76 / 152
75
しおりを挟む
数日後。帰宅した佳奈多は鞄の中に、見慣れない容器が入っているのを見つけた。ラベルにはローションと書かれていて、もう一つは浣腸だった。きっと山田が入れたのだろう。
体育祭でのあの話は本気らしい。山田は佳奈多を傷つけることを躊躇しない。きっと本当に、あの3人に乱暴される。
佳奈多は必死に考えた。あの3人から、山田から逃れるためにどうしたらいいのか。山田は大翔が好きで、邪魔な佳奈多を排除したくてこんなことをしている。かといって大翔から離れたら、佳奈多はすぐに彼らに蹂躙されるだろう。彼らだけではない。今まで大翔を独占してきた佳奈多に恨みを持つものは多い。大翔から離れることは悪手だ。佳奈多はソファの上で体を丸めて小さくなった。
まさか山田からこんな仕打ちを受けるとは思わなかった。いつも暗い瞳で佳奈多を見つめていた彼は、思っていた以上に佳奈多に対して深い闇を抱えていた。
「かなちゃん。お風呂、先にどうぞ」
大翔はぼんやりとスマホを眺めながら佳奈多に声をかけた。佳奈多が見知らぬ男と会話したあの時から、大翔とまともに目が合わなくなった。どこかぼんやりとした大翔は如実に成績が落ちている。先日受けた小テストで、見たことのない点数を取っていた。
全部、自分のせいだ。大翔の心が離れたのも、山田や他の人間から恨みを買っているのも、今このような状況になっていることも。男同士の行為を調べなければ良かった。あんなアプリを入れなければ良かった。
佳奈多は立ち上がり、寝室に向かう。下着とパジャマと、山田からの贈り物を手にとって部屋を出た。
男同士での仕方を調べた理由。何かあったときの最終手段として、佳奈多自身を使うためだ。
佳奈多はトイレで中を洗浄して風呂場に入った。ローションを使って、なんとか蕾を割り開く。痛みが走り、指一本も入らない。佳奈多の性器はくったりと力を無くしている。以前見た動画では行為をしている男性二人共楽しそうだった。こんなに痛いのに、どうしてあんなに楽しそうだったのだろう。あれはフィクションだからだろうか。やっぱり男同士でするなんて、本当は嘘なんだろうか。
『こいつらでけぇから』
『どんなものが入るかな?』
『ガッバガバにされちゃえ』
現実逃避していた佳奈多の頭の中に、山田と取り巻きの声が響く。
『藤野君、…処女なの?』
佳奈多は叫びだしそうになって、歯を食いしばった。おぞましい彼らの手が体を這う。感触が生々しく思い出された。
佳奈多は頭を振って再度ローションを塗りたくった指を後ろにあてがった。
ここを使えるようにして、大翔と行為を行う。体を使って、大翔に守ってもらう。もう佳奈多に興味を失っているように見える大翔が守ってくれるかはわからない。
佳奈多が大翔のものになれば、きっと彼らは佳奈多に手を出せない。処女じゃなくなれば、取り巻きは佳奈多に対して興味をなくすはずだ。
佳奈多は涙が止まらなかった。佳奈多がしようとしていることは、大翔を利用したあまりに酷い行為だ。
でももう、後には戻れなかった。
それから一週間。必死に拡張をして指が入るまでになった。とてもじゃないが、気持ちが良いとは思えない。しかし、佳奈多自身の快楽はどうでも良かった。大翔が気持ち良いと思えればそれでいい。どう誘えばいいのかわからず、まだ、大翔と体を重ねるまでに至っていない。
学校では今まで以上に大翔の傍にいた。山田の視線を感じながら、佳奈多は大翔から離れなかった。
「ノート…」
しかしその日、珍しく大翔が教室に忘れ物をした。移動教室に移動中に気づいた。最近の大翔は佳奈多が心配になる程ぼんやりとしている。大翔と共に引き返そうとして、山田が声を上げた。
「大翔様、先に行ってます。藤野様、いきましょう」
山田はにっこりと佳奈多に笑いかける。しかし目は笑っていない。
体育祭でのあの話は本気らしい。山田は佳奈多を傷つけることを躊躇しない。きっと本当に、あの3人に乱暴される。
佳奈多は必死に考えた。あの3人から、山田から逃れるためにどうしたらいいのか。山田は大翔が好きで、邪魔な佳奈多を排除したくてこんなことをしている。かといって大翔から離れたら、佳奈多はすぐに彼らに蹂躙されるだろう。彼らだけではない。今まで大翔を独占してきた佳奈多に恨みを持つものは多い。大翔から離れることは悪手だ。佳奈多はソファの上で体を丸めて小さくなった。
まさか山田からこんな仕打ちを受けるとは思わなかった。いつも暗い瞳で佳奈多を見つめていた彼は、思っていた以上に佳奈多に対して深い闇を抱えていた。
「かなちゃん。お風呂、先にどうぞ」
大翔はぼんやりとスマホを眺めながら佳奈多に声をかけた。佳奈多が見知らぬ男と会話したあの時から、大翔とまともに目が合わなくなった。どこかぼんやりとした大翔は如実に成績が落ちている。先日受けた小テストで、見たことのない点数を取っていた。
全部、自分のせいだ。大翔の心が離れたのも、山田や他の人間から恨みを買っているのも、今このような状況になっていることも。男同士の行為を調べなければ良かった。あんなアプリを入れなければ良かった。
佳奈多は立ち上がり、寝室に向かう。下着とパジャマと、山田からの贈り物を手にとって部屋を出た。
男同士での仕方を調べた理由。何かあったときの最終手段として、佳奈多自身を使うためだ。
佳奈多はトイレで中を洗浄して風呂場に入った。ローションを使って、なんとか蕾を割り開く。痛みが走り、指一本も入らない。佳奈多の性器はくったりと力を無くしている。以前見た動画では行為をしている男性二人共楽しそうだった。こんなに痛いのに、どうしてあんなに楽しそうだったのだろう。あれはフィクションだからだろうか。やっぱり男同士でするなんて、本当は嘘なんだろうか。
『こいつらでけぇから』
『どんなものが入るかな?』
『ガッバガバにされちゃえ』
現実逃避していた佳奈多の頭の中に、山田と取り巻きの声が響く。
『藤野君、…処女なの?』
佳奈多は叫びだしそうになって、歯を食いしばった。おぞましい彼らの手が体を這う。感触が生々しく思い出された。
佳奈多は頭を振って再度ローションを塗りたくった指を後ろにあてがった。
ここを使えるようにして、大翔と行為を行う。体を使って、大翔に守ってもらう。もう佳奈多に興味を失っているように見える大翔が守ってくれるかはわからない。
佳奈多が大翔のものになれば、きっと彼らは佳奈多に手を出せない。処女じゃなくなれば、取り巻きは佳奈多に対して興味をなくすはずだ。
佳奈多は涙が止まらなかった。佳奈多がしようとしていることは、大翔を利用したあまりに酷い行為だ。
でももう、後には戻れなかった。
それから一週間。必死に拡張をして指が入るまでになった。とてもじゃないが、気持ちが良いとは思えない。しかし、佳奈多自身の快楽はどうでも良かった。大翔が気持ち良いと思えればそれでいい。どう誘えばいいのかわからず、まだ、大翔と体を重ねるまでに至っていない。
学校では今まで以上に大翔の傍にいた。山田の視線を感じながら、佳奈多は大翔から離れなかった。
「ノート…」
しかしその日、珍しく大翔が教室に忘れ物をした。移動教室に移動中に気づいた。最近の大翔は佳奈多が心配になる程ぼんやりとしている。大翔と共に引き返そうとして、山田が声を上げた。
「大翔様、先に行ってます。藤野様、いきましょう」
山田はにっこりと佳奈多に笑いかける。しかし目は笑っていない。
62
お気に入りに追加
89
あなたにおすすめの小説
病んでる愛はゲームの世界で充分です!
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
ヤンデレゲームが好きな平凡男子高校生、田山直也。
幼馴染の一条翔に呆れられながらも、今日もゲームに勤しんでいた。
席替えで隣になった大人しい目隠れ生徒との交流を始め、周りの生徒たちから重い愛を現実でも向けられるようになってしまう。
田山の明日はどっちだ!!
ヤンデレ大好き普通の男子高校生、田山直也がなんやかんやあってヤンデレ男子たちに執着される話です。
BL大賞参加作品です。よろしくお願いします。
11/21
本編一旦完結になります。小話ができ次第追加していきます。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
なんで俺の周りはイケメン高身長が多いんだ!!!!
柑橘
BL
王道詰め合わせ。
ジャンルをお確かめの上お進み下さい。
7/7以降、サブストーリー(土谷虹の隣は決まってる!!!!)を公開しました!!読んでいただけると嬉しいです!
※目線が度々変わります。
※登場人物の紹介が途中から増えるかもです。
※火曜日20:00
金曜日19:00
日曜日17:00更新
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
俺はつがいに憎まれている
Q.➽
BL
最愛のベータの恋人がいながら矢崎 衛というアルファと体の関係を持ってしまったオメガ・三村圭(みむら けい)。
それは、出会った瞬間に互いが運命の相手だと本能で嗅ぎ分け、強烈に惹かれ合ってしまったゆえの事だった。
圭は犯してしまった"一夜の過ち"と恋人への罪悪感に悩むが、彼を傷つける事を恐れ、全てを自分の胸の奥に封印する事にし、二度と矢崎とは会わないと決めた。
しかし、一度出会ってしまった運命の番同士を、天は見逃してはくれなかった。
心ならずも逢瀬を繰り返す内、圭はとうとう運命に陥落してしまう。
しかし、その後に待っていたのは最愛の恋人との別れと、番になった矢崎の
『君と出会いさえしなければ…』
という心無い言葉。
実は矢崎も、圭と出会ってしまった事で、最愛の妻との番を解除せざるを得なかったという傷を抱えていた。
※この作品は、『運命だとか、番とか、俺には関係ないけれど』という作品の冒頭に登場する、主人公斗真の元恋人・三村 圭sideのショートストーリーです。
僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる