救済(BL、本編完結)

Oj

文字の大きさ
上 下
40 / 43

40

しおりを挟む
「…清。もっと、清の話、聞きたい。帰って、お話して、えっちしよ?」
「ぶふぉっ………おま、何いってんだ」
清は吹き出した。白昼堂々、何を言うのか。光希は至って真剣な顔だ。
「お布団で、いっぱいお話しよ。いっぱいよしよししてあげるから。俺ね、もう清しかいないの。えっちするのも、清としかできない。他の人ともう、できないの。俺もね、清がいなくなったら、死ぬからね」
光希は清の腕にしがみつく。すれ違う人がこちらを見てくる。清は光希を引き寄せてくっついた。光希は青い顔で涙を滲ませている。きっと今、辛かった過去が頭に浮かんでしまっている。
光希は他人と接触ができない。
特に同性相手だと、少し手が触れただけでも怯えてしまう。そんな光希が清だけは触れることを許してくれる。体だけではなく、心も、たくさん傷ついた光希は清だけを受け入れてくれている。
清はふと笑った。
「俺達、すっげぇ、重いな」
どちらかがいなくなったら死ぬだの、お前じゃなきゃ駄目だの。こんな重たい組み合わせは、恋愛を題材にした少女漫画にだっていないだろう。少女漫画を読んだことはないが。
光希は笑う清をきょとんと見上げて、にまっと笑った。
「似た者同士、だよね。しかも、両想い」
「兄弟なのにな」
「兄弟だからだよ」
微笑む光希に、清はまた泣きたくなった。
光希の言葉が、ストンと胸に落ちた。光希の言いたいことがわかる。
光希との間に余計な縛りを生んだ兄弟という繋がりを、憎んで恨んできた。しかし、兄弟だから今まで一緒にいられた。戸籍の上だけでも兄弟だから、病院で入院するときも医師から話が聞けて、同棲をするときもスムーズに話が進んだ。勝手に兄弟にされたという両親と田町に対する怒りは消えないが、悪いことだけじゃなかったのだと今は思う。
時間は傷を深めたり、考え方を変えてくれたりする。
事件の裁判が終わっても、田町の罪が決まっても、光希の痛みは終わらない。清も胸を痛め続けている。
「おれは、清が大切。大好き。すごく、大事な人だよ。お兄ちゃんだけど、俺、清のこと、好きなの。大好きなの。愛してるの。だから、さみしくならないで。傍にいるから」
「うん。俺も、光希が好きだ。ちょっと、弱気に、なってた。今は光希がいる。光希が愛してくれたら、それでいい。それが、一番いい」
清と光希は傷を分け合って、寄り添い合って家路を急いだ。




警察署に向かう車の中。高輪は珍しく真剣な固い声を出した。
「清君、大丈夫ですかね。みっちゃんの体調、かなり悪くなってるんですか?」
「光希さんは、変わってねぇ。たぶん清は今になってガタがきてる。当然だ。あんだけの事件に関わって、その上親が死んでんだ。今まで、あれだけ兄ちゃんを支えてやれてたのが不思議なくらいだ」
助手席で権田は険しい顔で腕を組んでいた。3年前の事件の後、清と光希は清の祖父の家に引き取られていった。清が頼ろうとしていた相手だ。今後も見守りは必要なものの、二人は安心して生活していけるのだろうと、権田も安堵していた。光希の主治医から連絡を受けた時は目の前が暗くなった。
『光希さんが、性的虐待を受けたおそれがあります。相手は同居しているおじいさんです。児童相談所にも、通告します』
事件の経緯を知っていた医師は権田にも連絡をくれた。権田は児童相談所の職員とも連携を取って光希と面会をして話を聞いた。光希は頑なに、何をされたのか言わなかった。
しばらくして。権田よりも足繁く通った高輪が見舞いに行った際、光希はついに吐露してくれたそうだ。
『清と離れたくない。でも、じいちゃん、怖い』
医師もその場にいた。具体的になにをされたのかは、ついに言わなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

少年ペット契約

眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。 ↑上記作品を知らなくても読めます。  小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。  趣味は布団でゴロゴロする事。  ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。  文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。  文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。  文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。  三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。  文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。 ※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。 ※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。

管理委員長なんてさっさと辞めたい

白鳩 唯斗
BL
王道転校生のせいでストレス爆発寸前の主人公のお話

くまさんのマッサージ♡

はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。 2024.03.06 閲覧、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。 2024.03.10 完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m 今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。 2024.03.19 https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy イベントページになります。 25日0時より開始です! ※補足 サークルスペースが確定いたしました。 一次創作2: え5 にて出展させていただいてます! 2024.10.28 11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。 2024.11.01 https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2 本日22時より、イベントが開催されます。 よろしければ遊びに来てください。

上司に連れられていったオカマバー。唯一の可愛い子がよりにもよって性欲が強い

papporopueeee
BL
契約社員として働いている川崎 翠(かわさき あきら)。 派遣先の上司からミドリと呼ばれている彼は、ある日オカマバーへと連れていかれる。 そこで出会ったのは可憐な容姿を持つ少年ツキ。 無垢な少女然としたツキに惹かれるミドリであったが、 女性との性経験の無いままにツキに入れ込んでいいものか苦悩する。 一方、ツキは性欲の赴くままにアキラへとアプローチをかけるのだった。

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

処理中です...