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第16話
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フザケているのかと思いきや、結構真面目な口調の坂本だ。
あれ?従兄弟って、従兄じゃなくて従姉なのか?いやいや、たしか兄的な発言をしてたよな。
お兄ちゃんだとか、お兄ちゃまだとか、あにぃとか、お兄様とか、おにいたまとか、兄上様やにいさまやアニキ、兄くん、兄君さま、兄チャマ兄や……。
うっし兄の12段活用完成。いや、違うだろう。戻れ俺。12人の可愛い妹なんて欲しくない、わけがない超欲しい……待て待て、落ち着け。俺はどうやら混乱しているぞ。
「男に告白とかねぇーからぁー!!」
危うく現実逃避して、妹探しの旅に出るところだったぜ。脳みそがな。
自分がホモなのかどうかで悩んでいる友人にさ、ヤローに告白するの?なんて、心乱れる発言しないでくれない、坂本くん。
女の子が好き、俺は女の子が好き。女の子が大好きです。
例えば、細い首とか。
(久賀の首もすらっとしてて色っぽいよな)
二重目蓋の可愛いくりくりな目とか。
(あいつ、目つきは悪いんだよな。絶対小学生泣かす)
さらさらの髪とか。
(赤い髪似合うよな。その前は青だったけど、これも似合ってた。黒も絶対似合う)
ほんわか可愛い笑顔とか。
(なんでかな……笑ってるのに、笑ってない。でも、カッコイイ。うそつきな笑顔なのに、カッコ良すぎるぜ。顔が良いヤツはずるい)
ぷにぷになふっくらピンクの唇とか。
(微妙に緩い唇がエロいよなぁ。……やわらかった)
って!なんで可愛い女の子を想像してんのに、久賀がちらちら出てくるわけだ。
俺の脳内しっかり!
うずくまり膝を抱えてグロッキー。
暴走が止まらない脳内に、いっそオールクリーンしてしまいたい気分になった。
初期化と再起動を希望します。
あー、俺。これかなりだめな気がする。
「坂もっちゃん。こいつガチで凹んでるから、真綿で包むように扱ってやって」
「なんだ。一体」
「久賀が学校に来ないから、飼い主に置き去りにされたワンコなみに落ちてる」
「へぇ」
「で、三日も学校休むって事はかなりタチ悪い風邪でもひいたんじゃね?そうだ見舞いに行こう。おっとしまったウッカリだぜ、家知らねぇな。よし、従兄弟に教えて貰おう、そうしよう。現在に至る」
「おう。説明ご苦労、大山」
「うぃーす」
あれれ、もしかして楽しんでない?大山くん。
友情って難しいね。泣きそうだ。
あと、犬扱い止めろ。
「こいつさ。久賀が学校こない。久賀からメールが来ない。つって昼飯も食わない有り様。おっとヤベェ、昼休み終わる前に学食行かねぇーと。尾上、さっさと用事済ませようぜ。俺のラーメンが逃げる」
「ラーメンが無かったらうどんを食べればっ!後、なんかイロイロ大袈裟に言うな」
あー?どのへんが大袈裟だ?と首を傾げる大山はシカト。
あの説明だと俺はガチでワンコじゃねぇか。恥ずかしさに頬を染めながら、もういまさら何を言っても無意味だしと開き直る。
「安否確認がしたいんだよ」
俺がこんな事までする理由。
また明日なって言ったくせに、アイツが連絡ひとつ寄越さないからだ。
あと、殴らなきゃいけなくて、それから心配だし、アイツが居ないとつまんなくて寂しいから。
あー……。
うん、認めよう。俺は寂しいらしい。
あと、悲しいらしい。
心配で、飯も食えないらしい。
事実だな。
否定しても実際そうなっちゃってる……ムカつく。
ズンと床に崩れ落ちたまま凹んでいると、頭を撫でられた。
なに?と顔をあげると、目の前には猛烈美人。
えーと、俺はなんで頭を撫でられているんですかね?
「おふぅー。美人さんの撫で撫で!皆さんご覧下さい。なんと羨ましい光景でしょうか!いやぁ。さすがはワンコオガミン。イタイケな瞳は母性本能を刺激しまくるようですね」
何故かアナウンサー口調で騒ぐ大山と「……マジか」と、呆然と呟く坂本。
オガミンいうなと突っ込むのも忘れて予想外の事態に硬直する。
なんだコレ。
どうゆー状況だ。
えー、初対面の相手なのに思わず頭撫でて慰めちゃうくらい、俺は落ちてましたか?そんなに凹んでたか俺。
つーか、女子に慰められてるこの状況。
恥ずかしい。
耳まで朱色に染めながら見あげる先には、人形のような無表情。
形の良い唇が開いて、言葉を紡ぐ。
「龍二の心配をしてくれたんだな。ありがとう」
その言葉の後、人形のような思えた顔に、微かな笑みが浮かんだ。
ほんのわずかに目尻と口の端が緩むだけの小さな笑みだったが、それは見る者の心に衝撃を与えるには十分だった。
あれなんだろ、この笑顔、なんかそこはかとなく、既視感……?
俺の思考がまとまる前に、うぉぉおお。とか、きゃぁぁ。とか叫びながら周りの奴等がガタガタと椅子を鳴らして立ち上がった。
なんだ一体と、びっくりして振り返り、教室内を見回した。
「……うげっ」
教室中の視線が輝たち四名に集中していた。よく見れば廊下からも、数人の生徒が覗いていた。何が起きたよ、おい。
しんっと静まる教室。
数秒の間、不思議なくらいの静寂があった。
「天使だ」
は?
いま、なんて言った。
聞こえてきたオカシな台詞に、脳みそが活動を停止する。
「天使だー!!天使の微笑みだー!!!」
一番近い席にいた男子生徒が叫び。静寂は破られた。
後は、怒号にもにた音の洪水。
「まいすぅいーとえんじぇーる。君のためなら死ねる!」
うん。確かに天使の微笑みのようでしたが、命を投げ出すのはどーよ。
「俺はあなたの為に、生きる!」
生きるの部分が、某お笑い芸人口調だった。
「久賀サマ。なんて素敵な笑顔。ああ、わたくしもう……」
ああ、と額を押さえて女子失神。
良く見りゃあちこちでパタパタ倒れる生徒たち。一体何が起きたのか。
「なななな?」
「「な」しか言えてないぞ、尾上。落ち着け」
「大山、おま、これっ」
「大山くんは何でそんなに冷静なのかい?この状況はなに?と言いたいのであろう、勇者オガミよ。ならば答えてしんぜよう」
アナウンサーの次はざっくりロープレか!ざっくり過ぎて意味が分からない。
「これはおそらく、噂にきく七不思議のひとつ『1年5ホームの教室。前から3番目の窓際の天使』だな」
ちょっと待て、何だそのピンポイント過ぎる七不思議は。
それって席替えした場合どうなるの?なんてつまらない疑問が浮かんだじゃねぇか。つか、大山くん。お前さ、絶対いま考えたよな。それ。
「おっ、美人さんが天使ってことは、だ。喜べ勇者オガミンよ。長き試練によくぞ耐えた。心してかかれ、これぞ最後の決戦ぞ。お主の探し求めた魔王はこやつじゃ」
そのロープレ調、まだ続けるんですか。
つか、さっきまで天使だつってた相手をいきなり魔王呼ばわりとか、どんな扱いだ。勝手に堕天させるな、失礼なヤツだな。それと勇者の名前がさっきと違うぞ……。
…………ん?
いま、探し求めていたって言った、お前?
そーいえば、誰か「クガサマ」っつたよな?ってことは。
がばっと振り返り、美人さんを見る。
今はもう無表情に戻った相手の服装は、学校指定のブレザーに、ワインレッド・ネイビーのチェック柄のスカート……ではなく、パンツだった。
「こちらが久賀クンの従兄弟の史さんです」
坂本が掌で示しながら言った。
もっと早く言えよと、男相手にドキドキしてしまった俺は、とても深いため息をついたのだった。
あれ?従兄弟って、従兄じゃなくて従姉なのか?いやいや、たしか兄的な発言をしてたよな。
お兄ちゃんだとか、お兄ちゃまだとか、あにぃとか、お兄様とか、おにいたまとか、兄上様やにいさまやアニキ、兄くん、兄君さま、兄チャマ兄や……。
うっし兄の12段活用完成。いや、違うだろう。戻れ俺。12人の可愛い妹なんて欲しくない、わけがない超欲しい……待て待て、落ち着け。俺はどうやら混乱しているぞ。
「男に告白とかねぇーからぁー!!」
危うく現実逃避して、妹探しの旅に出るところだったぜ。脳みそがな。
自分がホモなのかどうかで悩んでいる友人にさ、ヤローに告白するの?なんて、心乱れる発言しないでくれない、坂本くん。
女の子が好き、俺は女の子が好き。女の子が大好きです。
例えば、細い首とか。
(久賀の首もすらっとしてて色っぽいよな)
二重目蓋の可愛いくりくりな目とか。
(あいつ、目つきは悪いんだよな。絶対小学生泣かす)
さらさらの髪とか。
(赤い髪似合うよな。その前は青だったけど、これも似合ってた。黒も絶対似合う)
ほんわか可愛い笑顔とか。
(なんでかな……笑ってるのに、笑ってない。でも、カッコイイ。うそつきな笑顔なのに、カッコ良すぎるぜ。顔が良いヤツはずるい)
ぷにぷになふっくらピンクの唇とか。
(微妙に緩い唇がエロいよなぁ。……やわらかった)
って!なんで可愛い女の子を想像してんのに、久賀がちらちら出てくるわけだ。
俺の脳内しっかり!
うずくまり膝を抱えてグロッキー。
暴走が止まらない脳内に、いっそオールクリーンしてしまいたい気分になった。
初期化と再起動を希望します。
あー、俺。これかなりだめな気がする。
「坂もっちゃん。こいつガチで凹んでるから、真綿で包むように扱ってやって」
「なんだ。一体」
「久賀が学校に来ないから、飼い主に置き去りにされたワンコなみに落ちてる」
「へぇ」
「で、三日も学校休むって事はかなりタチ悪い風邪でもひいたんじゃね?そうだ見舞いに行こう。おっとしまったウッカリだぜ、家知らねぇな。よし、従兄弟に教えて貰おう、そうしよう。現在に至る」
「おう。説明ご苦労、大山」
「うぃーす」
あれれ、もしかして楽しんでない?大山くん。
友情って難しいね。泣きそうだ。
あと、犬扱い止めろ。
「こいつさ。久賀が学校こない。久賀からメールが来ない。つって昼飯も食わない有り様。おっとヤベェ、昼休み終わる前に学食行かねぇーと。尾上、さっさと用事済ませようぜ。俺のラーメンが逃げる」
「ラーメンが無かったらうどんを食べればっ!後、なんかイロイロ大袈裟に言うな」
あー?どのへんが大袈裟だ?と首を傾げる大山はシカト。
あの説明だと俺はガチでワンコじゃねぇか。恥ずかしさに頬を染めながら、もういまさら何を言っても無意味だしと開き直る。
「安否確認がしたいんだよ」
俺がこんな事までする理由。
また明日なって言ったくせに、アイツが連絡ひとつ寄越さないからだ。
あと、殴らなきゃいけなくて、それから心配だし、アイツが居ないとつまんなくて寂しいから。
あー……。
うん、認めよう。俺は寂しいらしい。
あと、悲しいらしい。
心配で、飯も食えないらしい。
事実だな。
否定しても実際そうなっちゃってる……ムカつく。
ズンと床に崩れ落ちたまま凹んでいると、頭を撫でられた。
なに?と顔をあげると、目の前には猛烈美人。
えーと、俺はなんで頭を撫でられているんですかね?
「おふぅー。美人さんの撫で撫で!皆さんご覧下さい。なんと羨ましい光景でしょうか!いやぁ。さすがはワンコオガミン。イタイケな瞳は母性本能を刺激しまくるようですね」
何故かアナウンサー口調で騒ぐ大山と「……マジか」と、呆然と呟く坂本。
オガミンいうなと突っ込むのも忘れて予想外の事態に硬直する。
なんだコレ。
どうゆー状況だ。
えー、初対面の相手なのに思わず頭撫でて慰めちゃうくらい、俺は落ちてましたか?そんなに凹んでたか俺。
つーか、女子に慰められてるこの状況。
恥ずかしい。
耳まで朱色に染めながら見あげる先には、人形のような無表情。
形の良い唇が開いて、言葉を紡ぐ。
「龍二の心配をしてくれたんだな。ありがとう」
その言葉の後、人形のような思えた顔に、微かな笑みが浮かんだ。
ほんのわずかに目尻と口の端が緩むだけの小さな笑みだったが、それは見る者の心に衝撃を与えるには十分だった。
あれなんだろ、この笑顔、なんかそこはかとなく、既視感……?
俺の思考がまとまる前に、うぉぉおお。とか、きゃぁぁ。とか叫びながら周りの奴等がガタガタと椅子を鳴らして立ち上がった。
なんだ一体と、びっくりして振り返り、教室内を見回した。
「……うげっ」
教室中の視線が輝たち四名に集中していた。よく見れば廊下からも、数人の生徒が覗いていた。何が起きたよ、おい。
しんっと静まる教室。
数秒の間、不思議なくらいの静寂があった。
「天使だ」
は?
いま、なんて言った。
聞こえてきたオカシな台詞に、脳みそが活動を停止する。
「天使だー!!天使の微笑みだー!!!」
一番近い席にいた男子生徒が叫び。静寂は破られた。
後は、怒号にもにた音の洪水。
「まいすぅいーとえんじぇーる。君のためなら死ねる!」
うん。確かに天使の微笑みのようでしたが、命を投げ出すのはどーよ。
「俺はあなたの為に、生きる!」
生きるの部分が、某お笑い芸人口調だった。
「久賀サマ。なんて素敵な笑顔。ああ、わたくしもう……」
ああ、と額を押さえて女子失神。
良く見りゃあちこちでパタパタ倒れる生徒たち。一体何が起きたのか。
「なななな?」
「「な」しか言えてないぞ、尾上。落ち着け」
「大山、おま、これっ」
「大山くんは何でそんなに冷静なのかい?この状況はなに?と言いたいのであろう、勇者オガミよ。ならば答えてしんぜよう」
アナウンサーの次はざっくりロープレか!ざっくり過ぎて意味が分からない。
「これはおそらく、噂にきく七不思議のひとつ『1年5ホームの教室。前から3番目の窓際の天使』だな」
ちょっと待て、何だそのピンポイント過ぎる七不思議は。
それって席替えした場合どうなるの?なんてつまらない疑問が浮かんだじゃねぇか。つか、大山くん。お前さ、絶対いま考えたよな。それ。
「おっ、美人さんが天使ってことは、だ。喜べ勇者オガミンよ。長き試練によくぞ耐えた。心してかかれ、これぞ最後の決戦ぞ。お主の探し求めた魔王はこやつじゃ」
そのロープレ調、まだ続けるんですか。
つか、さっきまで天使だつってた相手をいきなり魔王呼ばわりとか、どんな扱いだ。勝手に堕天させるな、失礼なヤツだな。それと勇者の名前がさっきと違うぞ……。
…………ん?
いま、探し求めていたって言った、お前?
そーいえば、誰か「クガサマ」っつたよな?ってことは。
がばっと振り返り、美人さんを見る。
今はもう無表情に戻った相手の服装は、学校指定のブレザーに、ワインレッド・ネイビーのチェック柄のスカート……ではなく、パンツだった。
「こちらが久賀クンの従兄弟の史さんです」
坂本が掌で示しながら言った。
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