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21身分の壁は、厚い(side:レイ)
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「外見のことは置いておいて。俺が優しいかなんて知らないだろ。」
確かに全く関わりのなかった相手に中身を評価されても信じられないだろうが、実際俺はクレアに救われた。
苦しくて、息をすることさえ億劫な学園の中で、クレアだけが、そんな俺に気付いて救ってくれた。
傍から見たら些細なことなんだろうが。
「優しいとかじゃなく、当然のことだろ?お前の周りの人は、お前の気を引くことに必死で、具合が悪いって気付かなかっただけで」
「そんな感じではないだろ。あいつらが平民の俺の心配をするなんて思えない。」
貴族は、村の大人に聞いた通りだった。上から目線で逆らうものは許さず。平民だからと見下して。
一見親切そうなヤツだって、その目には哀れみを含んでいる。
お金が無いなんて可哀想。
勉強もろくにさせて貰えなかったなんて可哀想。
俺は、自分の事を可哀想だなんて思ったことは無いのに。それを言われる度に心は確実にすり減っていく。
「レイ、すまなかった」
悲しげに眉をひそめながら、クレアがポツリと呟く。
「いや、クレアが謝ることではないだろう?」
俺が苦しんでる原因に、クレアは居ない。寧ろ俺を助けてくれたのに謝罪なんて。
ああ、彼も貴族だからか。自分のせいではないが、同じ貴族が俺を傷つけたから、そんな顔をするのか。
綺麗なのは見た目だけじゃないんだ。
勉強にはついていけてるかときかれ、恥をしのんで否と答えると、クレアが教えようかと提案してくる。
「いいのか…?」
「勿論。勉強を教え合うのだって、学生の本分だろ?」
押し付けがましくならないように、態とそんな言い方をしているんだろう。
悪戯っぽく笑う顔から目が離せ無くて「勉強は明日から、放課後一緒にやろう」と言って立ち去るクレアを、ただ見つめることしか出来なかった。
お礼を言っていないことに気がついた俺は慌てて追いかけ、クレアの教室に入る。
そこには第2王子のカイルとその騎士のルースがいた。
身分の高すぎる組み合わせに少したじろぐ。
「それで?俺のお姫様はまた有名人を引っ掛けてきたね?」
クレアよりも先にカイルがこちらに気づく。
俺の姫か。噂は本当だったのか。
「俺の姫って事は、やはりカイル殿下と、め、じゃなくて、クレアは恋人同士なのか?」
女神と言いかけた。危ない。
「ああ、レイとやらは編入生だから知らないのか。俺とクレアは毎日キスをする仲だ。」
「き、キス…!?」
貴族は一般的に身持ちが固く、結婚するまでは同性であってもお互いに肌を見せ合うことすらしないと村で聞いた。
キスをしているとなると、確実に婚約はしているんだろう。クレアも否定しないし、真実な様だ。
胸が締め付けられるように痛む。
「なんで君がそんな顔をしているのかな?」
俺にしか聞こえない声でカイルが言う。
婚約者に懸想されたとなれば、確かに面白くないだろう。
「クレアの事、好きなの?…君には守れないと思うけどね」
「諦めろと言ってるんですか」
「ううん、クレアを手に入れたいのなら、もっと頑張らないと。それこそ死ぬ気でね。生半可な覚悟で、クレアを守れると思うなよ。」
誰にでも分け隔てなく優しいと噂の王子のこんな表情を見る日が来るなんて。
ベビに睨まれたカエルとはこの事か。
威圧感に竦むと、カイルは勝ち誇ったように笑い、クレアの方へ行く。
勝てない。今のままだと、カイルには勝てない。
王子を負かそうとか、公爵家長男を娶りたいとか、そんな大層なこと言える身分ではないのは十分わかっている。
同じ空間で学べること、しかも直接話せることだって奇跡だ。俺は他にやるべきことがあるし。
でも。それでも。
悔しい。
確かに全く関わりのなかった相手に中身を評価されても信じられないだろうが、実際俺はクレアに救われた。
苦しくて、息をすることさえ億劫な学園の中で、クレアだけが、そんな俺に気付いて救ってくれた。
傍から見たら些細なことなんだろうが。
「優しいとかじゃなく、当然のことだろ?お前の周りの人は、お前の気を引くことに必死で、具合が悪いって気付かなかっただけで」
「そんな感じではないだろ。あいつらが平民の俺の心配をするなんて思えない。」
貴族は、村の大人に聞いた通りだった。上から目線で逆らうものは許さず。平民だからと見下して。
一見親切そうなヤツだって、その目には哀れみを含んでいる。
お金が無いなんて可哀想。
勉強もろくにさせて貰えなかったなんて可哀想。
俺は、自分の事を可哀想だなんて思ったことは無いのに。それを言われる度に心は確実にすり減っていく。
「レイ、すまなかった」
悲しげに眉をひそめながら、クレアがポツリと呟く。
「いや、クレアが謝ることではないだろう?」
俺が苦しんでる原因に、クレアは居ない。寧ろ俺を助けてくれたのに謝罪なんて。
ああ、彼も貴族だからか。自分のせいではないが、同じ貴族が俺を傷つけたから、そんな顔をするのか。
綺麗なのは見た目だけじゃないんだ。
勉強にはついていけてるかときかれ、恥をしのんで否と答えると、クレアが教えようかと提案してくる。
「いいのか…?」
「勿論。勉強を教え合うのだって、学生の本分だろ?」
押し付けがましくならないように、態とそんな言い方をしているんだろう。
悪戯っぽく笑う顔から目が離せ無くて「勉強は明日から、放課後一緒にやろう」と言って立ち去るクレアを、ただ見つめることしか出来なかった。
お礼を言っていないことに気がついた俺は慌てて追いかけ、クレアの教室に入る。
そこには第2王子のカイルとその騎士のルースがいた。
身分の高すぎる組み合わせに少したじろぐ。
「それで?俺のお姫様はまた有名人を引っ掛けてきたね?」
クレアよりも先にカイルがこちらに気づく。
俺の姫か。噂は本当だったのか。
「俺の姫って事は、やはりカイル殿下と、め、じゃなくて、クレアは恋人同士なのか?」
女神と言いかけた。危ない。
「ああ、レイとやらは編入生だから知らないのか。俺とクレアは毎日キスをする仲だ。」
「き、キス…!?」
貴族は一般的に身持ちが固く、結婚するまでは同性であってもお互いに肌を見せ合うことすらしないと村で聞いた。
キスをしているとなると、確実に婚約はしているんだろう。クレアも否定しないし、真実な様だ。
胸が締め付けられるように痛む。
「なんで君がそんな顔をしているのかな?」
俺にしか聞こえない声でカイルが言う。
婚約者に懸想されたとなれば、確かに面白くないだろう。
「クレアの事、好きなの?…君には守れないと思うけどね」
「諦めろと言ってるんですか」
「ううん、クレアを手に入れたいのなら、もっと頑張らないと。それこそ死ぬ気でね。生半可な覚悟で、クレアを守れると思うなよ。」
誰にでも分け隔てなく優しいと噂の王子のこんな表情を見る日が来るなんて。
ベビに睨まれたカエルとはこの事か。
威圧感に竦むと、カイルは勝ち誇ったように笑い、クレアの方へ行く。
勝てない。今のままだと、カイルには勝てない。
王子を負かそうとか、公爵家長男を娶りたいとか、そんな大層なこと言える身分ではないのは十分わかっている。
同じ空間で学べること、しかも直接話せることだって奇跡だ。俺は他にやるべきことがあるし。
でも。それでも。
悔しい。
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