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妖精の森編

17. 旅立ち。

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 マーツとの待ち合わせの時刻にマーツは現れなかった。少しだけ長めに待ってみたけど、どうやら彼女は来ないらしい。

「やっぱり止められたかな」

 ワタシは少しだけ、肩を落とすとヤマブキはそれを見て慰めようと足に擦り寄る。

「ヤマブキありがとう」
「きっと遅れてやって来るであろう」

 ヤマブキの言っている様にもしかしたら事情ができて遅れてから追ってくるかもしれないって思うと少しだけ気が晴れた。

「そうだね…後から来るかもしれないね」

 ワタシは妖精の村で知り得た情報からこの森の南西に人間が乗り捨てたボートがあるらしい。
 それを使って川を渡り、隣の陸に降りれば新たな出会いがあるかもしれない。

 予備で手に入れた薬草類を暇つぶしがてらに生成しておいて良かったよ…ポーション類を大量に作っておけば、いざって時に役に立つよね♪

 それから村を出て言われた通りに南西に向かってゆっくりと歩いていくと水草が浮かぶ沼地が見えて来た。

「アレじゃない?」
「ボートが見えましたぞ!」

 草ボーボーな状態の中にカモフラージュされているのを見つけた。しかし、何年も乗り捨てられいるけど……コレって動くよね?

「動くとイイなぁ……」
「動かし方は知っているのですかな?」

 ボートなんて動かしたことないよ…免許持ってないし、前世でボートなんて……あれ?

「手コキ用ボートなのね?」

 エンジン付きのボートと思っていたから拍子抜けしてしまった。

「ヤマブキ…コレならイケる!」
「大変そうだが、一人でできるモノなのですか?」

 確かに手コキ用のボートも乗ったことない。
よくカップルが湖畔で貸しボートで優雅に乗っているイメージだったけど、彼女いないワタシは乗る機会なんて……ははは。

「きっと大丈夫だよ。やり方は知っているし!」

 ボートに手をかけた時……後ろからマーツの声で呼ばれた気がして振り返るとそこに居たのは人間だった。

「人間!?妖精しかいない森に人間?」
「私です?」

 見た目は明るい赤い髪のさらさらロングに青い瞳は確かにマーツだけど、背中の羽根や小さな体からして別人……いや、別種族になってるじゃん!?

「え……と…マーツ!?」
「そうなのです!準備に時間かけちゃったのです」

 準備ってレベルじゃない!って思っていると人間の姿になっているマーツが説明を始めた。

「長老に話に行ったら人間の国に行くならって」

 マーツは長老から【人間になる薬】をもらって使ったらしい……【妖精になる薬】を使うと元に戻るらしい。

「これなら人間に怯えずに動き回れます♪」
「マーツが来てくれて嬉しいよ♪」

 二人はボートに乗り込むと協力してオールを漕ぎながら隣の陸地を目指して出発した。
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