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3 逃げる方向で
しおりを挟む王宮では面会用の部屋に通された。
とはいえ我が家の応接室よりもずーっと上等で広い。
私を真ん中に挟んで父母が両側に座る。
あまりの場違い間に3人でぎゅっと小さくなる。
だって、我が家は男爵家。
それもまあまあ貧乏な男爵家。
使用人と言っても3人しかいないし、どちらかというと平民よりだ。
ちょっと小金のある平民とそんなにかわりない生活だ。
近所の平民の皆様とも仲良くできるくらいの名ばかり貴族。
暫くしてノックと共に執事?が入ってきた。
慌てて立ち上がる。
「第2王子殿下がお越しになられました。王妃殿下もご一緒です」
ひぇっっと小さく声が出てるよ、母様。
父様、足がブルブルしてるよ。
私も握ってる手が汗だらけだ。
王妃様と第2王子が部屋に入ってきた。
父母は膝を深く曲げてカーテシーをした。
私もまだ練習中だが同じようにカーテシーをした。ちょっとプルプルするけどね。
「顔を上げて」
王妃様の声でそーっと顔を上げた。
いるよ、いる、お美しい王妃様の横にどす黒いオーラが。
「それでね、今日来てもらったのはアレクが側近候補にセリーヌ・ベロウド男爵令嬢を加えたいというの。どうかしら?受けてもらえるかしら?
何か聞きたいことがあるかしら?即答してかまわないわよ」
「・・こ、こ光栄です」
父様が答える声はちょっと震えてる。
「失礼ですが、何故娘をお選び頂けたのかお伺いしてもよろしいでしょうか?
こう言っては何ですが、これといったとりえもない平凡な娘ですので」
母様、ダイレクトに聞きましたな。
これといったとりえもないって、まぁ、そうなんだけどさ。
言われるとちょっと悲しい。
「あぁ、ベロウド男爵令嬢は、私に媚を打ってこなかったんだよ。
あのパーティ会場の中でほとんどの子が分かりやすく私に付きまとってきたんだがね、
私が第2王子だとわかってもすり寄っても来なかったよ」
待て待て待て待て、怯えてただろうが!
怖いからすり寄るわけないだろう!
「そういう態度の特に女性となると中々いないからね。側近として1番大事だよ」
「そうね、だから早いうちに侍女見習いとして王宮にあがってもらいたいの」
「侍女見習いですか?」
「えぇ、女性の側近候補なんて初めてだし、侍女として側に仕えてもらうのが1番自然でしょ?」
そのあと色々と説明をされた。
第2王子は大変美しい顔をしているため、女性が付きまとうことが多いらしい。
王宮の女官や侍女たちも例外ではないそうだ。
その為第2王子の周囲には男性使用人か、かなり歳上の既婚者の女性しかつけられていない。
歳の近い女性がいれば学園に入ってからも何かと都合がよいらしい。
他の側近候補達に合わせてセリも12歳になってから侍女見習いとして出仕することになった。
帰りの馬車の中、セリは両親に何とか王宮に行かなくて済む方法がないかと聞いてみた。
すると隣にに座っていた母様がこちらに体を向けて、ガシッと両肩を掴んだ。
目が怖い・・・
「いい、セリ。あなたの双肩には男爵家が乗っているのよ。
貴女が何かしでかしたりしたら、男爵家は終わりなの。
そうならないように、第2王子殿下に失礼のないようにするのよ!」
逃げ場がなかった。
まあ、12歳からでいいならいいか。
それまでは悪魔に会わなくてもいいから、12歳までに忘れてもらう方法を考えようかな?
などと考えていた呑気なわたし、今なら殴ってやりたい。
聞いてなかったのだ、12歳からは侍女見習いとなるが、それまでは王子と側近候補達と教育をうけるのだと。
侍女になるまでに基本的な高位貴族のマナー、ダンス、王家の歴史、外国語は最低3か国、国内の貴族の顔と身分を覚える、護身術等々、普通の男爵令嬢であれば全く必要のないことがほとんどだ。
なんでだよ、やりたくないよ~。
は、そうだ、出来が悪ければ呆れて候補から外してもらえる。
それ、ありだ。
それだ。
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