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猟犬を生かしてうさぎも残る その12

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総務、防衛と若い官僚たちがSNSでは決して確信が持てないような重要な情報を携え発表し、会議室の中は緊張と高揚感に包まれていました。



次は外務官僚の出番です。

ただ、この時の会議室内の空気は少し白けていました。

SNSや巷での外務省の評判は「ガチスとデンゲルの腰巾着」あるいは腰抜けのとっつあん坊やの溜まり場といったろくなものではありませんでした。



もちろん、ここに来た外務官僚はそうした空気が支配的な省から反逆してここにきている以上、並みの人物ではありません。

しかし、外務省そのものの評価が低かったため、大した情報はないだろうという先入観が会議室の空気にあったことは否定できませんでした。



外務官僚は流ちょうな言葉づかいで報告をします。

「ガチスは現在、ソーラー連邦との覇権争いに勝利すべく周辺諸国全てに活発な外交戦と情報戦を仕掛けています」



「また、情報戦にとどまらず政権掌握のよる間接支配や民意がガチスに傾いていて隙がある場合には軍事オプションも視野に入れた活動を熱心に行っています」



「さらに我がひだまりの国の外交担当に対してもアメとむちによる情報戦の効率化を強め、焦りともとれるようなアプローチで露骨にロビー活動を行うように扇動しています」



「新しい展開としてAIにおけるポイント制による貢献度の評価をさらに綿密に行い、数値化して対象者に発表する一方、評価の極めて低い者達には死刑や思想再教育のための投獄などガチス国内の情報戦従事者に過酷なノルマを課す決定もされたようです」



「結論を申しますとガチスは世界の覇権を握る覚悟を決め、情報戦を戦争における前哨戦とみなして総力を挙げて取り組む決意と、その先にあるソーラー連邦との戦争を覚悟した布陣をとっていると見てよいかと思います」



発表が終わった後、会議室は沈黙に包まれました。

お忍びとはいえアイドル研究会という名目で集まったひだまりの民たちとガチスの空気の違いにあっ気に取られたようです。



そして、あまり期待していなかった外務官僚に対して申し訳ないという後ろめたい気持ちも多少はあったかもしれません。

いずれにせよ、この後の会議はこの外務官僚の話を元に議論されました。

その様子は次回にお伝えします。
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