セリと王子

田中ボサ

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4 悪魔に負けた

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 イヤイヤながら王宮に行くと、馬車を降りて連れてこられた執務室前、



「セリーヌ嬢」



でたぁ~。



「だ、だ、第2王子殿下・・・・お久しぶりでございますぅ。それではごきげんよう」



そのまま後ろに下がって逃げようとしたのだが、首をガッと掴まれた。



周囲から見ると王子が少女の肩に手を置いているように見える、そんな角度だが、実際には少し上、首をがっつり捕まえている。



ちょっ、ギリギリ締めあげてない?



「何故逃げる?」



低い声は周囲には聞こえていないようだ。



「めめめっそうもありません」



「皆に紹介する、ついてこい」



え~やだよぅ



「でも・・・」



「皆で学ぶのだから紹介は必要だろう」



王子はキラキラ笑顔で近くの従者になんか伝言をして、ついてこい、と言った。



私の足取りは重い。







王子の執務室についたようだ。



そのまま部屋に入る。



あれ?だれもいない。



「早く扉を閉めろ」



「でも・・・」



「いいから、時間が無い」



仕方なく扉を閉める。







「セリーヌ、だったな、お前」



「はい」



「お前、なんで俺に怯えるんだ」



「い、いえ、そ、そ、そのような」



悪魔は近付いてきて片手で私の顔面を掴んだ。



「吐け、何を隠している、何を知っている」



頭が痛い。



挟む力がだんだん強まっていく。



このままではまずい、頭の骨を折られてしまう!



「な、何も隠していません」



「じゃぁ、何故そんなにおびえてるんだ」



「いだだだ~」



痛い痛い!



「言います、いいますから。



第2王子殿下の周囲に黒い羽根が舞っていて、真っ黒でどす黒いオーラがみえるんですぅ」



「は?」



間抜けな声を出してようやく手を放してくれた。



あ~痛かった。



頭が割れていないか触ってみると大丈夫なようだ。







「黒い羽根にどす黒いオーラねぇ」



はっ!しまった!つい本当の事を言ってしまった。



「つまり、お前は俺の本性が腹黒で、嫌な奴だと一目でわかった、ということだな」



「えーと、王族の方々には近くに寄るなどたかが男爵令嬢には荷が重いというか、できれば近寄りたくないというか」







「ふ~ん、殺すか」



え、消される?やばいやばい遠くからお仕えできれば、その恐れ多いので」



「ふん、嘘つけ、



「えーと、



「いいいや、いやいやいや、誰にも言いません。約束します」



「誓うか」



「ち、誓います」



「本当の俺を誰かにしゃべったら・・・わかっているだろうな?」



コクコクコクコク、壊れた人形のように首を縦に振る。







いつのまにか目の前にいる悪魔の手には皿が。



目が離せない。



なんていい匂い。



「おい、これを食べたいか?」



コクコクコクコク



「これはな、バディゴのチョコレートだ」



バディゴ?バディゴと言えば一粒で私のお小遣いが3カ月は吹っ飛ぶという超有名なお店。



過去1度だけ1粒だけ食べさせてもらった時は感動のあまり時が止まり、涙を止められなかった。



そんなバディゴのチョコレートがまさかの山盛り・・・







「今日から側近候補どもと共に学ぶが、お前、真面目にやるんだよな?」



「げ」



「げ?」



「元気に頑張ります」



ふふん、任せとけ、無能として開放されるんだ。







「お前、無能者として脱落を狙ってるだろう」



ばれてる?なぜだ



「真面目にやるならこれを食わせてやるんだが?」



「!!!」



「どうする?」



まさに悪魔の所業だ。



バディゴと私の人生を天秤にかけようとは。



だが、負けてはいけない。



ここで負けるとこの悪魔の奴隷は確定してしまう。



悪魔は無造作にパクリ、と1粒食べている。



「うん、まあまあだな。で?どうする?」



そう言ってまたパクリ。



くそう、負けちゃだめだ、負けちゃだめだ



「いらないのか、つまらん」



そう言って悪魔は一粒づつっ空中に投げてはパクリ、と食べていく。



あぁ~~~~~~~~~



「頑張って真剣に学ぶ事をちかいますぅ」



私は悪魔に魂をうった←大げさ

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