森の中の華 (オメガバース、α✕Ω、完結)

森之宮家の三兄弟

19 三男・開斗編

フラッシュが瞬くスタジオ内、開斗は指定されたポーズをとっていく。
「カイト君いいよぉ～目線あっちで…それだ！いいねぇ、カイト君最高！」
(…ちょろ～)
業界内でも少し気難しいと言われているカメラマンだが、要求を汲み取ってこなす開斗に興奮しきっている。カメラマンの要求はだいたいわかる。無茶なものでなければ簡単にこなせる。学生時代に紹介されたモデルの仕事を続けて早数年。開斗は仕事に少し嫌気が差していた。
長かった撮影が終わり、カメラマンが耳打ちしてくる。
「どうかな、この後…」
開斗は笑みを浮かべる。
「さぁせ～ん。アフターは裕司パパから禁止されてるんでぇ～」
(くせぇから寄ってくんなや、ジジイ)
開斗の笑みにうっとりと目を輝かせるカメラマンのジジイに手を振ってその場を去った。
アルファだと公言している開斗だがこの業界、抱きたい抱かれたいと様々な人間が寄ってくる。躱すのは簡単だが少し辟易していた。こんな所も、仕事に嫌気が差している理由だ。
というか正直、この仕事に飽きている。最近仕事がつまらない。
兄に頼んで、そろそろ別の仕事でもしてみるかと考えていると、マネージャーから声がかかった。
「カイト君、お疲れ様～お疲れの所申し訳ないんだけど…あのね、隣で別の撮影してるんだけどモデルさんが体調悪くなっちゃったみたいで…カイト君に来て欲しいって、言ってるんだけど、どうかなぁ…」
マネージャーが労いの言葉をかけてくれた早々、別の仕事を振ってくる。しかし仕事の内容に首を傾げる。
「俺が、代わりに出るってこと？うちの事務所のモデルなの？」
「ううん、別の事務所のモデルさんで、大手のとこ。えーっと、二人、具合がわるくなっちゃったみたいで………大手事務所のアルファのモデルさんがヒートを起こしたんですって。オメガの子に噛みつこうとしたみたい。オメガの子も怯えちゃって、撮影は一時中断。お偉いさんが、カイトがいるならぜひって言ってるらしいのよ」
控室に入った途端、マネージャーは饒舌に話し始めた。かなり憤っている。アルファがヒートを起こしたならオメガも発情期に入ってしまったのではないだろうか。マネージャーに尋ねると、大きなため息と共に答えてくれた。
「オメガの子はね、きちんと抑制剤を飲んでいたから大丈夫だって。問題はアルファの方よ。抑制剤もなにも飲んでなかったらしいのよ。発情期でないにしても、オメガとの撮影よ？対策してないってなんなの？大手のモデルよ？顔だけで頭空っぽなの？馬鹿なの？」
「辛辣ぅ～俺はいいけど、事務所的に大丈夫なの？それよりもそのオメガちゃん、撮影できそう？なんでバラさないの？」
「お偉いさんお気に入りのオメガモデルさんみたいでね、その子達が撮影してほしいって言ってるらしいのよ。オメガモデルさん達もまだ駆け出しみたいねぇ…収入がなくなったら、困るみたいで…」
撮影には個人での撮影が多いが、アルファとオメガを絡ませたりアルファ同士で絡ませたりと様々な組み合わせの撮影もある。特に、人口の中で人数が少ないとされているアルファとオメガの組み合わせは人気がある。雑誌であれば部数が伸びるし、服やアクセサリーの広告であれば販売数が跳ね上がる。希少種であるアルファやオメガ。希少種達の組み合わせは購買者のメイン層であるベータ達に受ける。