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第四部 みんなでわちゃわちゃ編
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「はわー!待ておまっ、何言ってんの?!」
「それは女性化する前からということですか?」
「二人は肉体関係はあるの?」
「何聞いてんの?!」
医師二人は彩葉を無視して竹彪にグイグイ質問している。竹彪はサクサク淡々と回答していく。
「そっすね。男でも女でもやってます」
「女性化した時は、変な話だけど、普通にできたの?」
「待って待って、ねぇ、俺の声聞こえてる?」
「そーっすね。何日かかけて慣らしてやっと入った感じで。普通の処女と変わんないっすね」
「そうなの!興味深いわ、潤滑剤もいらないのかしら?」
「待てって!今関係ねーってその話、高校生達見ろよ!赤くなっちゃって、いたたまれねーわ!」
彩葉は医師と竹彪の間に割って入って吠えた。真向かいの高校生二人は顔を真っ赤にして視線をそらしている。おっぱいのカップ数はダメなのに、こんな生々しい話は聞かせていいのか。彩葉にはその基準がわからなかった。
「あと、マツに聞かれてんのがめちゃくちゃ嫌…」
「いいじゃん、今更~そんな言い方、傷つくわぁ」
松寿はニヤニヤ笑って彩葉を見た。いつも竹彪と一緒につるんでいる松寿にこんな具体的な話を聞かれてしまうとは。日常を知られている分、より恥ずかしい。彩葉は両手で顔を覆って机に突っ伏す。撃沈した彩葉を切り上げて、医師は楓に話を振った。
「では、次に…よろしいですか?」
「ひぇっ?!は、はい、あの、柏木です。僕も、蜂に刺されて女の子になって、今日は、女の子で…せ、せ、生理、は、」
楓は立ち上がったものの、頭から湯気が出そうなほど赤くなって言葉に詰まる。が、急に叫んだ。
「僕も、松兄ちゃんに聞かれるのが死ぬほど嫌です!松兄ちゃんお願い、どっか行って?」
「死ぬほど?!なんだよ黒木も楓も二人して、まじで傷ついたからな!」
楓が涙目で松寿に懇願する。可愛い顔をしてだいぶひどい言い草だった。
松寿は立ち上がった。そんな言い方をされたらさすかに悲しい。部屋から出ようと思ったが、紅葉がしがみついて青い顔で首を横に振って引き止めている。
「どうすりゃいいの、俺」
「兄ちゃん耳塞げ、耳」
「それだ。マツ、耳塞げ。なんも聞いてやるな」
「なんなの俺の扱い…わかったよ、はい聞かない聞かない」
松寿は不貞腐れながら両耳を塞ぐ。梅寿は自発的に耳をふさいでいた。しかし楓は首を横に振る。
「松兄ちゃん信用できない。本当に聞こえてない?ちょっと聞いてない?」
「どんだけ信用ねーんだ、コイツ…紅葉、マツの耳、上から塞げ。タケも塞いどけ。ほら、これでこいつら聞こえねぇよ」
彩葉は松寿を哀れみの目で見た。何をしたらここまで信用を失くすのだろうか。扱いのひどさにちょっと同情してしまった。
彩葉は竹彪の手に自分の手を重ねて押さえる。たぶん聞こえていないはずだ。
楓はぱっと表情を明るくして梅寿の耳を塞ぐ。
「ありがとうございます!」
「いや、なんこれ。どういう状況?」
女の子になった三人が立ち上がって付き添いの耳をふさぐという異様な光景に、彩葉は口に出さずにいられなかった。彩葉と医師が楓に視線を注ぐと、楓は意を決して話し始めた。
「あの、せ、生理は、まだ来てないんですけど」
「来てないんかーい。ここまで引っ張って来てないんかい!」
「違うんです、来てないんですけど、一昨日くらいからお腹が痛くて気持ち悪くて…あと、女の子のまま戻らなくて…お母さんが、生理がくるんじゃないかって、今日、お医者さんに、聞いてきたらって、」
楓は涙目になって懸命に伝えた。恥ずかしさのあまり、楓は梅寿の耳をふさぎながらぎゅっとしがみついた。梅寿の後頭部にお胸が当たっているとは少しも想像していなかった。梅寿は真っ赤になって耐えた。
「あらあら。それは、初潮の前触れかもしれないわね。あなた、これ渡してなかったわよね、はい」
楓は産婦人科医から冊子を渡された。梅寿以外の4人はそれが何かすぐに察した。
「お母様と読んで、参考にしてちょうだい」
「はい…いっ?!はっ、はじめての、?!」
可愛い絵柄の冊子だった。表紙に『初めての生理』と書かれていて、楓は冊子を落としてしまった。テーブルの上、梅寿の目の前に冊子が落ちる。梅寿は驚いて耳から手を離した。
「何?!なんだ?これ…」
「あっ、だめっ、ウメちゃんは見ちゃだめ!」
「え?かえ、で…」
「待て待て、落ちる落ちる」
「楓落ち着け、ウメの首千切れるって」
楓は梅寿の目元と首を腕で締め、頭を後ろに向けて冊子から目を遠ざけようとしていた。竹彪と松寿が止めに入る。梅寿は白目を向いていた。
「ごめんね、ウメちゃん…慌てちゃって…」
「おぅ、平気、ダイジョブ」
楓は冊子を回収して鞄に放り込んだ。全然大丈夫そうじゃない梅寿は置いておいて、医師は紅葉に順番をまわす。全員が椅子に着席した。
紅葉は松寿に耳打ちをする。
「え?えーと、女の子になったのは先週で、名前は佐々木、です、うん、蜂に刺されて、女の子になりました。今日は、男です」
紅葉の耳打ちを松寿が発表しているらしい。紅葉は松寿の言葉にうなづきながら耳打ちを続ける。
「紅葉お前、自分で喋れよ」
「知らない人がいると喋らなくなるんだよ…え?ひとみし…人見知りだって」
「えぇ?めんどくせ~こっち見んなよ。え、ごめんて、怖い怖い、こっち見ないで、ごめんてぇ!」
彩葉はテーブルに肘をついて気だるげに紅葉を見ていた。紅葉は前髪の隙間から彩葉を睨みつける。あまりの禍々しさに彩葉は竹彪を盾に隠れた。梅寿と楓もあまりの恐怖に固まってしまった。
紅葉は再度松寿に耳打ちをする。
「男に戻ったり、女の子になったり、してます。生理は…え?なんて?生理は、うん?来たの?来てないの?来、て…る?うっそ、やだぁ、お赤飯炊かなきゃ!」
松寿は両手を握って口元に当てて大げさに照れている。紅葉は松寿の肩をぶっ叩いた。
「すみません、来てないそうです」
「「長ぇよ」」
松寿は急に真顔で医師に伝える。彩葉と松寿は声を揃えた。
産婦人科医は手元のメモを見返した。
「なるほど…今までを総括すると、生理は女性化してから1、2週間で来るようね。ただ女性の初潮に個人差があるように、あなた達にも個人差があると思う。お母さんだったり、身近な女性にアドバイスをもらえるといいわね」
「集まっていただいたみなさんは性別が安定していませんし、いつまで続くかわかりません。女性という性を学ぶことで自衛になると思いますし、情報を共有しつつこちらも症例を積み重ねて行きたいと思っています。みなさん、女性化して不便なことはありますか?」
医師の言葉に彩葉、楓、紅葉はそれぞれ顔を見合わせた。今のところ不便なことしかない。そんな中、彩葉が小さく手を上げた。
「あの、聞きたいことあんだけど」
珍しく声量の小さな彩葉に全員が耳を傾ける。
「…ブラ、つけてる?」
しおらしい態度に身構えていた竹彪と松寿は、はぁーっと大きなため息を漏らした。
「お前何聞いてんだよ…この期に及んでまだエロい事考えてんのか」
「ほんっと頭の中エロしかねーのな。楓にそんなこと聞かないでくんない?…あ、紅葉もね、やだよね」
「なんなのあの人。楓ちゃんのお父さんなの?」
紅葉はじっと松寿を睨んだ。彩葉は松寿を指さして楓に尋ねる。
「違います。僕のお父さんはあんなんじゃないです」
「それは女性化する前からということですか?」
「二人は肉体関係はあるの?」
「何聞いてんの?!」
医師二人は彩葉を無視して竹彪にグイグイ質問している。竹彪はサクサク淡々と回答していく。
「そっすね。男でも女でもやってます」
「女性化した時は、変な話だけど、普通にできたの?」
「待って待って、ねぇ、俺の声聞こえてる?」
「そーっすね。何日かかけて慣らしてやっと入った感じで。普通の処女と変わんないっすね」
「そうなの!興味深いわ、潤滑剤もいらないのかしら?」
「待てって!今関係ねーってその話、高校生達見ろよ!赤くなっちゃって、いたたまれねーわ!」
彩葉は医師と竹彪の間に割って入って吠えた。真向かいの高校生二人は顔を真っ赤にして視線をそらしている。おっぱいのカップ数はダメなのに、こんな生々しい話は聞かせていいのか。彩葉にはその基準がわからなかった。
「あと、マツに聞かれてんのがめちゃくちゃ嫌…」
「いいじゃん、今更~そんな言い方、傷つくわぁ」
松寿はニヤニヤ笑って彩葉を見た。いつも竹彪と一緒につるんでいる松寿にこんな具体的な話を聞かれてしまうとは。日常を知られている分、より恥ずかしい。彩葉は両手で顔を覆って机に突っ伏す。撃沈した彩葉を切り上げて、医師は楓に話を振った。
「では、次に…よろしいですか?」
「ひぇっ?!は、はい、あの、柏木です。僕も、蜂に刺されて女の子になって、今日は、女の子で…せ、せ、生理、は、」
楓は立ち上がったものの、頭から湯気が出そうなほど赤くなって言葉に詰まる。が、急に叫んだ。
「僕も、松兄ちゃんに聞かれるのが死ぬほど嫌です!松兄ちゃんお願い、どっか行って?」
「死ぬほど?!なんだよ黒木も楓も二人して、まじで傷ついたからな!」
楓が涙目で松寿に懇願する。可愛い顔をしてだいぶひどい言い草だった。
松寿は立ち上がった。そんな言い方をされたらさすかに悲しい。部屋から出ようと思ったが、紅葉がしがみついて青い顔で首を横に振って引き止めている。
「どうすりゃいいの、俺」
「兄ちゃん耳塞げ、耳」
「それだ。マツ、耳塞げ。なんも聞いてやるな」
「なんなの俺の扱い…わかったよ、はい聞かない聞かない」
松寿は不貞腐れながら両耳を塞ぐ。梅寿は自発的に耳をふさいでいた。しかし楓は首を横に振る。
「松兄ちゃん信用できない。本当に聞こえてない?ちょっと聞いてない?」
「どんだけ信用ねーんだ、コイツ…紅葉、マツの耳、上から塞げ。タケも塞いどけ。ほら、これでこいつら聞こえねぇよ」
彩葉は松寿を哀れみの目で見た。何をしたらここまで信用を失くすのだろうか。扱いのひどさにちょっと同情してしまった。
彩葉は竹彪の手に自分の手を重ねて押さえる。たぶん聞こえていないはずだ。
楓はぱっと表情を明るくして梅寿の耳を塞ぐ。
「ありがとうございます!」
「いや、なんこれ。どういう状況?」
女の子になった三人が立ち上がって付き添いの耳をふさぐという異様な光景に、彩葉は口に出さずにいられなかった。彩葉と医師が楓に視線を注ぐと、楓は意を決して話し始めた。
「あの、せ、生理は、まだ来てないんですけど」
「来てないんかーい。ここまで引っ張って来てないんかい!」
「違うんです、来てないんですけど、一昨日くらいからお腹が痛くて気持ち悪くて…あと、女の子のまま戻らなくて…お母さんが、生理がくるんじゃないかって、今日、お医者さんに、聞いてきたらって、」
楓は涙目になって懸命に伝えた。恥ずかしさのあまり、楓は梅寿の耳をふさぎながらぎゅっとしがみついた。梅寿の後頭部にお胸が当たっているとは少しも想像していなかった。梅寿は真っ赤になって耐えた。
「あらあら。それは、初潮の前触れかもしれないわね。あなた、これ渡してなかったわよね、はい」
楓は産婦人科医から冊子を渡された。梅寿以外の4人はそれが何かすぐに察した。
「お母様と読んで、参考にしてちょうだい」
「はい…いっ?!はっ、はじめての、?!」
可愛い絵柄の冊子だった。表紙に『初めての生理』と書かれていて、楓は冊子を落としてしまった。テーブルの上、梅寿の目の前に冊子が落ちる。梅寿は驚いて耳から手を離した。
「何?!なんだ?これ…」
「あっ、だめっ、ウメちゃんは見ちゃだめ!」
「え?かえ、で…」
「待て待て、落ちる落ちる」
「楓落ち着け、ウメの首千切れるって」
楓は梅寿の目元と首を腕で締め、頭を後ろに向けて冊子から目を遠ざけようとしていた。竹彪と松寿が止めに入る。梅寿は白目を向いていた。
「ごめんね、ウメちゃん…慌てちゃって…」
「おぅ、平気、ダイジョブ」
楓は冊子を回収して鞄に放り込んだ。全然大丈夫そうじゃない梅寿は置いておいて、医師は紅葉に順番をまわす。全員が椅子に着席した。
紅葉は松寿に耳打ちをする。
「え?えーと、女の子になったのは先週で、名前は佐々木、です、うん、蜂に刺されて、女の子になりました。今日は、男です」
紅葉の耳打ちを松寿が発表しているらしい。紅葉は松寿の言葉にうなづきながら耳打ちを続ける。
「紅葉お前、自分で喋れよ」
「知らない人がいると喋らなくなるんだよ…え?ひとみし…人見知りだって」
「えぇ?めんどくせ~こっち見んなよ。え、ごめんて、怖い怖い、こっち見ないで、ごめんてぇ!」
彩葉はテーブルに肘をついて気だるげに紅葉を見ていた。紅葉は前髪の隙間から彩葉を睨みつける。あまりの禍々しさに彩葉は竹彪を盾に隠れた。梅寿と楓もあまりの恐怖に固まってしまった。
紅葉は再度松寿に耳打ちをする。
「男に戻ったり、女の子になったり、してます。生理は…え?なんて?生理は、うん?来たの?来てないの?来、て…る?うっそ、やだぁ、お赤飯炊かなきゃ!」
松寿は両手を握って口元に当てて大げさに照れている。紅葉は松寿の肩をぶっ叩いた。
「すみません、来てないそうです」
「「長ぇよ」」
松寿は急に真顔で医師に伝える。彩葉と松寿は声を揃えた。
産婦人科医は手元のメモを見返した。
「なるほど…今までを総括すると、生理は女性化してから1、2週間で来るようね。ただ女性の初潮に個人差があるように、あなた達にも個人差があると思う。お母さんだったり、身近な女性にアドバイスをもらえるといいわね」
「集まっていただいたみなさんは性別が安定していませんし、いつまで続くかわかりません。女性という性を学ぶことで自衛になると思いますし、情報を共有しつつこちらも症例を積み重ねて行きたいと思っています。みなさん、女性化して不便なことはありますか?」
医師の言葉に彩葉、楓、紅葉はそれぞれ顔を見合わせた。今のところ不便なことしかない。そんな中、彩葉が小さく手を上げた。
「あの、聞きたいことあんだけど」
珍しく声量の小さな彩葉に全員が耳を傾ける。
「…ブラ、つけてる?」
しおらしい態度に身構えていた竹彪と松寿は、はぁーっと大きなため息を漏らした。
「お前何聞いてんだよ…この期に及んでまだエロい事考えてんのか」
「ほんっと頭の中エロしかねーのな。楓にそんなこと聞かないでくんない?…あ、紅葉もね、やだよね」
「なんなのあの人。楓ちゃんのお父さんなの?」
紅葉はじっと松寿を睨んだ。彩葉は松寿を指さして楓に尋ねる。
「違います。僕のお父さんはあんなんじゃないです」
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