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清の握りしめた拳が震える。
「あの豚と、やってる光希を見て、俺、頭に血が昇りました。光希が汚された。あと、…俺、羨ましいって、思った。なんで、あんな豚が光希をやれて、俺は、できねぇんだって……そんな俺が、あいつのとこに行って、いいんですか?」
「…君は、さっきの話を聞いてどう思った。田町はまだ光希さんを求めている。君は、どう考える?」
「殺しとけば良かったと、思いました。息してんのかちゃんと確認して、頭ぶっ潰してやりゃあ、こんな、胸くそ悪くならなくて済んだ」
清は権田を睨みつける。清の強い視線を権田は静かに受け止めてくれていた。
ふぅふぅと荒い呼吸が漏れる。同時に清の瞼が熱くなった。鼻の奥が痛い。
「でも、そんなことしたら、光希を守れねぇ。殺さなくて、良かった。死んでなくて、良かった。俺は、これから光希を支えてやりたい」
例え光希が望んでいなくても。光希が清に抱かれたのは同情かもしれない。清がダイベンシャを殺したと思い込んでいた光希は、せめて刑務所に行く前に清を慰めようとしてくれたのかもしれない。きっと、光希に清に対する恋愛感情なんてない。
それでも清は、光希を守りたい。
権田は頷いて、口を開く。
「ニャンニャンの毛布…君が眠れていないようだと伝えたら、君に渡してほしいと頼まれた。君が眠っていたから、と。俺は受け取らなかった。君が自分で受け取りに行ってあげてくれ。お兄さんは君を待っている。お兄さんは君の、兄でいることが、精神の支えになっているように見えた」
清の気持ちに光希が気づいていたのかはわからない。これから清が光希を支えようとしているのは独りよがりかもしれない。
それでもいい。光希にとって清はただの弟でもいい。
光希が清を必要としなくなるその時まで。清は光希のそばにいたい。
「男同士っつーのが、俺にはわからん。その上君たちは戸籍上兄弟だ。好き合うのがいいことかどうか、わからん。だがな、お前が一緒にいたいなら、傍にいてやれ。お前はこれから踏みとどまれる人間になれ。兄ちゃんを守りてぇって気持ちを、大切にしろ。警察はな、捕まる場所じゃねえ。頼る場所だ。兄ちゃんとお前と、無事に暮らしていけるように俺達を使え。わかったか」
清は泣きながら頭を縦に振った。権田の背後にたっていた男が歩み寄ってきた。
「権田さん、言い方。強要ですよそれ…お兄さんが君をどう思ってるかはわかんないけど。確かめるためにも会いに行ってあげな。お兄ちゃん、待ってるよ。君のこと」
権田の相方だという高輪はいつも静かに清と権田のやり取りを見つめていた。高輪は権田の肩に手を置いてトントンと叩く。落ち着かせるようなその仕草に、権田の顔が赤くなっていることに気づいた。権田の目にも涙が滲んでいた。
「田町のことはね、我々警察に任せてください。必ず罪を暴いて、正しく罰をあたえます。権田さんも言ってましたけど、捜査の過程でお兄さんにも君にも負担を強いると思います。ご了承ください。じゃ、別室でお待ち下さい。お祖父さんが来たらお呼びしますんで。あとね、ティッシュ、どうぞ」
高輪が連絡を入れて、別の警察官が部屋に入ってきた。警察官が別室に案内してくれるそうだ。権田と高輪を見ると、権田は清に頭を下げていた。表情は見えない。
高輪は権田にティッシュを差し出していた。泣いているようだ。
清も2人に頭を下げて、部屋を出た。
「あの豚と、やってる光希を見て、俺、頭に血が昇りました。光希が汚された。あと、…俺、羨ましいって、思った。なんで、あんな豚が光希をやれて、俺は、できねぇんだって……そんな俺が、あいつのとこに行って、いいんですか?」
「…君は、さっきの話を聞いてどう思った。田町はまだ光希さんを求めている。君は、どう考える?」
「殺しとけば良かったと、思いました。息してんのかちゃんと確認して、頭ぶっ潰してやりゃあ、こんな、胸くそ悪くならなくて済んだ」
清は権田を睨みつける。清の強い視線を権田は静かに受け止めてくれていた。
ふぅふぅと荒い呼吸が漏れる。同時に清の瞼が熱くなった。鼻の奥が痛い。
「でも、そんなことしたら、光希を守れねぇ。殺さなくて、良かった。死んでなくて、良かった。俺は、これから光希を支えてやりたい」
例え光希が望んでいなくても。光希が清に抱かれたのは同情かもしれない。清がダイベンシャを殺したと思い込んでいた光希は、せめて刑務所に行く前に清を慰めようとしてくれたのかもしれない。きっと、光希に清に対する恋愛感情なんてない。
それでも清は、光希を守りたい。
権田は頷いて、口を開く。
「ニャンニャンの毛布…君が眠れていないようだと伝えたら、君に渡してほしいと頼まれた。君が眠っていたから、と。俺は受け取らなかった。君が自分で受け取りに行ってあげてくれ。お兄さんは君を待っている。お兄さんは君の、兄でいることが、精神の支えになっているように見えた」
清の気持ちに光希が気づいていたのかはわからない。これから清が光希を支えようとしているのは独りよがりかもしれない。
それでもいい。光希にとって清はただの弟でもいい。
光希が清を必要としなくなるその時まで。清は光希のそばにいたい。
「男同士っつーのが、俺にはわからん。その上君たちは戸籍上兄弟だ。好き合うのがいいことかどうか、わからん。だがな、お前が一緒にいたいなら、傍にいてやれ。お前はこれから踏みとどまれる人間になれ。兄ちゃんを守りてぇって気持ちを、大切にしろ。警察はな、捕まる場所じゃねえ。頼る場所だ。兄ちゃんとお前と、無事に暮らしていけるように俺達を使え。わかったか」
清は泣きながら頭を縦に振った。権田の背後にたっていた男が歩み寄ってきた。
「権田さん、言い方。強要ですよそれ…お兄さんが君をどう思ってるかはわかんないけど。確かめるためにも会いに行ってあげな。お兄ちゃん、待ってるよ。君のこと」
権田の相方だという高輪はいつも静かに清と権田のやり取りを見つめていた。高輪は権田の肩に手を置いてトントンと叩く。落ち着かせるようなその仕草に、権田の顔が赤くなっていることに気づいた。権田の目にも涙が滲んでいた。
「田町のことはね、我々警察に任せてください。必ず罪を暴いて、正しく罰をあたえます。権田さんも言ってましたけど、捜査の過程でお兄さんにも君にも負担を強いると思います。ご了承ください。じゃ、別室でお待ち下さい。お祖父さんが来たらお呼びしますんで。あとね、ティッシュ、どうぞ」
高輪が連絡を入れて、別の警察官が部屋に入ってきた。警察官が別室に案内してくれるそうだ。権田と高輪を見ると、権田は清に頭を下げていた。表情は見えない。
高輪は権田にティッシュを差し出していた。泣いているようだ。
清も2人に頭を下げて、部屋を出た。
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