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30 交流会
しおりを挟むミーナリア様の留学継続、ギルバート殿下たちの帰国。
いやあ、いいことばかりだ。
このまま穏やかに生きたいもんですな。
なんてのんびり考えていた。
「あの・・・」
声をかけられて振り向くと、顔は見たことがある女子。
確か平民の子だ。
「何でしょう?」
「いきなり声をかけてごめんなさい。でも、あの、どうしてもお願いがあって・・・」
ぬ~、何だろう。
ま、聞くだけ聞いてみようか。
「聞けるかどうかは保証できませんが、聞くだけならいいですよ」
「よかった、あの、ミーナリア様の事なんです」
「ミーナリア様?」
勉強もマナーもがんばっているし、迷惑はかけてないはず・・・・。
「私たち、も、ミーナリア様みたいに放課後に勉強やマナーを学びたいんです」
「私たち?」
「はい」
そういって指さした先には結構な人数の女子、あれ?男子もいる。
「私たち男爵、子爵、地方豪族、平民とかなんです。
頑張って学園に入りましたが、勉強やマナーがどうしても難しくて・・・
そんな時にミーナリア様がいらっしゃって、皆様と一緒に勉強やマナーを学ばれて、
それで、だんだん上達されてきてて、うらやましいなって。
図々しいのですが、私たちにも教えてもらえないかと・・・」
なるほど。
向上心があるのは良いことだ。
これは相談してもOKだな。
「わかりました。何とかできないか聞いてみますね」
やがて放課後は学びたいものが集い、勉強やマナーなどを学ぶことができるようになった。
【貴婦人会】の皆様も喜んで教えてくれるし、ミーナリア様は同じレベルくらいの子たちと競い合うように、でも楽しそうに学んでいる。
たま~に、殿下や側近候補皆様も来たりするので、珍獣に会えたように皆喜んでいる。
学園長もその交流を大変喜んでくれて、午後の授業時間を短めに設定してくれたほどだ。
お、なんかざわついてますな?
珍獣がきてんのかな?
「誰が珍獣だ」
「げ」
「いい度胸だな、俺を珍獣扱いとは・・・」
出た、悪魔。
なんで心の声が分かるんだよ、人の心を読むな、悪魔の特殊能力か?
「普通にお前を見てればわかるよ」
解せぬ、完璧な無表情のはず・・・。
「まぁ、学園長も喜んでいるし、俺もよい人材を的確に捕まえることができるし、セリの提案に乗っかってよかったよ」
あーそーですか、って人を捕まえるとかいうな。
で、何しに来たんだ?
「お前の回収」
なーんーでーだーーーーーー。
交流会にかこつけて、生徒会室へ行くのやめようとしてたのに~~。
がっくりうなだれる私を悪魔は引きずっていった・・・ちくしょう。
何とか悪魔の目をかいくぐり、交流会に参加したりして、楽しんでいる。
本日は刺繍だ。
悪魔からの指令で、生徒会役員全員に刺繍をせねばならなくなった。
生徒会のエンブレムと、その人の特徴が分かるもの、だって。
あ~~~めんどくさい。
「あら?黒い羽根?」
そうです、悪魔の羽ですよ、ぴったりでしょ?
「第2王子殿下ってさわやかな白銀とかのイメージだけど?」
全然さわやかではないですな、やつは。
「あら、でも鎧が黒でしたわ」
さすが、悪魔の鎧。
「クロード様は眼鏡ね」
眼鏡が本体みたいなもんだろう。
「カイト様は・・紫のバラ?」
「お似合いだわ~~、紫のバラだなんて、禁断の香りがしますわ」
禁断のかおり?しないけどな・・・。
なんだろう?
「セリーヌ様、これは?」
「馬が鍛錬する道具だそうです」
「馬?」
「ゴウゼル様が馬にできるなら自分もって、今一緒に鍛錬してるそうなので」
淑女の皆様、残念そうに首を横に振っている。
ミーナリア様はお姉さまと公爵夫妻にそれぞれ刺繍したものを贈っている。
公爵は額に入れて飾っているそうだ、と公爵夫人からの手紙に書いてあったそうな。
良い親ばかだな。
次の作品は、名前を知らない人に渡したいそうだ。
名前を知らない人?怪しくないか?
「以前図書館で上の本を取ろうとして落としてしまったの。
その時にかばっていただいて、それからも困っているときに偶然助けていただいて・・」
何その怪しい人。
困っているときにいつもいるって、見張られてない?
変態か?
そっとマリアンヌ様達が私の袖を引いた。
「あそこそーっと見て」
言われたとおりにそーっと見ると、あれ?フリッツ??
なんで柱の陰に潜んでるんだ?
「ああやって、ミーナリア様のピンチに駆けつけよう待機されているの」
「いつもですか?」
「そうなの、姫様を守る騎士みたいで、いいわねぇ~」
って、いいのそれで?やってること変態だよ?
なんでみんなそんなに楽しそうなんだか。
まぁ、害がないならいいか。
フリッツよ、心置きなくミーナ様をおまもりするがよい。
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