ、この街にいるのか?」
〈え、うん。そうみたいだけど……〉

 あれ、ひょっとしてこれ、言ったらダメだったのかな?

「なぜあいつがここに? なにを企んでいる……いや、今はそれどころじゃないか」

 ラッカムはすぐにそう判断した。

「ドラゴンが復活するっていうのは本当なんだな?」
〈たぶん……魔響震も地震も、亀の暴走もそのせいだって〉
「くそっ。それじゃ、こっちに向かってる場合じゃねえな」
〈え、なんで?〉

 いま湖の方には、亀を退治するため大勢の冒険者が集まっている。
 そのメンバーでドラゴンを倒すんじゃないの?

「バカ言うな。倒せるわけがないだろう」
〈そうなの?〉
「ライレンシア湖のドラゴンといえば、七つの街を滅ぼした伝説の竜だ」

 エドもそう言ってるな。

「倒すなら、レベル100超えの冒険者を100人連れてこなけりゃ無理だろうな」

 ちなみにいまの俺のレベルは24。
 まあ、亀を倒した際の魔力でもうちょっと上がってるかもしれないけど。
 100には程遠い。

〈ちなみに、ラッカムさんのレベルは?〉
「俺は冒険者じゃない。まあ、大体60相当らしいが」

 けっこうすごいのだろうが、やはり100には及ばない。

 クラクラと一緒にいる腕パーツで周りの冒険者を見回すけど……。
 そこまで強そうなやつはいないなぁ。
 みんな亀相手にけっこう大変そうだ。
 ドラゴンと対峙するのは無茶ってもんだろう。

「よし、逃げるぞ」

 ラッカムはそう言った。
 そして、周りの人に向かって声をあげる。

「みんな、街の外に出ろ! 遠くに離れるんだ! もっと大きい地震が来るらしい!」

 なるほど……。
 ドラゴンが復活するなんて言ったら、大パニックになる。
 それよりは、地震がまた来るっていう方が、まだみんな落ち着いて避難するだろう。
 地震なら、建物が崩れるかもしれないから街から離れるってのも、理屈に合ってる。

 住民たちは、ラッカムの言葉に従って、門の方へ向かっていく。

 ラッカムの服装を見て、信用してるっぽい。
 自警団の制服なんだろうけど。
 現代日本でいうおまわりさんみたいな扱いなのかね。

 ってあれ?
 ラッカムはみんなとは違う方向に向かいだした。

〈どこに行くんだ?〉
「城だよ。この街の領主に会って、事情を説明した方がいいだろ」
〈なるほど〉

◆◇◆◇◆

 城の周りには人だかりができていた。

〈なんだ?〉
「避難しに来たのに入れないみたいだな」

 城の周りには堀があって、門のところまで橋を渡らなきゃいけないみたいだ。
 で、その橋が跳ね上げられちゃってるので、誰も堀を越えられない。

「城には空き地があるから、住民の避難を受け入れるもんなんだが……」
〈この騒ぎに気付いてないってことは……〉

 ないよなぁ……。
 こんだけ揺れて、住民みんな大騒ぎしてるんだし。

「よし、ちょっと様子を見てみるか」
〈へ?〉
「リビタン、あんた空飛べるんだろ? 裏から侵入だ」

 マジかよ。
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