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番外編
あのゲーム 完
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「ゲームってよくわかんないんだけど、そんな集中するもん?」
「するよ!なんで?やったことないの?嘘でしょ?…あ、」
「チビ優先だったり台数少ないから、あんまゲームした経験ないんだよね」
郁美はキュッと口を結んだ。施設育ちのキリヤの過去の話をすると、どう答えたらいいのかわからなくなるようだ。キリヤ本人は気にしていないし、ゲームも興味がなかったのでやれなかったところでどうとも思っていない。しかし郁美はもじもじと体を揺らして目を泳がせたあと、キリヤにゲーム機を差し出してくれた。
「…ちょっと、する?貸してあげる」
「いいの?ありがと♡」
あんなに夢中になっていたのに貸してくれる、郁美は本当に優しい良い子だ。ちょっとする?がいやらしい意味にしか聞こえなかったがそれは置いておいて、キリヤは郁美からゲームのやり方を教わった。ぴったりくっついて教えてくれる郁美は本当に可愛い。このままでは自分達が別の果物になってしまうかもしれない。
「ちゅうしよ?」
「それでね、ここに進化の一覧があってね、こういう順番で変身していくのね」
郁美はガン無視だった。目を輝かせて画面を見ているのでゲームをスタートさせた。ちゅうできなかった。果物達はチュッチュしながら別の果物になっていくのに。
何が楽しいのかよくわからないが、キリヤはしばらく続けた。何度目かのやり直しで、郁美から歓声が上がった。
「すごい、スイカできた!すごーい!!」
郁美は拍手で喜んでいる。動画以外で初めてスイカを見たそうだ。なぜスイカにこんなに喜ぶのか、いまいちピンとこない。スイカなんぞ夏場になればいくらでも見られるんだから、今は別のことがしたい。どうしたらやらせてもらえるだろうか。
「これさ、スイカとスイカがちゅうしたらどうなんの?」
「スイカ同士はね、消えるんだって。動画で見たけど、絶対できないよ。超むずい」
「ふーん。もうちょいやっていい?」
「うん。もっかいスイカ見せて」
郁美はキリヤの腕もたれかかってゲームを見ている。密着してご機嫌な郁美のなんと可愛いことか。正直何が何とちゅうしようがどうでも良いが、郁美が喜ぶならちょっとやってみよう。成功したら性交が待っている。キリヤはゲームを続けた。
~十分後~
「あちゃ~スイカできたけど、パンパンじゃ~ん…はい、てぃろりろ~ん」
「待って待って。ちょっと見てて。ここでイチゴがちゅうする、と」
小気味よい音とともに大量の果物達が消失していった。最後、一瞬だったがスイカとスイカのちゅうが見られた。上から順番に並べた果物達がうまく進化を遂げたようだ。
「はい、スイカとスイカのちゅう」
これは拍手喝采の大喜びだろうと郁美を見ると、口を曲げて不細工な顔をしていた。
「え、ぶっさ…待って、その顔嫌だな」
「うそぉ…スイカのちゅう、できちゃった…ちょっとやっただけじゃん…なんでぇ?」
郁美はしょんぼり落ち込んでいる。スイカのちゅうが見れたね、嬉しいありがとう♡えっちしよ♡の流れになると思ったのに、予想と全く違った。郁美はひどく落ち込んでいて、可哀想可愛い。
キリヤは悩んだ。擬似セ◯クスで散々ムラムラさせられた。いざ本番と思いきや、郁美は本気で落ち込んでいる。どう丸め込むか考えていると、郁美がぐっと両手を握りしめて顔を上げた。
「…よし!俺も頑張る!スイカ、ちゅうする!」
「いや、いいじゃん。今見たじゃん。それより別のことをね」
「それ!実際できるの見たし、俺もできる!たぶん!」
郁美は力強く頷いてゲームに向き合った。こうなったらもうどんな言葉も届かない。キリヤはがっくり肩を落とした。あの音が聞こえた気がした。
てぃろりろ~んEND
「するよ!なんで?やったことないの?嘘でしょ?…あ、」
「チビ優先だったり台数少ないから、あんまゲームした経験ないんだよね」
郁美はキュッと口を結んだ。施設育ちのキリヤの過去の話をすると、どう答えたらいいのかわからなくなるようだ。キリヤ本人は気にしていないし、ゲームも興味がなかったのでやれなかったところでどうとも思っていない。しかし郁美はもじもじと体を揺らして目を泳がせたあと、キリヤにゲーム機を差し出してくれた。
「…ちょっと、する?貸してあげる」
「いいの?ありがと♡」
あんなに夢中になっていたのに貸してくれる、郁美は本当に優しい良い子だ。ちょっとする?がいやらしい意味にしか聞こえなかったがそれは置いておいて、キリヤは郁美からゲームのやり方を教わった。ぴったりくっついて教えてくれる郁美は本当に可愛い。このままでは自分達が別の果物になってしまうかもしれない。
「ちゅうしよ?」
「それでね、ここに進化の一覧があってね、こういう順番で変身していくのね」
郁美はガン無視だった。目を輝かせて画面を見ているのでゲームをスタートさせた。ちゅうできなかった。果物達はチュッチュしながら別の果物になっていくのに。
何が楽しいのかよくわからないが、キリヤはしばらく続けた。何度目かのやり直しで、郁美から歓声が上がった。
「すごい、スイカできた!すごーい!!」
郁美は拍手で喜んでいる。動画以外で初めてスイカを見たそうだ。なぜスイカにこんなに喜ぶのか、いまいちピンとこない。スイカなんぞ夏場になればいくらでも見られるんだから、今は別のことがしたい。どうしたらやらせてもらえるだろうか。
「これさ、スイカとスイカがちゅうしたらどうなんの?」
「スイカ同士はね、消えるんだって。動画で見たけど、絶対できないよ。超むずい」
「ふーん。もうちょいやっていい?」
「うん。もっかいスイカ見せて」
郁美はキリヤの腕もたれかかってゲームを見ている。密着してご機嫌な郁美のなんと可愛いことか。正直何が何とちゅうしようがどうでも良いが、郁美が喜ぶならちょっとやってみよう。成功したら性交が待っている。キリヤはゲームを続けた。
~十分後~
「あちゃ~スイカできたけど、パンパンじゃ~ん…はい、てぃろりろ~ん」
「待って待って。ちょっと見てて。ここでイチゴがちゅうする、と」
小気味よい音とともに大量の果物達が消失していった。最後、一瞬だったがスイカとスイカのちゅうが見られた。上から順番に並べた果物達がうまく進化を遂げたようだ。
「はい、スイカとスイカのちゅう」
これは拍手喝采の大喜びだろうと郁美を見ると、口を曲げて不細工な顔をしていた。
「え、ぶっさ…待って、その顔嫌だな」
「うそぉ…スイカのちゅう、できちゃった…ちょっとやっただけじゃん…なんでぇ?」
郁美はしょんぼり落ち込んでいる。スイカのちゅうが見れたね、嬉しいありがとう♡えっちしよ♡の流れになると思ったのに、予想と全く違った。郁美はひどく落ち込んでいて、可哀想可愛い。
キリヤは悩んだ。擬似セ◯クスで散々ムラムラさせられた。いざ本番と思いきや、郁美は本気で落ち込んでいる。どう丸め込むか考えていると、郁美がぐっと両手を握りしめて顔を上げた。
「…よし!俺も頑張る!スイカ、ちゅうする!」
「いや、いいじゃん。今見たじゃん。それより別のことをね」
「それ!実際できるの見たし、俺もできる!たぶん!」
郁美は力強く頷いてゲームに向き合った。こうなったらもうどんな言葉も届かない。キリヤはがっくり肩を落とした。あの音が聞こえた気がした。
てぃろりろ~んEND
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