セリと王子

田中ボサ

文字の大きさ
上 下
30 / 40

30 交流会

しおりを挟む

  ミーナリア様の留学継続、ギルバート殿下たちの帰国。

いやあ、いいことばかりだ。

このまま穏やかに生きたいもんですな。



なんてのんびり考えていた。



「あの・・・」

声をかけられて振り向くと、顔は見たことがある女子。

確か平民の子だ。

「何でしょう?」

「いきなり声をかけてごめんなさい。でも、あの、どうしてもお願いがあって・・・」

ぬ~、何だろう。

ま、聞くだけ聞いてみようか。

「聞けるかどうかは保証できませんが、聞くだけならいいですよ」

「よかった、あの、ミーナリア様の事なんです」

「ミーナリア様?」

勉強もマナーもがんばっているし、迷惑はかけてないはず・・・・。

「私たち、も、ミーナリア様みたいに放課後に勉強やマナーを学びたいんです」

「私たち?」

「はい」

そういって指さした先には結構な人数の女子、あれ?男子もいる。

「私たち男爵、子爵、地方豪族、平民とかなんです。

頑張って学園に入りましたが、勉強やマナーがどうしても難しくて・・・

そんな時にミーナリア様がいらっしゃって、皆様と一緒に勉強やマナーを学ばれて、

それで、だんだん上達されてきてて、うらやましいなって。

図々しいのですが、私たちにも教えてもらえないかと・・・」

なるほど。

向上心があるのは良いことだ。

これは相談してもOKだな。

「わかりました。何とかできないか聞いてみますね」



やがて放課後は学びたいものが集い、勉強やマナーなどを学ぶことができるようになった。

【貴婦人会】の皆様も喜んで教えてくれるし、ミーナリア様は同じレベルくらいの子たちと競い合うように、でも楽しそうに学んでいる。

たま~に、殿下や側近候補皆様も来たりするので、珍獣に会えたように皆喜んでいる。

学園長もその交流を大変喜んでくれて、午後の授業時間を短めに設定してくれたほどだ。



お、なんかざわついてますな?

珍獣がきてんのかな?

「誰が珍獣だ」

「げ」

「いい度胸だな、俺を珍獣扱いとは・・・」

出た、悪魔。

なんで心の声が分かるんだよ、人の心を読むな、悪魔の特殊能力か?

「普通にお前を見てればわかるよ」

解せぬ、完璧な無表情のはず・・・。

「まぁ、学園長も喜んでいるし、俺もよい人材を的確に捕まえることができるし、セリの提案に乗っかってよかったよ」

あーそーですか、って人を捕まえるとかいうな。

で、何しに来たんだ?

「お前の回収」

なーんーでーだーーーーーー。

交流会にかこつけて、生徒会室へ行くのやめようとしてたのに~~。

がっくりうなだれる私を悪魔は引きずっていった・・・ちくしょう。



何とか悪魔の目をかいくぐり、交流会に参加したりして、楽しんでいる。

本日は刺繍だ。

悪魔からの指令で、生徒会役員全員に刺繍をせねばならなくなった。

生徒会のエンブレムと、その人の特徴が分かるもの、だって。

あ~~~めんどくさい。

「あら?黒い羽根?」

そうです、悪魔の羽ですよ、ぴったりでしょ?

「第2王子殿下ってさわやかな白銀とかのイメージだけど?」

全然さわやかではないですな、やつは。

「あら、でも鎧が黒でしたわ」

さすが、悪魔の鎧。



「クロード様は眼鏡ね」

眼鏡が本体みたいなもんだろう。



「カイト様は・・紫のバラ?」

「お似合いだわ~~、紫のバラだなんて、禁断の香りがしますわ」

禁断のかおり?しないけどな・・・。

なんだろう?



「セリーヌ様、これは?」

「馬が鍛錬する道具だそうです」

「馬?」

「ゴウゼル様が馬にできるなら自分もって、今一緒に鍛錬してるそうなので」

淑女の皆様、残念そうに首を横に振っている。



ミーナリア様はお姉さまと公爵夫妻にそれぞれ刺繍したものを贈っている。

公爵は額に入れて飾っているそうだ、と公爵夫人からの手紙に書いてあったそうな。

良い親ばかだな。



次の作品は、名前を知らない人に渡したいそうだ。

名前を知らない人?怪しくないか?

「以前図書館で上の本を取ろうとして落としてしまったの。

その時にかばっていただいて、それからも困っているときに偶然助けていただいて・・」

何その怪しい人。

困っているときにいつもいるって、見張られてない?

変態か?



そっとマリアンヌ様達が私の袖を引いた。

「あそこそーっと見て」

言われたとおりにそーっと見ると、あれ?フリッツ??

なんで柱の陰に潜んでるんだ?

「ああやって、ミーナリア様のピンチに駆けつけよう待機されているの」

「いつもですか?」

「そうなの、姫様を守る騎士みたいで、いいわねぇ~」

って、いいのそれで?やってること変態だよ?

なんでみんなそんなに楽しそうなんだか。

まぁ、害がないならいいか。

フリッツよ、心置きなくミーナ様をおまもりするがよい。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

処理中です...