うそつきな友情(改訂版)

あきる

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第65話

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あきらちゃん、拗ねちゃったわね」

 クスクスと姉が笑い、俺は笑えばいいのか落ち込めばいいのか分からなくなって、苦笑いを浮かべた。

「……別に、付き合ってないって言ってるのに」

「大好きなお兄ちゃんの関心が、誰かに向けられることが嫌なのよ、ブラコンね」

 姉よ。きっとあなたよりマシです。

 大きな心と、広い視野をもって長男おれを受け入れてくれた姉や、父に比べ、若干13歳の弟はまだまだ許容範囲が狭いようだ。

 ご飯も半分残してごちそーさまして部屋にこもっちゃった弟を心配し、後で腹減ったっていいそーだなと余ったご飯でおにぎりを握ってみたり。あまあまな姉と兄だ。

 お皿に並べてラップをかけて、テーブルの上。
 姉の握ったおにぎりと見比べると若干デコボコしているが、ま、よしとしよう。

「久賀はちゃんと飯食って薬のんだかな……」

「あらー。輝ちゃんたら」

 口元を掌で隠してむふふっと笑う姉。
 怖いですよ、お姉さま。つか、弟が男と二人でベッドインしてる所をみて、盛大に落ち込んでいたのはドコの誰だと、俺は突っ込みたい。
 メンドーだからスルーするけど。

 まぁ、俺が上だけハダカだったのが、変な誤解を招いた原因だったが……。誤解は解けたが、久賀に対するキモチは見破られた。そして墓穴を掘り、父と弟にもバレちゃった。うん、なんて日だ!

「あら輝ちゃん、腕立て伏せ?」

 いや、足が床についていますお姉様。己の駄目さ加減に打ちひしがれているところです。

「そんなに落ち込まないの。燿ちゃんだってきっといつか理解してくれるわー」

「いや……だからね、俺たちはそーゆー関係じゃなくて……」

「モチロン解ってるわよ。大人の階段の一段目にようやく足をかけたところなのね!一緒にのぼるのが女の子じゃなくても、もう驚いたりしないわ。お姉ちゃんは覚悟を決めたのよ」

 覚悟って姉ちゃんじゃなくて、俺がしなきゃ駄目なんじゃね?階段のぼるのは俺なんだから。
 いや、のぼらないよ?
 まだオトモダチ認定も済んでないんだぜ。
 明日から普通に会話してくれるかどうかも、不明だ。

「ところで輝ちゃん、お鍋に余ったお粥はどうする?久賀くん、量は足りたかしら」

「あ、土鍋回収するついでにきいてくる」

「お願いね。久賀くんは甘党なのねー。体調が良くなったらケーキを焼いてあげようかしら」

 るんるん、と上機嫌な姉。何気なく発せられたセリフに俺はハテナ?と首を傾げた。

「いや、あいつ甘いものは食べないよ?」

 異常なくらい好き嫌い激しいんだよな、あいつ。

 炭酸飲料ダメ。コーヒーアウト。紅茶はストレートならまぁなんとか大丈夫だが、ミルク&砂糖が入ると飲めない。
 臭みが強い野菜とかも苦手だったはず。

 真夏にアイスをくわえていた事はあったが、生クリームや砂糖が大量に入ったケーキ&菓子類は好まなかったので、時々女子から貰うらしいお菓子類は「食べるならあげるよ、尾上」と回ってくる。

「あらら?あらあらあら?」

 ことりっと姉が首を傾けて、視線がお鍋に注がれた。
 粥が余っている鍋を見ながらお姉さまは言いました。

「でも、これは砂糖粥よね?」

 ……はい?


「なに、それ。え、お粥って塩味だよ、ね?」

「でも輝ちゃん、お砂糖入れてたでしょ?そういうお粥を食べる文化も世界にはあるし、珍しいなぁとは思ったんだけど」

 てっきり久賀くんのリクエストかと思って。と、微笑む姉。いや、笑ってる場合じゃねぇ。

 だだっとお鍋に近づきガシャンと蓋を投げ捨て、中に指を突っ込んだ。
 人差し指で粥をすくって一口食べる。

「あっま!」
 
 あまりの甘さにビックリだ。あまぁいケーキよりもタチが悪い。
これを食べたの?
 ガンッと後頭部を殴られたかのような衝撃が走る。
 行儀悪いわよ!とたしなめる姉の横をすり抜けて、階段を駆け上がった。

(なんで言わねーの。なんで言わねーんだよ)

 俺は阿呆か。砂糖と塩。どうやったら間違えられるんだよ、馬鹿じゃねぇの。馬鹿だよ!大馬鹿だよちくしょー!

 騒々しく足音をたてて廊下を走り、ドアをぶち壊す勢いで部屋に飛び込んだ。


「なんで言わねーんだよ!!」

 そして、開口一番で逆ギレとか、ホントしょーもないヤツだな俺は。

「……びっ、びっくりした」

「そしてお前は何故にまたアルバムを開いていやがるー!この病人がっぁぁ」

 アルバムをひったくり、強制的にベッドの中に押し込んだ。
 ちょっぴり未練がましい目をアルバムに向けながら「あー、ヒドい」と久賀が呟いた。
 一体お前は、ヒトンチのアルバムのどこに興味をひかれたわけだ。って、そんな場合じゃなかった。

 サイドテーブルに置かれたトレーの上の土鍋。ぐわしっと手を伸ばして蓋を開けた。
 中はきれーに完食されていた。
 作った側としては嬉しいです。
 コレがちゃんとしたお粥ならな。

「なんで……だよ」

 あー。駄目だオレ。
 何やってんだろう。
 お粥ひとつ、マトモに作れない。
 何一つ、与えてやれないし何にも出来ないじゃないか。
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