4 / 40
4 悪魔に負けた
しおりを挟むイヤイヤながら王宮に行くと、馬車を降りて連れてこられた執務室前、
「セリーヌ嬢」
でたぁ~。
「だ、だ、第2王子殿下・・・・お久しぶりでございますぅ。それではごきげんよう」
そのまま後ろに下がって逃げようとしたのだが、首をガッと掴まれた。
周囲から見ると王子が少女の肩に手を置いているように見える、そんな角度だが、実際には少し上、首をがっつり捕まえている。
ちょっ、ギリギリ締めあげてない?
「何故逃げる?」
低い声は周囲には聞こえていないようだ。
「めめめっそうもありません」
「皆に紹介する、ついてこい」
え~やだよぅ
「でも・・・」
「皆で学ぶのだから紹介は必要だろう」
王子はキラキラ笑顔で近くの従者になんか伝言をして、ついてこい、と言った。
私の足取りは重い。
王子の執務室についたようだ。
そのまま部屋に入る。
あれ?だれもいない。
「早く扉を閉めろ」
「でも・・・」
「いいから、時間が無い」
仕方なく扉を閉める。
「セリーヌ、だったな、お前」
「はい」
「お前、なんで俺に怯えるんだ」
「い、いえ、そ、そ、そのような」
悪魔は近付いてきて片手で私の顔面を掴んだ。
「吐け、何を隠している、何を知っている」
頭が痛い。
挟む力がだんだん強まっていく。
このままではまずい、頭の骨を折られてしまう!
「な、何も隠していません」
「じゃぁ、何故そんなにおびえてるんだ」
「いだだだ~」
痛い痛い!
「言います、いいますから。
第2王子殿下の周囲に黒い羽根が舞っていて、真っ黒でどす黒いオーラがみえるんですぅ」
「は?」
間抜けな声を出してようやく手を放してくれた。
あ~痛かった。
頭が割れていないか触ってみると大丈夫なようだ。
「黒い羽根にどす黒いオーラねぇ」
はっ!しまった!つい本当の事を言ってしまった。
「つまり、お前は俺の本性が腹黒で、嫌な奴だと一目でわかった、ということだな」
「えーと、王族の方々には近くに寄るなどたかが男爵令嬢には荷が重いというか、できれば近寄りたくないというか」
「ふ~ん、殺すか」
え、消される?やばいやばい遠くからお仕えできれば、その恐れ多いので」
「ふん、嘘つけ、
「えーと、
「いいいや、いやいやいや、誰にも言いません。約束します」
「誓うか」
「ち、誓います」
「本当の俺を誰かにしゃべったら・・・わかっているだろうな?」
コクコクコクコク、壊れた人形のように首を縦に振る。
いつのまにか目の前にいる悪魔の手には皿が。
目が離せない。
なんていい匂い。
「おい、これを食べたいか?」
コクコクコクコク
「これはな、バディゴのチョコレートだ」
バディゴ?バディゴと言えば一粒で私のお小遣いが3カ月は吹っ飛ぶという超有名なお店。
過去1度だけ1粒だけ食べさせてもらった時は感動のあまり時が止まり、涙を止められなかった。
そんなバディゴのチョコレートがまさかの山盛り・・・
「今日から側近候補どもと共に学ぶが、お前、真面目にやるんだよな?」
「げ」
「げ?」
「元気に頑張ります」
ふふん、任せとけ、無能として開放されるんだ。
「お前、無能者として脱落を狙ってるだろう」
ばれてる?なぜだ
「真面目にやるならこれを食わせてやるんだが?」
「!!!」
「どうする?」
まさに悪魔の所業だ。
バディゴと私の人生を天秤にかけようとは。
だが、負けてはいけない。
ここで負けるとこの悪魔の奴隷は確定してしまう。
悪魔は無造作にパクリ、と1粒食べている。
「うん、まあまあだな。で?どうする?」
そう言ってまたパクリ。
くそう、負けちゃだめだ、負けちゃだめだ
「いらないのか、つまらん」
そう言って悪魔は一粒づつっ空中に投げてはパクリ、と食べていく。
あぁ~~~~~~~~~
「頑張って真剣に学ぶ事をちかいますぅ」
私は悪魔に魂をうった←大げさ
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる