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relieving
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がたつく山道に、レンタカーを走らせる。久しぶりの運転でこんな道を走る事になるとは、思いもしなかった。唯一味方をしてくれているのはこの小春日和だけだろうかと思う程の悪路に、自ずと肩に力が入る。
後部座席に置いた二人分のリュックとサコッシュが、振動で小さく弾んだ。
――――昨日昂良から知らされたのは、行き先の住所と、一泊すると言うことだけだった。
いつかに昂良が言った『これからは好きな時にドライブ出来そうだし』と言う言葉をぼんやりと反芻する。今になって、そう言う事だったのか、と心の奥底に残っていた疑問が氷解した。
当時のような気まずさは聊かもなく、強いて違和感があるとするなら、進めば進むほどに僻地へと向かっていることくらいだ。
「ホントに道合ってる? 何も無いけど」
「カーナビが言ってんだから合ってるだろ」
「どこ行こうとしてるって?」
「ついてからのお楽しみ」
そういうのは普通、運転手が言う事だろと突っ込みたくなる。
けれど不思議と悪い気がしないのは、助手席の昂良が頻りに楽しみだなぁと呟いているからかもしれない。
それから30分ほど走行し、開けた場所でカーナビの画面が切り替わった。目的地の周辺に到着しました、と言う案内と共に、古民家が見えてくる。
「……ここ?」
昂良がスマートフォンを取り出し、外観と写真を見比べる。
「そうそう! ここ」
二人で車から下り、辺りを眺め廻す。普段見ているような景色とは遠くかけ離れた壮麗な大自然が、限りなく広がっていた。
「……何も無いね」
思わず口にすると、昂良は数多の木々を見つめたまま言った。
「何も無いから良いんだよ」
後部座席に置いた二人分のリュックとサコッシュが、振動で小さく弾んだ。
――――昨日昂良から知らされたのは、行き先の住所と、一泊すると言うことだけだった。
いつかに昂良が言った『これからは好きな時にドライブ出来そうだし』と言う言葉をぼんやりと反芻する。今になって、そう言う事だったのか、と心の奥底に残っていた疑問が氷解した。
当時のような気まずさは聊かもなく、強いて違和感があるとするなら、進めば進むほどに僻地へと向かっていることくらいだ。
「ホントに道合ってる? 何も無いけど」
「カーナビが言ってんだから合ってるだろ」
「どこ行こうとしてるって?」
「ついてからのお楽しみ」
そういうのは普通、運転手が言う事だろと突っ込みたくなる。
けれど不思議と悪い気がしないのは、助手席の昂良が頻りに楽しみだなぁと呟いているからかもしれない。
それから30分ほど走行し、開けた場所でカーナビの画面が切り替わった。目的地の周辺に到着しました、と言う案内と共に、古民家が見えてくる。
「……ここ?」
昂良がスマートフォンを取り出し、外観と写真を見比べる。
「そうそう! ここ」
二人で車から下り、辺りを眺め廻す。普段見ているような景色とは遠くかけ離れた壮麗な大自然が、限りなく広がっていた。
「……何も無いね」
思わず口にすると、昂良は数多の木々を見つめたまま言った。
「何も無いから良いんだよ」
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