上 下
444 / 639

疑念と対話と

しおりを挟む
若い6人組にとってテレスの言葉は新鮮かつ強力でした。

それは今までの彼らの経験や情報から得た結論や感情とはかけ離れた話だったからです。



では、6人組がテレスの話を信じ、鵜呑みにしたかというとそうではありませんでした。



6人組は一通りテレスの話を聞いた後、相談することにしました。

この段階でデンゲル人に対する認識に多大な変化があったのは6人に共通する意識でした。



とはいえ、彼と彼の言葉を信じ、感銘を受けた人物はこの中にはいませんでした。

もし、表現として近い言葉をさがすなら「半信半疑」ですがもっと正確な言葉を加えるなら空白、あるいは保留というのがふさわしい感じでした。



以前も紹介したようにSNSでの圧倒的かつ一方的な情報、そして6人組自身が見聞きして経験した恐怖の体験を考えると、いきなり信じるというのは無理な話で、むしろトラブルなく対話が出来たということが上出来の部類と言えました。



彼らの心中を見ると、サンはテレスに僅かですが好印象を持ちました。

お嬢さん気質で生き物に接する機会が多い彼女は直感的にテレスを見たのかもしれません。



ムーンとマーズは話に意外性を感じたものの、基本的には心境に変化はなかったようです。



ゴカンとオーベルはさらに情報が欲しいと考えていました。

ただデンゲルに対してより多く悪意を持っていたオーベルは疑いの念を強く保った状態でした。



バグダはよくわかりません。

これはバグダが分かってないのかバグダを皆が理解していないのか、どちらかそれとも両方なのか、それも含めて分かりませんでした。



こうして意見をすり合わせた結果、疑念を持ちつつも情報を引き出しテレスやデンゲルについて知ることが大事であるという結論に達しました。



それと同時に6人組に関するプライベートな情報や知られてはまずいという情報があることを互いが認識しテレスやヒキコモリーヌにうかつに話さない事。



際どいと思われる話題が出た場合は基本最も警戒心が強く慎重なオーベルが対応することなどを決めました。



彼ら6人組はここでも意見の違いやデンゲル人テレスに対する評価や信頼の度合いも異なっていましたが、それが互いの関係を損なうことはありませんでした。



なぜなら、表面上は長年の友情の賜物といえるものが原因のようでしたが、何よりお互いが運命共同体であるという強力な絆、悪意で表現するなら足かせがあったので決してチームワークは乱れなかったのです。



人は必死になると超人的なパワーや信じられない能力を発揮する、彼らはそうした環境に放り込まれたのです。
しおりを挟む

処理中です...