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11 私のチョコケーキ
しおりを挟むゴウゼル様のせいで屍と化した私達。
「大丈夫か?早く起き上がれよ」
大丈夫なわけあるか。
どんだけ護身術をやらせたと思ってるんだ。
お前と一緒にす、る、な!
全員がもはや立ち上がれないとようやく分かったのか、ゴウゼル様が解散を宣言してくれた。
誰も動かない様子に改めて驚いたゴウゼル様は私達全員を医務室に運んでくれた。
もちろん両手に一人ずつ、まるで荷物のように運んでいく。
ありがたいんだよ、いいんだけどさ、せめて女性は横抱きにしてやれよ。
ちょっとステキだと思われるチャンスだと思うんだけど・・・。
暫く休んでいるとようやく体が動かせるようになってきた。
あの脳筋野郎め。
本当に容赦ないつーか、自分を基準にすんな。
しかし、私にはご褒美のチョコケーキワンホールがまっている。
あ~よだれが出そうだ。
いつ来るんだろうなぁ。
あれ?いつもらえるか聞いてなかった。
もしかして今日じゃないかもしれないな。
王宮に行ったときになるのかな?
なんてことを考えていたら、ノックがあった。
「セリ、生きてるか?」
苦笑しながら入ってきたのは王子殿下と、クロード様、カイト様。
「ゴウゼルの奴、本当に自分基準だな」
全くだ。
「他の4人はまだ起き上がることもできないぞ、セリはまだましだな」
そうなのか?側にいるだけで筋肉が鍛えられるのだろうか。
まさか脳筋を見るだけで筋力が付くとか?
「セリ、お前それは違うぞ、いるだけで筋肉は付かん」
腹黒殿下め、なんでいつも考えてることがわかるんだよ。
「セリはなんだかんだ言って生徒会、王宮と結構動いてるからな、勝手に鍛錬になったんだろう」
クロード様が解説せいてくれた。
そうか、他の貴族だと学園では騎士以外あんまり体使うことないしね。
自宅には使用人がいるし、往復馬車だし、我が家のようにお使いに行かされたり、ちょっとした手伝いなんてするわけないもんね。
うん、納得。
うんうん納得していると、カイト様が何か箱をテーブルに置いてくれた。
まさか、これは?
期待して腹黒殿下を見ると、なんでか苦笑している。
「うん、ご期待通りのご褒美だよ。思ったより出来が良かったし、頑張ってくれたからな」
やっほーい、思わず両手を上にあげる
そのまま箱に近寄りそーっと開けると、チョコレートケーキ!
素晴らしい、ものすごく美しい、今まで見た中で一番つややかなケーキだ。
上の飾りも芸術的!
あぁ~幸せってここにあったんだ。
なんか目が熱くなってきた。
神様に感謝の祈りを!
「あいつ大丈夫か?
「なんか祈り始めたぞ?」
「そんなにつらかったんか?まぁそうだろうけど」
3人のひそひそ声など耳に入らない。
「これ持ち帰っていいんですよね?」
「あ、あぁ」
「それでは私はこれで失礼いたしますぅ」
誰にもやらん、このチョコケーキは!
とられる前に確保だ!
「誰もとらないから」
いや、信用できない。
だってあんなに輝いているんだよ?
私は箱をしっかりと抱きかかえる。
「それではごきげんよう」
そう言ってそそくさと部屋を後にする。
そこからは誰にも会わないように、慎重に通路を通って馬車まで歩く。
人の気配がすればそっと柱の陰に隠れ、後ろの気配を気にしながら箱を揺らさないように運ぶ。
途中で誰かに声をかけられたような気もするが、無視だ。
とにかく無事に家に帰って食べるのが本日の課題なのだ。
ん?なんか後ろがうるさいが知らん。
なんだか後ろが騒がしかったが私はとにかく箱を揺らさないように帰った。
無事に家に戻り、仕方がないのでほんのちょっぴり父母におすそ分け。
しっかりとチョコレートケーキを堪能した。
あの悪魔の側にいて唯一良かったとほんの少しだけ思えたのだった。
ほんの少しだけど。
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