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昼間でなかったのが幸いでしたね
しおりを挟むやあ、お久しぶりです。あなたと会うのは私の入学祝いに親戚が集まった時ぶりですかね。
あなたをこんなところに呼んだのは私の体験した奇妙な体験を誰かに共有したかったからです。
最近この辺りで突然に人が姿を消すという物騒な事件が起きているでしょう。
一昨日も小学生数人が行方不明になってニュースに取り上げられていましたよね。
ええ、本当に心配です。
それでなんですが、お話したい事というのはこの事件に関係することかもしれないのです。
私はもしかしたら事件の真相に迫る何かを知っているのかもしれないのです。
つい先の日のことです。
突然の盆をひっくり返したような夕立に、私は使い古した学校鞄を雨よけにしながら雨宿りできる場所を求め走っていました。
時々轟くような雷鳴も聞こえてきます。
ここはとんだ田舎でありますので気軽にはいれるような喫茶店も、軒を借りられるような民家もなかなか見つからないのであります。
左手には青みを増した水田、右手には所々禿げ上がった山があるばかりです。
じっとりとした暑さに草臥れきっていた体は突然の雨に冷却され悲鳴を上げているようにも感じられました。
しかしこんな田舎であるからこそ剥き出しの小川と、其処にあるべきとして架かった石造りの橋も存在するのです。
私は河原を転げ落ちるようにアーチ造りの石橋の下に身を滑り込ませました。
大雨から逃れ、ほっと息をつくとともに自分のスラックスの裾がひどく汚れていることに気づきました。
周りは畑と田んぼですから雨の日に走れば当然こんな風になってしまいます。
これは洗濯が大変になりそうだ、などと思いながら私はこれ以上汚れるのも気にせずその場に座り込みました。
その時すぐそばの透明なビニール袋の中に入れられたボタン型の磁石が目に付きました。
それを手にとって見ると、ビニールの口は堅く縛られていました。
おそらく近所の子供達が砂鉄やなんかを集める遊びをして帰る時かなんかにここに落として行ってしまったのでしょう。
しかしそれを見ているにもだんだん飽きてきてしまってまたその辺にポイと投げてしまいました。
え?あぁ、すみません。別にこれは元の話に関係はないのですよ。
ただなんとなく思い出して言いたくなっただけなのです。
話を戻しますと、先程も申し上げましたとおりこの辺りは水田と畑ばかりでありますから人通りもまばらで、聞こえるものなんて少しばかり水量を増した川と降り続く雨の音ばかりです。
体は冷えたままでしたが、単調な音を聞き続けているとだんだん睡魔が襲ってきます。
結局あの日、そのまま私は橋の下で寝こけてしまいました。
目が覚めると雨は止んでいましたが、すでに辺りは闇に包まれていました。
澄んだ空気の中、鈴虫の声だけが響き渡っていました。
当然ですが家に帰ると母にこってり絞られました。
しかしその時の母の声なんて全く耳に入ってきませんでした。
実は私は帰る途中に黒く染まった田んぼの向こうにぼんやりと白く光る得体の知れないものが蠢いているのを目の端で捉えてしまったのです。
それが私にはどうしてもこの世のものとは思えないのですよ。
ねえ、あなたは確かオカルト話が好きだったでしょう?
これについてどう思います?
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――――ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。ポク。
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